2021年8月23日月曜日

北斜面貝層土器出土状況の分析学習着手

 縄文社会消長分析学習 124

2021.08.10記事「貝層中の貝殻体積の測定」までの学習で有吉北貝塚発掘調査報告書の北斜面貝層断面図の分析学習を深めることができました。この記事からは北斜面貝層土器出土状況の分析学習を開始します。

1 「北斜面貝層土器出土状況」図の解読

「北斜面貝層土器出土状況」図は次例のような図が4ページにわたって発掘調査報告書に掲載されています。


北斜面貝層土器出土状況 例

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

最初はどのような図であるのか皆目見当がつかない状況でした。そもそも高齢の自分にとっては記号や数値がおぼろげにしかわかりません。

しかしじっくり見ていると、つぎのような平面図(上)と投影断面図(下)セットの土器片出土位置図であり、土器片の接合状況を事細かに図示している超貴重データであることがわかりました。


土器出土状況図の構成


発掘調査報告書掲載図面の正確な平面対応

次にこの土器出土構成図を読めるレベルでスキャンする必要があります。通常のスキャンでは数値(土器番号)と記号(時期別)が読み取れません。そこでいつものスキャンとは違う設定(最高解像度で白黒設定)でスキャンして、ようやく読み取り可能な資料にすることができました。


スキャナー最高解像度で白黒設定でスキャンした様子 1㎜刻みのスケールを置く

2 土器出土状況図 平面図 時期別塗色

平面図は時期別(+浅鉢)に6区分されています。

まず最初の作業としてこの時期別記号を色をつけて大きく表示して、その分布が判るような資料を作成しました。


土器出土状況図 平面図 時期別塗色
【図の間違いは訂正しました。2021.09.13】

土器出土状況図 平面図 時期別塗色 (部分拡大図)

時期別に塗色すると、全く新しい情報が目に飛び込んできます。即座に興味を引く事項は、例えば、次のようになります。

ア 第1~6群(阿玉台式・中峠式)の出土範囲が北斜面貝層の北で貝層分布域から外れて一定の分布を示します。この範囲には第10・11群、第12群も分布します。貝層分布から外れて分布するのはこの範囲だけであり、また箱形地形が狭まる「出口」でもあり、特別の意味がありそうです。第1~6群の時期にすでに北斜面貝層が使われていた可能性が検討課題になりそうです。

イ 第7・8群(加曽利EⅠ式)と第9群(加曽利EⅡ式 磨消以前)の分布数は少なくなっています。ただし、その分布域は第10・11群(加曽利EⅡ式 磨消以後)、第12群と異なるようです。つまり第10・11群や第12群土器が持ち込まれた時に一緒に第7・8群や第9群が持ち込まれたのではないことを示しているようです。第7・8群土器の時期にも、第9群土器の時期にも北斜面貝層は細々ですが利用されていたことが判ると考えます。

ウ 第10・11群土器がメインでありガリー河道部分に集中出土しますが、第2断面から第3断面付近には第12群土器がほとんど出土しません。この区間は第10・11群土器の時期に土器が投棄され、その後埋没した(埋められた)と考えることができます。第3断面から下流は第10・11群土器と第12群土器が出土しますから第10・11群土器の時期から第12群土器の時代まで継続して利用された(土器が投棄された)ようです。

上記の例(ア、イ、ウ)のように「土器出土状況図 平面図 時期別塗色」は北斜面貝層の成り立ちを考えるうえで基本となる重要情報を含んでいます。次の記事から詳細に分析することにします。

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