2020年9月15日火曜日

内野第1遺跡土製耳飾119点の最大直径別頻度分布

 縄文土器学習 466

2020.09.12記事「縄文後晩期土製耳飾に関する問題意識」で、土製耳飾に大中小があり、それは装着年齢を表していますが、それぞれに装飾性の高いものから低いものまであることを直観しました。この直観が正しければ、土製耳飾出土情報が社会階層性存在の明瞭な指標となっているかもしれないと考え、大いに興味を持ちました。そこで、発掘調査報告書データを直接いじくって、最大直径データ(=年齢相関データ)と装飾性分級との関係について簡易な分析をしてみました。

この記事では最大直径別出土数について集計しました。

1 土製耳飾119点の最大直径頻度分布とその解釈

発掘調査報告書で最大直径(㎝)としている数値は耳飾が断片であっても円形と仮定して求めている仮想完成形の直径であると考えられます。したがって、この最大直径の数値をそのまま利用して、その頻度分布を0.5㎝刻みで求めてみました。

なお、出土119点のうち最大直径記載のないもの3点を除いて分析しました。


千葉市内野第1遺跡 土製耳飾最大直径別出土数

この頻度分布図を次のように解釈します。

・1.0~3.4㎝では1.5~1.9㎝をピークとした山形分布をしています。この分布は少年少女が最初に耳たぶに穴を開け小さな耳飾を装着した様子を表現していると考えます。

・3.5~5.9㎝ではピークが存在しない平滑な分布がみられます。これは青年期に至った人々が耳たぶに開けた穴を順次拡大して少しづつ大きな耳飾りに取り換えている様子を表現していると考えます。

・6.0~8.4㎝では6.0~7.4㎝が大きなピークとなっています。これは壮年熟年に至った人々の耳たぶ穴の大きさの限界を示していると考えます。

この解釈の様子を色分けして示すと次のようになります。


土製耳飾最大直径と世代との関係イメージ

最大直径区分別(=世代別)の出土数は次のようになります。


土製耳飾最大直径区分別(=世代別)の出土数

この数値は世代別人口に比例していると考えられるので、興味が湧きます。つまりこのグラフは世代別人口構成比がイメージできるグラフです。

少年少女(10~16歳くらい?)と青年(17~22歳くらい?)の人口は変化は見られません。壮年・熟年(23歳以上)になると数値は大きくなりますが、その増加割合は控えめであり、寿命の短さを暗示しています。

青年の期間を17~22歳の6年間として、その期間の土製耳飾出土数35から、機械的に按分比例で壮年熟年の期間を求めてみると約8年となり、寿命は30歳ということになります。超ラフな思考ではありますが、生データから内野第1遺跡平均寿命をイメージできたことは楽しいことです。

2 最大直径区分別(=世代別)実測図集成

最大直径区分別(=世代別)に土製耳飾実測図を集成しました。

実際の作業は次の通りです。

発掘調査報告書実測図スキャン→Photoshopで個々の実測図切り抜きファイル化→最大直径区分別フォルダーにファイル収納


最大直径1.0~3.4㎝(少年少女)実測図集成


最大直径3.5~5.9㎝(青年)実測図集成


最大直径6.0~8.4㎝(壮年熟年)実測図集成

次にこの実測図集成を使って装飾性分級を行うことにします。(つづく)

0 件のコメント:

コメントを投稿