2025年5月24日土曜日

ひすい製勾玉状垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of jade magatama-shaped pendant (Kasori shell mound, Chiba city)


A 3D model of the observation record of a jade magatama-shaped pendant excavated from the late Jomon layer at the Kasori shell mound in Chiba city has been created. Radiating concave lines are made from a round hole through which a string can be passed, and the lower part is missing. Maximum length is about 3.5 cm.


千葉市加曽利貝塚の縄文晩期層から出土したひすい製勾玉状垂飾品の観察記録3Dモデルを作成しました。紐を通す丸孔から放射状の凹線が施され、下部は欠損。最大長約3.5㎝。

1 ひすい製勾玉状垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

ひすい製勾玉状垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査遺構外出土(縄文晩期)

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 59 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像 1(2と3から合成)


3Dモデルの画像 2(通常カラー)


3Dモデルの画像 3(モノクロ)

2 メモ


実測図

「37(注 ひすい製勾玉垂飾品)は勾玉状に下部が曲がっているが、下部は欠損している。断面は厚手である。器体には穿孔が1孔あり、表裏面および側面には孔を中心として放射状に凹線が施されている。」

器種…玉類

石材…ひすい

出土層…黒色土

高さ…34.5㎜

幅…27.9㎜

厚さ…18.7㎜

重量…31.91g

(以上発掘調査報告書から引用)

2025年5月23日金曜日

北斜面貝層の姿

 Appearance of the shell layer on the northern slope


We looked at the appearance of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound from the database information we constructed. The database revealed that the natural terrain is a gully erosion terrain. The shell layer fills the terrain. The 60,000 or so excavated artifacts are not distributed evenly throughout, but are unevenly distributed, divided into dense and non-dense areas.


有吉北貝塚北斜面貝層の姿を構築したデータベース情報から見てみました。データベースから地山地形がガリー浸食地形であることが新たに判明しました。貝層がその地形を埋めつくしています。6万余の出土遺物は満遍なく均等に分布するのではなく、密集域と非密集域に分かれて偏在的に分布します。

1 データベースから見た北斜面貝層の姿

1-1 地山地形


急斜面と顕著な段差地形


地山地形3Dモデル

データベースで作成した地山地形3Dモデルを観察すると、この地形は、急な谷壁や段差の発達という顕著な特徴から典型的なガリー浸食地形であることが判明しました。発掘調査報告書では地山地形(谷地形)が何であるか不明でした。ガリー浸食地形は地下水位より上で発生し、常時水流はなく、大雨の時だけ急流が流れ、面的浸食が急速に進みます。一般に植生の乏しい乾燥気候地域で見られるものです。下総地域では放置された開発裸地以外では見られません。北斜面貝層が納まるこのガリー浸食地形の形成要因に人為的影響(縄文人活動による土地の裸地化など)が関わっているのかどうか、興味のある検討課題です。

1-2 貝層


貝層分布

谷地形(ガリー浸食地形)が貝層で完全に埋め立てられています。興味深いことに、貝層による埋め立てが完了した時点(加曽利EⅡ式新段階)と有吉北貝塚集落終了時点が一致します。(ただし、後期初頭貝層が極小範囲に確認されています。)

1-3 遺物


遺物種別出土件数

北斜面貝層から約64000 件の遺物が出土しています。骨・歯が全体の58.2%、土器・土製品が31.7%、石器・石が3.8%などの内訳になっています。


グリッド別遺物出土件数

遺物が特に密に出土する場所が北斜面貝層の上流部と下流部に分かれて偏在的分布しています。


土器密集出土状況

上流部には土器(主に加曽利EⅡ式中段階、中~新段階土器)が特段に密集して出土する場所が存在します。


骨角歯牙製品・貝製品

また北斜面貝層のいろいろな場所からイモガイ製腰飾り、磨貝、骨角製釣針・刺突具などが多数出土していています。

2 感想

遺物全体の分布が偏在的である理由にはいろいろな要因が絡んでいると考えられます。その要因の大小を分布図だけから突き止めることは困難です。しかし、縄文人の投棄活動の特性が大いに反映していることは確実であると考えます。遺物の精細な3D分布を検討すれば、縄文人の投棄活動特性をあぶり出すことが可能であると考えます。

2025年5月22日木曜日

3D空間分析用データベースの構築

 Building a database for 3D spatial analysis


We built a database for 3D spatial analysis of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. It consists of three databases: a rock terrain database, a shell layer database, and an artifact database. The artifact database is stored in postgreSQL, and a csv file is output by query, plotted in the Blender3D viewport using Python, and analyzed.


有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間分析用データベースを構築しました。地山地形データベース、貝層データベース、遺物データベースの3つから構成しました。遺物データベースはpostgreSQLに格納し、クエリでcsvファイル出力したものをPythonでBlender3Dビューポートにプロットして表示し、分析します。

1 3D空間分析用データベースの構成


3D空間分析用データベースの構成

データベースは地山地形データベース、貝層データベース、遺物データベースの3つから構成し、Blender3D空間で表示、分析できるものとして構築しました。

地山地形データベースでは、地山地形3Dモデル(Wabefront(.obj)ファイル)を作成し、Blenderで表示し利用できるようにしました。3Dモデルは地山平面図(手書き標高点、地形情報図、B3判14枚)から読みとった標高点(3933)リストに、セクション図断面から読みとった標高点、地形図から読みとった標高点を加えた標高点リストを作成し、そのデータによりQGIS(GRASSプラグイン、v.surf.rstツール)で作成しました。


地山地形データベース

貝層データベースでは、貝層断面図(32断面、Illustratorファイル、画像ファイル)及び貝層大区分図(32断面、Illustratorファイル、画像ファイル)を作成し、Blenderで表示利用できるようにしました。また、貝層断面図、貝層大区分図からBlender機能を利用して貝層3Dモデルを作成し、分析に活用できます。貝層断面図等はセクション図(手書き貝層断面図、B3判87枚)を集成して作成しました。

また、セクション図注記から貝層(分層)記述データベース(postgreSQLファイル、Excelファイル)を作成しました。

このデータベースは将来、貝層(分層)統計分析に使います。


貝層データベース

遺物データベースでは、3D座標を含む49項目で構成されるデータ集合(postgreSQLファイル、Excelファイル、64096レコード)を作成し、Blenderにプロットして利用できるようにしました。データ集合は遺物台帳(4200ページ、64096 レコード)、遺物分布図(手書き遺物平面分布図、B3判146枚)、発掘調査報告書掲載遺物リスト(33 項目)から作成しました。このデータ集合は発掘調査報告書掲載遺物リストの詳細項目とリレーションしています。Blender3D空間では、遺物はオブジェクト(立方体など)としてプロットし表示します。


遺物データベース


遺物データベースの主な項目

2 データベース作成作業

2023年夏に千葉県教育庁森宮分室で発掘原票の複写を行いました。


遺物台帳の複写


遺物台帳複写画像

遺物台帳4000ページの複写は書画カメラにより想定以上に効率的に行うことが出来ました。


図面の複写


図面複写画像(B3サイズの中央部分のA3画像)

遺物分布図等250枚の複写はA3サイズスキャナーで行いましたが、図面はA3サイズより大きなB3サイズであり、図面の端に重要情報が記入されている場合が多く、結局1枚の図面を2~4回複写することになり、苦労しました。

データベース作成では膨大な入力作業を行い、巨大数値表を扱うなど、煩雑な作業を伴いました。この作業を正確かつ効率的に実施するために、Pythonスクリプト(プログラム)記述利用を多用しました。例えば、平面座標読取作業はPythonによる自作アプリを開発して効率的に行いました。なお作業開始時期とAI普及(ChatGPT登場)時期が重なり、Pythonスクリプト生成においてChatGPT支援を利用することが出来ました。これにより、作業進行が大幅に加速しました。


自作座標読取ツールの操作画面

2025年5月現在、遺物台帳全6万件余のデジタル化は終了しています。デジタル化ではOCR活用を幾度も試みましたが何れも失敗し、結局全部手入力となりました。図面の画像処理、集成作業は全て終わり、座標読取作業の一部が残っています。

3 データベース利用システム


データベース利用システム

データベース利用の基本は、遺物データベース(postgreSQLファイル)からクエリで必要な遺物データをcsvファイルで取り出し、BlenderでBlenderPythonを利用してそのcsvファイルを3D空間にプロットして表示することです。

4 3D空間表示と分析方法


分析用にカスタマイズされたBlender画面(モニター2画面用)

データベースの3D空間表示はBlenderの3Dビューポートを3D空間カンバス(仮想3D空間)として利用しました。遺物、貝層、地山地形などのオブジェクト(3Dモデル)を現実空間と同じスケールの3D空間にプロット展開しました。遺物は5㎝×5㎝×5㎝の立方体オブジェクトで表示し、貝層境界や地形面は曲面オブジェクトで表示しました。

遺物に関する分析(分類、密集度など)はPythonで行い、その結果をBlender にプロットしたものが多いです。遺物と貝層の空間関係分析はBlender内のBlenderPythonやgeometry nodesを使って行ったものが多いです。

5 感想

3D空間分析用データベースは本邦貝塚研究では初出であると考えています。考古学一般でも初出である可能性があります。もし、3D空間分析を意識したデータベース構築例を考古学分野でご存じの方がいらっしゃれば、情報を教えてください。


有吉北貝塚北斜面貝層に関する共同研究

 Joint research on the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita shell mound


The Ariyoshi Kita shell mound is a circular settlement that was established around the Kasori EⅠ style period of the middle Jomon period, and is surrounded by four slope shell layers. The north slope shell layer is a large shell layer that has not been disturbed in the past, and is a rare example of a complete excavation that began in 1984. We have begun joint research on this shell layer on the north slope, and have now compiled an interim report, which will be explained in detail in a series of articles.


有吉北貝塚は縄文時代中期の加曽利EⅠ式期頃をピークとして営まれた環状集落で、4箇所の斜面貝層に囲まれています。そのうち北斜面貝層は後世撹乱皆無の大型貝層であり、それが1984年からの発掘調査で完掘された珍しい例です。この北斜面貝層の共同研究にとりかかり、この度中間報告をとりまとめましたので連載記事で詳しく解説します。

1 有吉北貝塚の様子


有吉北貝塚の位置

有吉北貝塚は当時の東京湾海岸線から谷津を1.5kmほど入った谷奥部の台地尾根に位置する縄文時代中期中葉頃の環状集落遺跡です。竪穴住居数を指標とすると、加曽利EⅠ式期がピークとなります。


有吉北貝塚の様子

環状集落の周りには4箇所の斜面貝層が存在していて、そのうち北斜面貝層は後世撹乱皆無の大型貝層であり、それが1984年からの発掘調査で完掘された珍しい例です。

有吉北貝塚の発掘調査報告書は1998年に刊行されました。同時に印刷物にならない手書きの膨大な精細発掘資料が残され、保存されました。


北斜面貝層の断面

2 北斜面貝層に関する共同研究(荒木・西野)について

有吉北貝塚北斜面貝層を対象に、荒木・西野は2年前から共同研究に取組みました。共同研究では、北斜面貝層について、遺物種別の投棄(埋納)原理が異なるのではないかという作業仮説実証を目的に、3D空間分析用データベースを構築活用して知見増加を試みました。

データベースは発掘調査報告書未収録の遺物台帳や遺物分布図など精細情報をメインにして構築しました。利用システムはリレーショナルデータベース管理システムpostgreSQL(フリーソフト)に遺物データを格納し、統合型3DCGソフトBlender(フリーソフト)に貝層や遺物をプロットするものとしました。これにより貝層発達と遺物出土状況の関係を3D空間の中で分析し、見える化できるようにしました。なお2025年5月現在、データベース構築は一部作業を未了として残していますが、完成すればこれまで未利用であった発掘原票資料が内包する高度学術価値を顕在化させる一つの事例となることを期待しています。

この共同研究について、この度中間報告をまとめ、2025年5月17日に開催された千葉縄文研究会で発表しました。

●共同研究中間報告の表題

「有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間分析用データベースの構築と活用」

●共同研究者

荒木稔、西野雅人

●中間報告の3つの主要コンテンツ

・3D空間分析用データベースの構築

・土器再分類と3D分布モデル

・データベース活用 -貝層・遺物分布分析-

●研究の根幹活動


貝層と遺物の3D空間可視化

研究の根幹活動を1枚の画像で表示すると、上記のようになります。貝層と遺物の分布を仮想3D空間のなかで可視化(見える化)しました。

中間報告資料は次からダウンロードできます。

荒木・西野共同研究中間報告資料

3 連載予定

共同研究中間報告について、次の連載記事で順次詳しく解説します。

第1回 有吉北貝塚の概要と研究目的など(この記事)

第2回 データベースについて

第3回 北斜面貝層の概要

第4回 土器再分類と土器片の3D空間展開

第5回 活用事例の目的・方法・資料

第6回 貝層大区分

第7回 斜面性貝層細区分

第8回 貝層発達史(貝層区分と土器型式)

第9回 貝層大区分別遺物3D分布

第10回 斜面性貝層細区分別遺物3D分布

第11回 土器3D分布

第12回 骨・歯3D分布

第13回 イノシシ顎骨と狩猟道具3点の接近出土

第14回 活用事例まとめ

第15回 技術的工夫

第16回 まとめ

2025年5月21日水曜日

姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of Ubayama II pottery (Kasori shell mound, Chiba city)


A 3D model of the observation record of Ubayama II pottery from the late Jomon period excavated from the Kasori shell mound in Chiba city was created. This pottery was excavated during the second survey by Chiba city in 1964 and 1965. This survey revealed that the Minami shell mound is a shell mound with a depression in the center. The three jagged edges of the rim of this complete bowl-shaped pottery are impressive.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の姥山Ⅱ式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。この土器は1964年・1965年の千葉市による第2次調査で出土したものです。この時の調査で南貝塚が中央に窪地を有する貝塚であることなどがわかりました。この完形鉢形土器の口縁3単位のギザギザが印象的です。

1 姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第2次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 62 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(画像)


GigaMesh Software Frameworkによる展開(Non-Photorealistic Rendering)

3 メモ

今回の資料観覧会は加曽利貝塚第14次発掘資料を対象としていますが、この土器は同じ85号住居址から第2次発掘で出土したものが参考として展示されたものです。「1964年・1965年の千葉市による第2次調査では、南貝塚が中央に窪地を有する貝塚であること、縄文時代後期の拠点集落であることが明らかになり、国史跡指定につながりました」(松田光太郎(2024)「千葉県特別史跡加曽利貝塚における縄文晩期の調査」(考古ジャーナル793)による)。

この完形鉢形土器の口縁3単位のギザギザが印象的です。



貝塚研究者との貝塚共同研究の中間発表

 Interim report of joint research on shell mounds with shell mound researchers


I have been conducting joint research on shell mounds with Masato Nishino, former director of the Chiba City Buried Cultural Properties Research Center, a leading Japanese shell mound researcher, for the past two years. I have just released an interim report, so I will introduce the details and my impressions in several articles. The title is "Construction and use of a database for 3D spatial analysis of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita shell mound."


日本の第一線貝塚研究者である前千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人さんと、2年前から貝塚に関する共同研究を行ってきました。この度その中間報告をしましたので、詳細と感想を数回の記事に分けて紹介します。表題は「有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間分析用データベースの構築と活用」です。

1 有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間分析用データベースの構築と活用


中間報告資料の最初ページ

2年前から、日本の第一線貝塚研究者である前千葉市埋蔵文化財調査センター所長の西野雅人さんと、有吉北貝塚に関する共同研究を行ってきました。この度、研究の最初の山を越える状況に至りましたので、その中間報告を2025年5月17日千葉縄文研究会で行いました。研究会には40年前の有吉北貝塚発掘に参加され、現在も第一線で活躍されている発掘専門家数人を含めて、多数の貝塚発掘関係者・研究者の皆様が参加され、貴重なコメント・アドバイスをいただくことが出来ました。御礼申し上げます。この共同研究中間発表詳細と自分の感想を、このブログで数回の記事に分けて紹介することにします。

2 共同研究中間報告の概要

共同研究中間報告概要は次の通りです。

●研究概要:有吉北貝塚北斜面貝層の3D空間分析用データベースを構築し、遺物種別の投棄原理の違いを検証することを目的とした。​データベースはpostgreSQLとBlenderを活用して作成され、貝層発達と遺物分布の関係を3D空間で分析可能にした。 ​

●データベース構成:データベースは地山地形データベース、貝層データベース、遺物データベースの3つで構成した。

●貝層と遺物の関係:貝層区分と土器型式の対応を分析し、斜面性貝層と流路性貝層で異なる分布特性を確認した。​土器は貝層斜面下段、骨・歯は貝層斜面中腹に密集する傾向がある。 ​

●技術的工夫:PythonやBlenderPythonを多用し、3D空間での表示・分析を実現した。​ChatGPTの支援により作業効率が向上した。

●成果と課題:3D空間分析により、遺物と貝層の関係を明らかにする画期的な成果を得た。​一方で、斜面移動に関わるデータ不足や精度向上の課題が残る。 ​

●今後の展望:分層情報の再吟味、分析技法の開発を進め、データベースの完成を目指す。​

3 共同研究中間報告資料

この共同研究に興味のある方はpdfをダウンロードすることができます。

荒木・西野共同研究中間報告資料(pdf、10ページ)



2025年5月20日火曜日

安行3b式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 Angyo 3b pottery (Kasori shell mound, Chiba city) observation record 3D model


A 3D model of the observation record of Angyo 3b pottery from the late Jomon period excavated from the Kasori shell mound, Chiba city, was created. The crest of the 5-unit wavy rim has two clay strings that look like hoods, two spoon-shaped protrusions, and a clay string wrap, which is distinctive. This feature seems to have degenerated over time.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の安行3b式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。5単位の波状口縁の波頂部には頭巾形に見える2つの粘土紐貼付と2つの匙状突起貼付及び粘土紐巻があり、特徴的です。時代を経るとこの特徴は退化するようです。

1 安行3b式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

安行3b式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 55 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(画像)


GigaMesh Software Frameworkによる展開(Non-Photorealistic Rendering)

3 メモ


発掘調査報告書実測図

発掘調査報告書(※)におけるこの土器の記載は次の通りです。

「2)(4・6〜8) 突起を付した五単位の大波状口縁で頸部に三角形区画文を持つ深鉢形土器。体部の装飾は最大径付近に横帯区画を基本に充填縄文手法で施すものと推測できる。4の口頸部はほぼ直立するが、波底部は僅かに内傾・波頂部は外傾気味である。断面図に表現しきれていないが、頸部中程の内面にわずかに稜があり全周している。口縁外側は区画線が深く幅広いため明瞭ではないが、平坦面を作出した隆起帯縄文であり、頸部の三角形区画文の縄文帯もわずかに隆起している。波頂部上端は中央を窪ませて両端が尖る頭巾状で、この端部に短い粘土紐を内側から、波頂部基部は外側から巻き付けている。波頂部正面に上下二連に匙状の貼付文を加えるが、窪んだ部分に後述C種に見られるような短い抉りは無い。体部最大径付近に長円形文と横長貼付文を交互に五単位配置し、下側に横位区画線を巡らせて長円形文との間に縄文を充填する。更に間を開けてもう一本区画線を配置し、この間はミガキを加えて光沢を持つが、区画線より下は磨かずに調整痕を残している。」

発掘調査報告書における舐めるように精緻な土器観察に一種の感動を覚えます。どんな微細な特徴も決して見逃さない観察達人の世界がそこにあります。

上記記載を念頭に今回作成3Dモデルを見ると、この土器の特徴を体験的に実感できます。

※ 「特別史跡加曽利貝塚 第14次調査報告書」(2024、千葉市教育委員会・千葉市埋蔵文化財調査センター)


安行3c式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 Angyo 3c pottery (Kasori shell mound, Chiba city) observation record 3D model


I created a 3D model of the observation record of Angyo 3c pottery from the late Jomon period, excavated from the Kasori shell mound in Chiba city. I wanted to see the pattern in a clearer impression image, so I created a Non-Photorealistic Rendering image with the GigaMesh Software Framework. The wave crest-like part has a complex pattern.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の安行3c式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。文様をより鮮明な印象画像で確認したいので、GigaMesh Software FrameworkのNon-Photorealistic Rendering画像を作成しました。波頭みたいなところが入組文になっています。

1 安行3c式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

安行3c式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査140号住居跡(大洞C1併行期)出土土器

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 64 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(画像)


GigaMesh Software Frameworkによる展開(Non-Photorealistic Rendering)

3 メモ

文様の波頭みたいなところが入組文になっています。

2025年5月17日千葉市埋蔵文化財調査センターで開催された千葉縄文研究会に参加させていただきました。午前中の加曽利貝塚第14次調査資料観覧会で多数資料について3Dモデル作成用の撮影を行いました。


資料観覧の様子(リーニュクレール画像)


資料観覧の様子(リーニュクレール画像)


2025年5月19日月曜日

石製垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of stone pendant (Kasori shell mound, Chiba city)


A 3D model of the observation record of a tiny (approximately 2cm long diameter) stone pendant excavated from the site of a late Jomon dwelling (Angyo 3b style period) at Kasori shell mound, Chiba city was created. The round hole through which the string passes and the surrounding area are intricately processed, giving the impression of a modern industrial product.


千葉市加曽利貝塚の縄文晩期住居址(安行3b式期)から出土した微小(長径2㎝程)な石製垂飾品の観察記録3Dモデルを作成しました。紐を通す丸孔とその周辺の加工が精緻で、現代工業製品のような印象を受けます。

1 石製垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

石製垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 101 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 メモ

2025年5月17日に千葉市埋蔵文化財調査センターで開催された千葉縄文研究会の午前の部で展示された多数遺物の中で、この石製垂飾品が最小の遺物でした。長径2㎝程で、紐を通す丸孔とその周辺の加工が精緻で、現代工業製品のような印象を受けます。


姥山式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of Ubayama-style pottery (Kasori shell mound, Chiba city)


I created a 3D model of the observation record of Ubayama-style pottery from the late Jomon period excavated from the Kasori shell mound in Chiba city. I wanted to confirm the pattern, so I created two types of unfolded images using the GigaMesh Software Framework. I learned about the pattern hierarchy of thunder pattern-diamond pattern-entangled pattern.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の姥山式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。文様を確認したいのでGigaMesh Software Frameworkによる展開画像を2種作成。雷文-菱形文-入組文という文様階層性を教わりました。

1 姥山式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

姥山式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査140号住居跡(大洞C1併行期)出土土器

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 129 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(画像)


GigaMesh Software Frameworkによる展開(Non-Photorealistic Rendering)

3 文様説明

発掘を担当された加曽利貝塚博物館松田光太郎さんより雷(いかづち)文-菱形文-入組文という文様階層性を読みとることができるとの説明がありました。自分は入組文に興味があるので、まずそちらに目がいくのですが、入組文は菱形文の装飾として捉えるべきであるとの説明でした。

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久しぶりの土器3Dモデル作成、GigaMesh Software Frameworkによる展開作業で、ドギマギしてしまいました。