2019年2月2日土曜日

隆起線文土器の出土遺物が小さい理由

縄文土器学習 14

隆起線文土器の出土遺物が小さいことに不自然さを感じます。どの遺跡でも縄文草創期の土器片は小さいものばかりで器形が復元できるような土器片出土は稀のようです。
近々一鍬田甚兵衛山南遺跡出土隆起線文土器を閲覧する予定ですが、所蔵機関のご担当の方から「想像するより小さいのでがっかりしないように」とのお話までありました。同じご担当の方から特大加曽利B式土器多数を見せていただいたことがありますので、当方が落胆しないようにご配慮していただいたようです。

一鍬田甚兵衛山南遺跡出土隆起線文土器
成田国際空港埋蔵文化財調査報告書21(千葉県文化財センター調査報告第517集)から引用

西根遺跡出土特大加曽利B式土器
一鍬田甚兵衛山南遺跡出土物所蔵機関と同じ機関が所蔵。

出土する隆起線文土器の破片が小さい理由についてその可能性を想像してみました。
1 隆起線文土器も後代の縄文土器(例加曽利B式土器)も同じ割れ方、残り方をしているが、隆起線文土器の器形の方がはるかに小さく、そして何よりも絶対数が異常に少ない。そのため出土する隆起線文土器破片が小さいものばかりのように見える。(観察における錯覚)
2 隆起線文土器の素材や焼成方法が後代のものより粗雑であるから廃用後により細かく割れる、分解する、土に戻る。土器の理化学的特性から土器片として残りにくい。そのため土器片は小さくなり、数も少なくなる。
3 隆起線文土器も後代の縄文土器も、廃用後それを意図的に破壊して原形をとどめないようにする活動(一種の祭祀活動)があった。そのため縄文土器は意図的に破壊され小片になったものが極めて多い。そのような廃用土器破壊活動が土器誕生直後は純粋かつ徹底して行われた。そのため隆起線文土器など草創期土器の破片は特に小さい。

これ以外にも隆起線文土器の破片が小さい理由があるかもしれません。また幾つかの理由が複合しているかもしれません。
しかし、次のような情報から第3の理由、つまり意図的土器破壊行為が草創期は純粋かつ徹底して行われていた蓋然性が高いと考えますので、その考えを作業仮説として縄文土器学習を進めることにします。

ア 廃用土器を破壊する活動は全世界に存在する

ギリシャコルフ島の「壺投げ」 WEBサイト日テレNEWS24から引用

ギリシャコルフ島の「壺投げ」 WEBサイト日テレNEWS24から引用
ギリシャコルフ島の例に限らず廃用土器を破壊する行為は多く見られます。
日本でもカワラケ投げや焼き場に人を送る時の茶碗割りなど土器破壊活動に起源を有すると考えられる風習が残っています。

イ 西根遺跡における土器破壊行為

西根遺跡における土器総重量と土器片平均重量

西根遺跡における土器破壊行為の空想
西根遺跡は低地における土器塚の様相を呈していますが、土器密集場所には特大土器が集中し、その場所の土器片平均重量は周辺より小さくなっています。つまり土器密集場所(特大土器集中場所)ではより入念に土器が破壊されています。土器破壊行為は重要な祭祀行為であったと考えます。

ア、イなどの情報から廃用土器は器形を留めないように破壊するという祭祀活動が土器誕生とともに存在していて、土器誕生当初はその祭祀活動がより純粋で徹底していたと想像します。




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