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2021年4月1日木曜日

千葉市動物公園に展示されている鳥形突起(縄文後期初頭)

 縄文土器学習 569

千葉市動物公園「動物園で考古学」コーナー観覧の際に、鳥形突起の撮影をしましたので、その写真から3Dモデルを作成して遺物造形を眺めて楽しみました。

2021.03.30記事「千葉市動物公園「動物園で考古学」観覧

1 鳥形突起(大膳野南貝塚) 観察記録3Dモデル

鳥形突起(大膳野南貝塚) 観察記録3Dモデル

縄文時代後期初頭

撮影場所:千葉市動物公園「動物園で考古学」コーナー

撮影月日:2021.03.29

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing61 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 発掘調査報告書記載

「30はいわゆる鳥形把手で、称名寺式に属するものである。外面は地文に単節縄文が施され、内外面の中央に8字状の貼付文が付される。」大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用


実測図

大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用


写真

大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

3 観察・感想メモ

ア 鳥形のかたちについて

ワシ・タカ類を想起させる湾曲したするどいくちばしと目が表現されていると考えられています。頭が実際の鳥の頭とは逆に凹んでいるのは合点が行かないと考えていましたが、ワシ・タカ類の写真をよく見ると、下から見た場合、頭の膨らみはほとんど見えません(意識できません)。特にオオタカなどは目の上に白線が横走し、頭部膨らみは見えません。縄文時代に飛んでいるワシ・タカを見るのは100%下からですから、この突起のような造形でワシ・タカを表現しても何ら不思議はないと考えました。

イ 8字状貼付文について


8字状貼付文の観察

8字状貼付文は現代社会の一般的「8の字」書き順と同じ書き順を、わざわざ造形に残しています。発掘調査報告書写真の裏側も同じです。空想になりますが、この「8の字」書き順という動きのある造形は、ワシ・タカ類の飛翔を表現している可能性を考えます。上昇気流を求めて大空を周回するワシ・タカ類の飛翔を象徴していると想定します。

ウ 鳥形突起(把手)の意味について

縄文中後期頃には空(そら)の上に天空界という見えない世界があり、故人が住んでいると考えられていたと想像します。その天空界と地上界を結ぶ使者がワシ・タカ類であるとか、天空界から地上界を見に来た故人がワシ・タカの姿をしているとか、死者がワシ・タカの姿になって天空界に上るとか・・・神話があったと想像します。

そのような天空界との繋がりのあるワシ・タカを把手にして土器内部を見てもらい、つまり故人(祖霊)に土器内部を見てもらい、食べ物が美味しく調理できること、そもそも調理する食材を豊富に確保できること、などなどの加護を祈願したのだと思います。


2021年3月30日火曜日

イノシシ形突起(獣面把手)観察記録3Dモデル その2

 縄文土器学習 567

2021.03.30記事「縄文前期後半 イノシシ形突起(獣面把手) 観察記録3Dモデル」に引き続き別のイノシシ形突起(獣面把手)の観察記録3Dモデルを楽しみました。

1 イノシシ形突起 3(大膳野南貝塚) 観察記録3Dモデル

イノシシ形突起 3(大膳野南貝塚) 観察記録3Dモデル

縄文時代前期後半

撮影場所:千葉市動物公園「動物園で考古学」コーナー

撮影月日:2021.03.29

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing45 images


展示の様子


展示の様子


観察記録3Dモデルの動画

2 感想

この小さいイノシシ形突起を観察していると、考古的興味とは別に、小さなアートとしてみることも可能であると感じました。

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3 【技術遊戯】イノシシ形突起の干渉色モデル

1のモデルの干渉色モデルを技術遊戯として作成してみました。

イノシシ形突起の干渉色モデル

「イノシシ形突起 3(大膳野南貝塚) 観察記録3Dモデル」https://skfb.ly/6ZXZoに干渉色を塗布。


干渉色モデルの動画

Wabefront(.obj)モデルのテクスチャ画像をPhotoshopトーンカーブ補正で干渉色に改変したものです。


元テクスチャ画像と干渉色テクスチャ画像


千葉市動物公園「動物園で考古学」観覧

 1 千葉市動物公園「動物園で考古学」コーナー

千葉市動物公園に「動物園で考古学」コーナーが昨年10月に新設されました。遅まきながら観覧してきました。コンパクトですがとても充実していて、自分にとっては興味の深まる展示物が多くありました。

千葉市動物公園建設にあたって、この場所(餅ヶ崎遺跡)の発掘が昭和54年~60年に行われ、縄文中期終末~後期初頭の集落跡が出土し、学術的に価値の大きな遺物・遺構が多数出土しました。このような関連から、「動物園で考古学」は「餅ヶ崎遺跡出土品」展示と「ヒトと動物のかかわり」展示の2展示から構成されています。


「餅ヶ崎遺跡出土品」展示の様子


「ヒトと動物とのかかわり」展示の様子


「ヒトと動物とのかかわり」展示の様子

2 「餅ヶ崎遺跡出土品」展示

餅ヶ崎遺跡出土代表的遺物と遺構パネルが展示されています。


展示遺物


展示遺物


展示土器


展示パネル

3 「ヒトと動物とのかかわり」展示

出土骨や動物に関わる出土遺物、及び動物にかかわる多数の考古学的興味パネルが展示されています。この展示は餅ヶ崎遺跡にこだわらず、千葉市内遺跡を対象にしています。


展示物(イノシシ形突起)


展示物(イノシシ形突起)拡大


展示パネル


展示パネル

4 感想

餅ヶ崎遺跡は中期社会急成長後の大崩壊におけるどん底時期の遺跡であり、とても興味のある遺跡です。展示称名寺式土器は以前特別許可を得て全周撮影をして円満な3Dモデルを作成して分析をしたことがあります。

イノシシ形突起は大膳野南貝塚出土物です。この大膳野南貝塚イノシシ形突起については、遺跡内分布の分析をしたことがあります。

2018.06.27記事「貝殻・獣骨・土器片出土の意義

この展示で現物に出会えるとは思ってもみませんでした。ラッキーです。早速3点のイノシシ形突起について3Dモデル作成用撮影をしました。

「動物園で考古学」コーナーはコンパクトで、展示環境(特に光線環境)は必ずしも十分ではありませんが、展示物とその説明は高度で充実していています。加曽利貝塚博物館や千葉市埋蔵文化財調査センターの展示と較べてなんら遜色がありません。