2025年8月23日土曜日

E.S.モース著「大森貝塚」(岩波文庫)に興味を持つ

 Becoming interested in "Omori Shell Mounds" by E.S. Morse (Iwanami Bunko)


By chance, I became interested in "Omori Shell Mounds" by E.S. Morse (Iwanami Bunko) and wanted to study it in depth.


ヒョンなことからE.S.モース著「大森貝塚」(岩波文庫)に興味を持ち、じっくりと学習したくなりました。

1 E.S.モース著「大森貝塚」(岩波文庫)に興味を持った経緯

1-1 ディキンズとダーウィン・モースの論争

考古とは全く無関係ですがサヴァン症候群のweb記事を読んでいる中で、次の文章に遭遇し、驚きました。

「ちなみに、もともとは医師であったディキンズさんは、Nature 誌などに論文も発表しています。その中に、大森貝塚に関するエドワード・モース先生の論文(Morse, 1879)に反論した論考があります(Dickins,1880a, p. 350)。モース先生は、当然のことながらその主張に再反論します。既にアメリカに帰国していたモース先生は、その原稿を何とダーウィンに送り、同誌に転送してもらうのです。それは、ダーウィンが大森貝塚に関心を寄せていたためでもあったようです。そのような事情から、モース先生の反論は、冒頭にダーウィンの添え書きが付されて、ダーウィンの名義で発表されています(Darwin, 1880, pp. 561-62)。このような逸話を見ると、わが国とは縁遠く見えるチャールズ・ダーウィンという稀代の生物学者も、ずいぶんと身近に感じられることでしょう。」

サイト心の研究室「神経心理学と心理的要因 1.サヴァン症候群という現象」から引用

この記事の中で、ディキンズは天才的言語的サヴァンとして紹介されています。「百人一首」や「仮名手本忠臣蔵」の英語訳を出版したり、葛飾北斎の冨嶽百景に関する学術研究書を書いた人です。

その天才言語サヴァンのディキンズが、モースの大森貝塚研究にイチャモンをつけ、ダーウィンがモースに肩入れして論文を発表したというのですから、興味が深まります。

その事情についてwebでいろいろ調べる中で、その論争資料のNature掲載古論文が1編6000円程度でダウンロード販売されていることも知りました。英語に弱く金もない自分が手を出せるはずもなく我慢しましたが、はやまった行動をとらないで正解でした。

なんと、論争資料(日本語訳)がE.S.モース著「大森貝塚」(岩波文庫)に掲載されていることを知りました。


E.S.モース著「大森貝塚」(岩波文庫)

1-2 論争の内容

論争の主内容は大森貝塚の居住者と年代で、ディキンズが(歴史に登場する)日本人、600年前、モースが「アイヌが住みつく以前」の種族、年代(日本人が住みついたころ、それ以前に住んでいたアイヌの抵抗を受けた。神武天皇は1世紀に日本征服のために九州からやってきた。)としています。今となっては、モースの居住者観、年代観の方に軍配があがります。

1-3 モースやダーウィンの知識レベルに興味を持つ

webで大森貝塚やモースやダーウィンについて調べて行くうちに、モースの知識の中に、現代に通じるものが多くあると直観しました。氷河期などの概念も所持していたようです。モースやダーウィンの知識を知りたくなりました。

また、縄文土器(cord marked pottery)という用語もモースの大森貝塚報告を出発点として生まれたように、遺物についての観察がどのように行われたのかということも知りたくなりました。

モースの記述の中にはデンマーク、ニューイングランド、フロリダ、バルト海沿岸など世界各地の貝塚の比較が出てきます。比較対象は貝(動物)だけでなく遺物にも及んでいます。世界の貝塚の知識で大森貝塚を論じています。このような汎地球的視点は現代日本貝塚研究ではとても少ないように感じます。北米太平洋岸貝塚との比較論説を幾つか見る程度です。貝塚研究の視野の広さは明治期モースの方がはるかに優っていたようです。

天才言語サヴァンのディキンズに対する興味はしばらく封印して、モースやダーウィンについて学習したくなりました。

2 学習の視点

次のような視点でE.S.モース著「大森貝塚」(岩波文庫)学習を楽しむことにします。

・図版をスキャンして拡大して、現代発掘調査資料における実測図等と比べて、「作品」として楽しむ。

・明治期発掘における発掘者の興味の持ち方について知る。(現代の興味の持ち方と較べる。)

・大森貝塚に関する国際的論争に関わった人物がどのような背景知識を持っていたのかについて知る。(モース、ダーウィン、ディキンズ)

3 メモ

E.S.モース著「大森貝塚」(岩波文庫)の全文をwebで公開しているサイトがあります。

http://ktymtskz.my.coocan.jp/S/Iseki/omori0.htm


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