2014年6月2日月曜日

誤「掘割」→正「堀割」の訂正

1 誤字訂正
2011115日にこのブログを始めてから3ヶ月間程「印旛沼割普請」とか「花見川割」とかの「割」を使っていました。

2011年の春に、この「割」が間違いで「堀割」が正しいことに気がつきました。

江戸時代の関係文書では、全て「堀割」であり、「割」と使ったものは一切ありません。

江戸時代における「印旛沼堀割普請」の意味するところは印旛沼放水路工事といった意味です。「堀割」の意味は「地をって水を通したところ。ほり。」というこです。

それ以降は「堀割」を使っているのですが、記事を遡って誤字訂正することをこれまでサボってきていました。

1000記事通過記念ミニリニューアルの一環として、昨日誤字訂正をしました。数十記事の中に数百の誤字があり、訂正に半日かかりました。

引用文の中に含まれる「割」は勝手に訂正できませんから、一括変換などはできませんでした。根気のいる作業でした。

2 社会における誤字の例
誤字訂正作業の中で、間違って使ったのは私だけではなく、専門家といわれるような方や行政でも誤字を使っている(いた)ことに気がつきました。

「下総国印旛沼御普請堀割絵図」が昭和53年に八千代市有形文化財として指定されました。

下総国印旛沼御普請堀割絵図

「下総国印旛沼御普請堀割絵図」の表題拡大

この絵図を分析した次の論文では論文表題と文章全てで誤字「割」が使われています。

木原善和(1995):江戸期の印旛沼割工事で描かれた絵図、印旛沼自然と文化第2

また、2011年当時八千代市ホームページにおける有形文化財紹介ページで「下総国印旛沼御普請堀割絵図」の「堀」の字が誤字「」となっていました。当方より訂正を申込み、訂正していただきました。

次の論文でも誤字「割」が使われています。
白鳥孝治氏(1998)「印旛沼落難工事現場の地理地質的特徴」(印旛沼自然と文化№5

次の図書も表題及び文中のほとんど全てで誤字が使われています。

高崎哲郎著「印旛沼割物語 江戸・天保期の印旛沼割普請始末」(崙書房出版)

ここに示した誤字のある論文や図書は素晴らしい著作であり、このブログで何回も紹介してきたものばかりです。

誤字はありますが、花見川を考える際に価値が特別に高い物ばかりです。

3 誤字発生の社会的理由
そこで、なぜこのように誤字がはびこるのか、その理由を考えて見ました。
理由は2点あるように感じます。

●誤字「割」が発生する社会的理由
1) パソコンの漢字変換で「割」が優先的に出てくるため。
2) 現代人は情報量が多いために、むしろ「割」に親和感を持ってしまったため。

1) パソコンの漢字変換
パソコンの漢字変換で「ほりわり」と入力すると第1候補として「割」がでてきます。(Microsoft Office IME 2010のデフォルト)
ですからついうっかり「割」を使ってしまいます。
文章を手書きする時代にはなかった現象です。

2) 「割」に対する親和感
割」という言葉と「堀割」という言葉は国語として通じていますから(辞書には同じ意味が書かれている)、意識しなければ「割」に違和感を感じません。

そしてそれ以上に「割」を正しいと思い込んでしまうような社会状況があります。
印旛沼堀割普請の情報が書籍「天保期の印旛沼堀割普請」(千葉市)の発行などで、とても触れやすくなっています。
その触れやすい情報の一つに続保定記の次のイラストがあります。

続保定記のイラスト

とてもインパクトのあるイラストで、千葉市と八千代市の小学校社会科副読本にも掲載されています。
印旛沼堀割普請について興味を持った方は恐らくほぼ100%の方がどこかで見たことがあると思います。

このイラストから受ける印象は土地を「り割る」という厳しい労働です。

このイラストが媒介して「印旛沼堀割普請」という言葉と、厳しい肉体労働の筋肉感覚的イメージが心的に強く結びついてしまいます。

「印旛沼堀割普請」の「堀割」は堀という地形やその機能を表しているのですが、現代人がこのイラストを見ると、さらに続保定記などの工事誌情報に接すると、「堀割」の意味を「り割る」という労働・行為の意味に誤解してしまう心的傾向が生まれるのだと思います。

「印旛沼堀割普請」を印旛沼開削工事みたいな意味合いで捉えてしまうようになったのだと思います。 

現代人は、「印旛沼堀割普請」というもののイメージに対して「印旛沼割普請」と誤字で表現した方が親和的になってしまっているのです。

ですから、「印旛沼割普請」と誤字を使ってしまってもなかなか気がつかないのだと思います。


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