2020年9月15日火曜日

内野第1遺跡土製耳飾の最大直径別出土数と装飾性との関係

 縄文土器学習 467

2020.09.15記事「内野第1遺跡土製耳飾119点の最大直径別頻度分布」のつづきです。

1 実測図による装飾性分級

発掘調査報告書では土製耳飾を6群31類に分類していますが、この記事では土製耳飾の全体像をざっくり知ることが目的ですので、最大直径区分別実測図集成を見ながら、次のような装飾性分級を行いました。

●最大直径1.0~3.4㎝(少年少女)

装飾性高…有文のもの

装飾性中…無文で中央部穿孔のあるもの

装飾性低…無紋で中央部穿孔のないもの

●最大直径3.5~5.9㎝(青年)

装飾性高…円形で全面有文のもの

装飾性中…環形で有文のもの

装飾性低…円形または環形で無文のもの

●最大直径6.0~8.4㎝(壮年熟年)

装飾性高…滑車形で有文のもの

装飾性中…環形で有文のもの

装飾性低…円形または環形で無文のもの

最大直径1.0~3.4㎝(少年少女)装飾性分級


最大直径3.5~5.9㎝(青年)装飾性分級


最大直径6.0~8.4㎝(壮年熟年)装飾性分級

2 装飾性差異の意味

最大直径区分(=世代区分)のそれぞれに装飾性高のもの、中のもの、低のものが出現します。つまり、各世代ともに装飾性という観点でいうと明白な差異が存在していることがわかります。

装飾性の高中低という差異はその耳飾を装着していた人の社会階層に対応していると想定します。

装飾性高の耳飾を装着していた少年少女・青年は集落のなかで高位のポジション、指導的ポジション、祭祀執行的ポジションにある家柄出身である考えます。その耳飾を装着していた壮年熟年は実際に高位的、指導的、祭祀執行的な人物であったと考えます。

装飾性中の耳飾を装着していた少年少女、青年、壮年熟年は集落の一般住民であったと考えます。

装飾性低の耳飾を装着していた少年少女、青年、壮年熟年は集落の中で下層で劣位な立場の住民であったと考えます。

3 最大直径区分別の装飾性分級

最大直径区分別(=世代区分別)の装飾性分級をグラフで示すと次のようになります。


最大直径区分別(=世代区分別)の装飾性分級

少年少女(~3.4㎝)と青年(3.5~5.9㎝)のグラフパターンは極端に違いません。しかし壮年熟年になると少年少女や青年と比べて、装飾性中の数が増えます。

この関係をより分かりやすく知るために、各世代ごとに装飾性高中低の割合を見てみました。


最大直径区分別(=世代区分別)の装飾性分級(割合)

少年少女や青年と比べて、壮年熟年になると装飾性中の割合が増え、装飾性低と高が減少します。

この現象は後晩期の階層性が強まった縄文社会の様子を伝えているものとして興味を持ちます。

4 世代区分別に装飾性分級の割合が変化する理由

現時点では次のような状況を空想します。

【装飾性低装着の人々】

・装飾性低の耳飾を装着していた人々は社会下層に位置付けられていた。その社会位置を示すものとして装飾性低の耳飾装着を義務付けられていた。

・社会下層の人々はそれ以外の人々と比べ食糧事情など生活環境が劣悪であり、また危険や不衛生な仕事に携わる機会も多く死亡率が高かった。

・さらに犠牲(人身御供など)が必要な場合は社会下層の人々が主にその対象となった。

・したがって少年少女では装飾性低は一番割合が多いが、青年になると少なくなり、壮年熟年ではさらに割合が減少し、少年少女の半分近くになる。

【装飾性中装着の人々】

・装飾性中の耳飾を装着していた人々は社会の中核をなす人々つまり一般住民であり、その社会位置を示すものとして装飾性中の耳飾装着を義務付けられていた。

・装飾性低や高の耳飾を装着する人々(下層民、指導層)の死亡率が高いため、壮年熟年になると相対的に一般住民の割合が増える。

【装飾性高装着の人々】

・装飾性高の耳飾を装着していた人々は集落の中で高位的、指導的、祭祀執行的な立場にある上層民であり、一言で特徴づければシャーマンとその家族であった。シャーマンは装飾性高の耳飾装着が義務付けられていた。

・シャーマンは霊力を失ったときには殺されたりしたため寿命が短かった。そのため壮年熟年になるとその数が減少した。

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