2014年10月27日月曜日

旧石器時代石器学習 その3

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.2旧石器時代の移動路>3.2.4旧石器時代石器学習その3

6 石器群の分類 要約的把握
2014.10.26記事「旧石器時代石器学習 その2」で石器群の詳細な識別について学習しましたが、「千葉県の歴史 通史編 原始・古代1」(千葉県発行)の記述に基づいて、石器群について要約的把握をしておきます。

6-1 房総半島後期旧石器時代の代表的石器群
「千葉県の歴史 通史編 原始・古代1」(千葉県発行)の要約です。

(1) 斜軸尖頭器石器群
剥片の加撃軸と尖頭部からの中軸線とが斜めに交わるので斜軸尖頭器と呼ばれる。
武蔵野ローム層から出土し、南関東で最も古い石器群である。
(石器群1斜軸尖頭器石器群)→このブログで推定した「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)掲載石器群詳細分類との対応。以下同じ。

(2) 端部整形石器群・台形石器石器群
台形石器とは水平、あるいは斜めに未加工の縁辺を残し、基部加工のある剥片である。
端部整形石器とは剥片の一端に簡単な剥離を加えた石器で、刃部を残したものと、尖頭部を意識的に作り出したものがある。
(石器群2端部整形石器群、石器群3台形石器群)

(3) 有背尖頭刃器石器群
有背加工とは尖頭部に収斂する二側縁の片側を残し、他の側縁を切り取る加工である。加工された側縁が背となる。
槍や刃物として柄に嵌挿されて用いられたと考えられる。
(石器群4珪化岩・黒曜石製石刃石器群A・剥片製小型ナイフ形石器石器群〔4a、4b〕、石器群5楔型石器群、石器群6珪化岩・黒曜石製石刃石器群B〔6a、6b、6c〕、石器群7横打剥片製石器群、石器群8黒曜石製厚型鋸歯縁尖頭器石器群、石器群9各種珪化岩製中型石刃石器群、石器群10剥片製小型(幾何形)有背刃器石器群)

(4) 小型石槍石器群
小型石槍とは魚鱗状剥離による小型尖頭器の総称である。
本来の素材の厚みを大幅に縮減するような加工が加えられ、石材消費は大変浪費家的である。
槍や刃物として柄に嵌挿されて用いられた。
(石器群11小型石槍石器群〔11a、11b、11c-1、11c-2、11d-1、11d-2、11d-3〕)

(5) 細石器石器群
細石刃という小型の石刃を量産する石器群である。
細石刃は槍や刃物の部品として軸に嵌め込まれたといわれており、機能的には有背尖頭刃器や小型石槍と完全に互換的である。
小型石槍が信頼性重視(将来的な使用を見越して入念に準備された技術体系)の石器であるのに対して、細石器が保守性重視(日常的な使用に際してその場その場で補修や交換を行うこと)の石器群である。
細石器石器群はきわめて吝嗇家的な石材消費戦略であり、石材採取を目的とする広域的なあるいは頻繁な居住地移動を必要としない。
(石器群12細石器石器群〔12a-1、12a-2、12b〕)

(6) 大型石槍石器群
長さ7cmを越えるような石槍は大型の部類に入る。このような大型の石槍を含む石器群。
石器の大型化に伴って破損の可能性が急激に高まり、従来多用されていた珪質な石材は廃用され、粗粒だが割れにくい石材が選択されるようになった。
石器石材の大幅な変更は石材採取・消費戦略の変動と密接に関連している。
この石材において初めて関東地方内部のみで石材調達が可能になり、遊動領域が非常に狭い地域に限定されるようになった。
器種多様度の低下と大型石槍の形態変異・機能多用度が相関しており、これまで機能ごとにつくり分けられてきた石器が、大型石槍という多機能な石器に変容している。
(11e-1、11e-2、11f)

後期旧石器時代の代表的な石器
「千葉県の歴史 通史編 原始・古代1」(千葉県発行)から引用

6-2 各石器群の変遷過程
「千葉県の歴史 通史編 原始・古代1」(千葉県発行)の要約です。

・「(1)斜軸尖頭器石器群」が最古の石器群である。

・「(2)端部整形石器群・台形石器石器群」がこれに後続し、やがて「(3)有背尖頭刃器石器群」が付加される。

・「(2)端部整形石器群・台形石器石器群」における基部加工のある尖頭器類が有背尖頭刃器に変化し、さまざまな形態変異を生じることになる。

・「(3)有背尖頭刃器石器群」が構造的に自立する(石器群を構成するさまざまな要素が安定した機能を相当機関維持すること)のは第2黒色帯期であり、以後終末期に及ぶ。なお、この構造的な自立は素材供給部門における石刃生産の一般化と表裏一体であった。

・「(4)小型石槍石器群」は「(3)有背尖頭刃器石器群」における剥片素材の尖頭器から分岐したものである。したがって、これ以降の石器群は「(3)有背尖頭刃器石器群」+「(4)小型石槍石器群」という構成になり、社会生態学的な条件によって有背尖頭刃器と小型石槍がつくり分けられることになる。背景には石材原産地を定期的な周回領域の取り込んだ居住地移動があったらしい。

・「(5)細石器石器群」の編年的な位置については統一的な見解が得られていない。「(3)有背尖頭刃器石器群」後半期および「(4)小型石槍石器群」に併行することは確実である。

・「(6)大型石槍石器群」については、一部の遺跡での土器出現を重視してこれを縄文時代と評価する見解と、従来通り後期旧石器時代終末期をする見解がある。

6-3 後期旧石器時代石器群理解図の作成
以上の要約的な石器群理解と詳細な石器群分類の関係を1枚の絵にまとめて石器群理解・確認をより容易にできるようにしました。

後期旧石器時代石器群理解図
この理解図作成にたどりついたことにより、さらに石器群理解が進みました。

幼児の頃、西洋人はみな同じ顔に見えていましたが、いつの間にか西洋人といっても顔が全部違うことに気がついた時期がありました。
私の石器認識もそのような認識発達の最初期プロセスを通過することができたようです。

次のような図をみても、これまではただただ眩暈がするような感じで、この絵から情報を汲み取りだそうという感情はあまり湧きませんでした。しかし、今はこの図から自分なりに意味のある情報が多少は汲み取れるかもしれないという意欲・感情が湧いてきます。このような図から有用な情報を汲み出せるようになりたいという強い興味を持つことはできました。

石器変遷図の例
「印旛の原始・古代-旧石器時代編-」(財団法人印旛郡市文化財センター発行)から引用
この図はいつか詳しく検討したいと思っています。

つづく

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