2020年10月5日月曜日

土製耳飾着装人骨

 縄文土器学習 479

9月に千葉市内野第1遺跡や君津市三直貝塚の土製耳飾を観察し、それが耳たぶの極端な伸長という身体変工を伴う通過儀礼に関わるものであり、かつ、社会階層の差異を明確にするための役割があるらしいことを学習しました。

その後、耳たぶ伸長身体変工が確実に推定できる土製耳飾着装人骨の例を図書の中で見つけましたのでメモします。

1 装身具の着装例(日本第四紀学会編「図解・日本の人類遺跡」(1992、東京大学出版会))


装身具の着装例

日本第四紀学会編「図解・日本の人類遺跡」(1992、東京大学出版会)から引用・着色

大阪・国府遺跡(晩期)の例は人骨耳部に直接土製耳飾が乗っていて、この種の製品が土製耳飾であることが証明された例です。

長野・宮崎遺跡(後期)の例は「人骨耳部から径5㎝をこえる耳飾りを検出し、縄文後期には耳朶伸長の習俗があったことを証明」しています。

なお、福岡・山鹿貝塚(後期)の例では猪牙製と鮫歯製耳飾が頭骨耳部から出土し、「縄文時代の耳飾に多様な素材があったことを、教えてくれ」ています。

2 長野・宮崎遺跡(後期)の詳細情報


3号石棺墓の人骨頭部と土製耳飾

宮崎遺跡発掘調査報告書(1988、長野県教育委員会・川田土地改良区)から引用

左耳着装の土製耳飾が倒れて裏側(無紋)が見えています。

対ではなく1個しか着装していないようです。


3号石棺墓実測図

宮崎遺跡発掘調査報告書(1988、長野県教育委員会・川田土地改良区)から引用


参考 宮崎遺跡出土魚骨製耳飾と土製耳飾

1(左一番上)(5号土壙墓)のみ魚骨製(鮫?の椎骨)耳飾、他は全部土製耳飾

魚骨製耳飾はそれを装着していたことを示す人頭骨右耳部から出土していて、赤色塗彩されています。

3 感想

・耳朶を異常なまでに伸長させて大きな土製耳飾を装着したことが証明できる人骨を観察することができました。

・宮崎遺跡3号石棺墓と5号土壙墓の例は片耳だけに耳飾を装着していて、その意味について新たな疑問が生まれます。なぜ両耳に耳飾を装着していないのか?一つの可能性として木製等の腐りやすいモノで耳飾の代用品を装着していた可能性があります。最初から片方だけ耳飾を装着して埋葬されたとするならば、それには特別の意味があり、解明する必要があります。

・耳飾には土製だけでなく骨角製など多様な素材が使われていたことを知りました。


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