2014年10月24日金曜日

旧石器時代の狩方法

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.2旧石器時代の移動路>3.2.1旧石器時代の狩方法

1 これまでの検討
旧石器時代の狩方法について、遺跡分布から、旧石器時代に発達していた(現在はその面影が薄い)台地侵蝕崖(急崖)を利用していたと想像(推測)しました。(2014.09.04記事「旧石器遺跡分布から推定する狩方法」参照)

そうした問題意識を持っていた矢先、旅行先のカナダ国アルバータ州で先住民が崖を利用してバッファローを狩っている事例を知りました。(2014.10.03記事「参考 Head-Smashed-In Buffalo Jamp」参照)

Head-Smashed-In Buffalo Jampのイメージ

Head-Smashed-In Buffalo Jampの狩方法

Head-Smashed-In Buffalo Jampは原始・古代人の崖を利用した狩方法として参考になる事例であると考えました。

特に次の点に気がついたことは自分でもよかったと思います。

ア 地形を最大限利用している
平坦で広大な台地と偏在する急崖を知り尽くして狩をしています。

イ 動物の習性を最大限利用している。
例えば、バッファロー幼牛の皮を被って、幼牛の鳴き声をして助けを求め、親牛が幼牛を助けようとして集まってくることを利用するそうです。

ウ 集団で役割分担して狩をしている。
草原に散らばったバッファローを集める係、集まったバッファローを驚かせて暴走させる係、崖から墜落したバッファローを仕留める係などに集団が役割分担しています。

エ 簡便な狩施設を設けている
台地上にレール状に障害物を事前に置いておき、暴走したバッファローが確実に崖に突進するようにしています。

オ 狩猟具(ヤリ)利用は弱った獲物の最後のとどめを刺すために利用している
狩猟具(ヤリ)は崖から墜落して瀕死の状態の獲物のとどめを刺すために利用しています。獲物と格闘するような場面があり、その場面で狩猟具を使うのではないのです。
考えて見れば、獲物と格闘するような方法で狩をすることは旧石器時代ではほとんどなかったのではないかと想像します。狩の都度、獲物と格闘するようなことをしていてはいくら命があっても足りません。原始・古代人は動物を自滅させるような方法を熟知していたものと考えます。

2 「千葉県の歴史」掲載情報
さて、このような旧石器時代の狩の方法という点に関して「千葉県の歴史」で少しだけ触れてありますので、検討します。

2-1 狩現場情報は見つかっていない
まず、房総においては人類遺物と大型哺乳類化石の共伴例は知られていないそうです。(「千葉県の歴史 資料編 考古1」)
つまり、狩現場の遺跡・遺物はまだ見つかっていないということです。ですから、狩方法についての考察は全て想像するしかないということのようです。

下総台地で狩遺跡が見つからない理由は、旧石器時代狩遺跡のほとんど全てが縄文海進による沖積層堆積により埋没してしまったからと考えます。
しかし、地殻隆起の激しい土気付近では、万が一かもしれませんが、将来狩遺跡が発見される可能性があると感じています。

多数の石器が出土する遺跡(キャンプ地)とは別に、石器が単体や少数出土する遺跡も多数あるようです。そのような遺跡は専門家にはあまり注目されないようですが、そのような遺跡の中に狩現場を示すようなものがあるかどうか検討したいと考えています。

「千葉県の歴史」掲載の旧石器時代遺跡はすべて台地上の遺跡ですが、台地上ではない地形から出土した旧石器時代石器があるかどうか調べたいと思います。

代表的旧石器時代遺跡(キャンプ地)について、そのキャンプ地と対応する狩フィールドがどこであるのか、検討できるかどうか検討したいと思います。

2-2 他県の落し穴事例
他県の事例として静岡県三島市の落し穴例が紹介されています。

静岡県三島市の旧石器時代遺跡の落し穴
「千葉県の歴史 通史編 原始・古代1」(千葉県発行)から引用

この事例の説明の中で、「(落し穴の)一部が複列化し、さらに全体が環状になるように工夫されている。こうした落し穴の用途しては、一般的な落し穴という意見のほかに、追い込み猟に際して用いられた施設であるという考え方もある。」としています。

Head-Smashed-In Buffalo Jampのレール状障害物と同じような機能も持っていたと理解できる説明文です。

この事例説明から、旧石器時代の狩方法として崖を利用していたという仮説を検討する価値が大きいと感じました。

2-3 旧石器時代の狩の風景復元イラスト
「千葉県の歴史 資料編 考古1」に次のイラストが掲載されています。

旧石器時代の狩の風景復元イラスト
「千葉県の歴史 資料編 考古1」(千葉県発行)から引用

このイラストをよく見ると、崖の上から旧石器人が鹿を追いかけてきて、崖に追い落としている様子が描かれています。3頭の鹿のうち、左の鹿は転んでいます。また崖の下では仕留め役の旧石器人ハンターが待ち構えています。

このイラストで表現しようとした狩方法の趣旨はカナダ国アルバータ州のHead-Smashed-In Buffalo Jampと近似しています。

旧石器時代の寒冷期(侵蝕期)をイメージするならば、崖がもっと急で、露岩で、鹿が全部転んでいてしかるべきです。もし本当に鹿が多数突進してきたら、その都度人命が失われる可能性がきわめて高くなります。あるいは狩の成功確率が著しく低下します。
また密生して豊かな樹木は無かったとイメージします。

このような崖利用狩のイラストが「千葉県の歴史」に収録されていることから、そのような狩を想定する専門家の方もいらっしゃることがわかり、旧石器時代の主要な狩方法として崖を利用していたという仮説を発展させる価値があると感じました。

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