2020年9月9日水曜日

千葉市有吉北貝塚出土アリソガイと皮なめし作業との関係(想像)

 縄文貝製品学習 14

1 アリソガイと皮なめしに関する問題意識

千葉市有吉北貝塚を念頭に、アリソガイ製ヘラ状貝製品が皮なめしに関連しているという作業仮説で学習を進めています。

予備実験でアリソガイを革に擦るとクリーム状の物質が塗布され、革が柔らかくなることを体感し、アリソガイが皮なめしに関連していることの確からしさを実感しました。

しかし、次のような問題意識も生まれました。

ア アリソガイの効用で脱毛や柔軟化を全て賄うことは可能か?

アリソガイを擦って塗布できる物質(炭酸カルシウム)はどんなに頑張っても微量であることに変わりはありません。アリソガイの炭酸カルシウムが水分と反応して強アルカリの水酸化カルシウムが形成され、皮に有用な変化をもたらすことはある程度できることは間違いないと考えます。しかし、それにより原皮を見違えるように変化させることができるのかどうか判断に苦しみます。

シカ原皮で実験的に確かめるしか方法がありません。

現時点での感想は、原皮の脱毛や柔軟化の基本作業はアリソガイ利用以外の方法で行われていたと考えます。

アリソガイを擦るという微妙な力による手作業は、毛が密集するシカ皮脱毛の基本作業とは平仄が合わないという筋肉的感想を予備実験で持ちました。

イ 千葉市有吉北貝塚でシカ頭骨の出土数が少ないこと皮なめしとの関連

千葉市有吉北貝塚発掘調査報告書ではシカ骨について、全身部位の中で上・下顎骨が少ない偏りが見られ、その偏りは資料の採集もれなどではなく、積極的に評価できる情報であるとしています。上・下顎骨が少ない理由として、狩猟した場所に頭蓋骨や椎骨などを置いて、主要な四肢と肉を集落に持ち帰ることがあったと解釈しています。

この解釈に従えば、シカは狩猟基地で皮剥ぎと解体が行われたと考えることができます。

また、集落に皮なめし必須道具である下顎骨を搬入していないことから、皮なめしも狩猟基地で行っていたと考えられます。

狩猟基地でおこなう皮なめしの方法は判りませんが、シカの脳漿を使った皮なめしが存在していたかどうかが大きな論点になるかと思います。

2 アリソガイと皮なめしの関係(想像)

上記の問題意識に基づいて、有吉北貝塚におけるアリソガイと皮なめしの関係を現時点で次のように想像します。

・狩猟基地でシカの皮剥ぎと解体が行われた。

・四肢と肉は直ちに集落に運搬され消費された。

・狩猟基地で皮は水洗いされ、下顎骨製品で脂肪・肉片等が除去された。(シカ脳漿を使った?)皮なめしも行われた。

・基本的な皮なめしが済んだ革が集落に持ち込まれ、アリソガイの効用を使って革に残る毛や残留物等が丁寧な手作業で除去され、革が上質・高級なものに生まれ変わった。さらに染色が行われ、その革で製品が作られた。


千葉市有吉北貝塚出土アリソガイ製ヘラ状貝製品

千葉市有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


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