2021年4月22日木曜日

有吉北貝塚土坑分布図作成作業

 縄文社会消長分析学習 87

有吉北貝塚学習の基礎データ作成作業の一環として土坑一覧表のデータベース化(電子化)とその分布図作成(QGISプロット)を目指した作業を進めています。ようやく土坑データベースの祖型みたいなExcelファイルができましたのでその概要を集計しました。

1 有吉北貝塚土坑一覧表


有吉北貝塚土坑一覧表(部分)

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

2 有吉北貝塚土坑データの概要

有吉北貝塚土坑データは770あり、そのうち時期データがあるものは644(83.6%)あります。


有吉北貝塚土坑 出土土器による区分

時期データのあるもの、つまり土器群判定ができる土器が出土した土坑を土器群別に集計すると次のようになります。


有吉北貝塚土坑の土器群別集計

この集計は一つの土坑が複数土器群に対応する場合、各土器群に1を按分比例した値を与えて集計しています。

例えば、ある土坑の土器群欄に7~9群と記載されている場合、7群、8群、9群にそれぞれ0.33333の土坑が存在していると仮想します。

7群(加曽利EⅠ式頸部無文帯成立以前)と9群(加曽利EⅡ式胴部磨消懸垂文成立以前)にピークが見られます。

このグラフをより要約して土器型式別に整理すると次のようになります。


有吉北貝塚 土器型式別にみた土坑数

有吉北貝塚の土坑は加曽利EⅠ式で急増し、加曽利EⅡ式でピークを迎え、その後壊滅的に急減したと表現することができます。

3 土坑データベースの作成とQGISプロット

今後、土坑一覧表の他のデータを電子化してデータベースとして利用できるようにします。

同時に770土坑をQGISにプロットして土坑データベースの空間分析ができるようにします。


有吉北貝塚 縄文時代遺構配置図

まず縄文時代遺構配置図をQGISにプロットし、それを手がかりに各土坑の位置をQGISにプロットする予定です。

4 感想

・竪穴住居については既にデータベースの祖型とQGISプロットが出来ています。今後土坑について同じことができると、竪穴住居と土坑を合わせて有吉北貝塚集落の空間分析が可能になります。

・土坑の土器群別集計では7群と9群でピークとなり、8群が谷になります。このグラフ形状が社会趨勢(例えば人口増→減→増)を表現しているものであるとはいえないと考えています。極端な思考として、土坑数が変化しない状況を仮想し、7群と9群の期間が長く、8群の期間が短ければ上記のようなグラフになります。

・8群の指標が総合的に組み合わされたものではなく、「頸部無文帯のあるもの」という文字通り単独のものであることから、7群と8群の区分に円満性が少ないかもしれないという疑問を持っています。

・有吉北貝塚が準拠している埼玉編年(1982)では「頸部無文帯のあるもの」という指標を確率的指標として扱っていて、絶対的な有無指標としては扱っていません。


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