2019年6月22日土曜日

隆起線文土器に関する興味 まとめ

縄文土器学習 158

一鍬田甚兵衛山南遺跡出土物を閲覧し、主要なものについて3Dモデルを作成するなかで次のような興味を憶えましたのでメモしておき、今後の学習に備えることにします。

1 隆起線文土器の器形
一鍬田甚兵衛山南遺跡の発掘調査報告書では隆起線文土器片の記載はありますが、器形復元は行われていません。発掘された土器片が少量でかつ小型であるため器形復元できなかったのだと思います。どのような土器器形であったのか興味が湧きます。
小林達雄編「総覧縄文土器」では次の図が掲載されていて説明がありますので、この図書から一般的な隆起線文土器器形をイメージすることはできます。

隆起線文土器の器形
小林達雄編「総覧縄文土器」から引用

今後千葉県の遺跡で器形復元された隆起線文土器があれば注目したいと思います。

2 隆起線文土器の隆起線の意義
小林達雄著「縄文土器の研究」第7章第1節「縄文土器の文様」によれば草創期縄文土器の文様は無文→豆粒文→隆起線文→爪形文・円孔文→多縄文と変遷し、豆粒文と隆起線文では施文具はなく、爪型文・円孔文ではより複雑な模様がつくられ、多縄文になると施文原体の多様性とともに手法が発達し文様要素の多様化が大幅に増加したことが述べられています。単純から複雑へという文様変化プロセスはよくわかりますが、もう少し詳しく豆粒文、隆起線文がなぜ最初なのか知りたいという興味を抑えられません。更に詳しく関係図書を読んでみたいと思います。また網籠などの他の材料の容器の模様やしつらえのイメージを土器に投影したという上図書の説明も説得力があり、さらに詳しく学習を進めたいと思います。

3 出土する隆起線文土器破片はなぜ小さいのか
2019.02.02記事「隆起線文土器の出土遺物が小さい理由」ですでに検討している興味ですが、土器専門家は興味を感じていないような印象を受けるテーマであり、ますます興味が深まります。
小林達雄著「縄文土器の研究」では大きな項目「第6章第2節縄文世界における土器の廃棄について」を設け12ページにわたって土器廃棄について詳述しています。

土器廃棄パターンの時代的変遷模式図
小林達雄著「縄文土器の研究」から引用

この中で土器廃棄をA、B、C1、C2、D、Eの6パターンに分け、意図的あるいは意図的でない場合という区分を軸に詳細な検討を行っています。この小論文はあらためて詳しく分析的に学習するつもりです。
しかし、自分の視点からみるとこの小論文では廃棄が意図的であるか否かという点に焦点があります。廃用土器を破壊する(粉々にしてばら撒く)という意識的行動に焦点は当たっていません。
なぜ隆起線文土器破片が小さいのか、検討を深めることにします。

4 隆起線文土器片と石器が共伴出土する「その区画」の状況推察
隆起線文土器片と有舌尖頭器などが共伴出土する場所は特定の区画とその周辺です。この場所からは住居祉などは見つかっていません。この区画付近が住居に近いような使われた方をした場所であると推察してよいのかどうか、発掘調査報告書掲載情報からそのような推察の根拠がどのように導かれるのか、機会があれば専門家のご意見を伺いたいと思います。

縄文時代草創期遺物出土状況(石器・土器)
一鍬田甚兵衛山南遺跡の発掘調査報告書から引用

5 土器量が時代とともにどのように変化しているか
隆起線文式の時代とその後の早期の時代では土器がどのように増加するのか、一例として一鍬田甚兵衛山南遺跡の統計をとりたいと思います。「土器量(土器破片数?)/石器量(石器片数?)」のような指標を設定して統計をとってみて、縄文人1人当たりが残した土器量が草創期と早期では確かに違うことを統計的知りたいと思います。
1人が一生に使う土器量(に比例した指標値)の違いがどれだけであるのかによって、土器利用の場面なども違ってくるはずです。土器がどれだけ貴重品であるのか、あるいはどれだけ日常的な用具であるのか知りたいということです。

6 尖頭器の大きさの違いが意味することがら
出土有舌尖頭器・尖頭器の大きさにかなりの開きがあります。大きなものは槍としてつかわれたと考えられますが小さなものは弓の矢先であるような印象も受けます。専門家によればそうした判別が確立しているものであるのかどうか、知りたいと考えています。書物からの学習ではなく、ヒアリングが必要です。
投槍器は発見されていませんがその存在の確実視がどの程度のモノであるのか、矢柄研磨器で研磨した柄は何の柄であるのか、考古学の最先端がどこまで解明しているのか、知りたいと思います。
参考 2019.06.17記事「参考 矢柄研磨器 一鍬田甚兵衛山南遺跡出土 観察記録3Dモデル

7 土器と石器種別のセットのタイプが時代とともにどのように変化しているか
特に草創期~早期~前期あたりまでを最初の興味対象にして、土器の器種や大きさ・量、石器の器種や素材・大きさ・出土量など組み合わせセットが時代とともにどのように変化したのか、学習を深めたいと希望しています。


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