2021年7月9日金曜日

有吉北貝塚北斜面貝層から出土した藤内Ⅱ式土器

 縄文社会消長分析学習 112

2021.07.08記事「土はどこから 補遺」で掲載した画像「第2断面 純貝層直下の混貝土層から出土する多様な遺物」の写真に写る藤内Ⅱ式土器について写真を拡大してみました。

1 第2断面 純貝層直下の混貝土層から出土する多様な遺物


第2断面 純貝層直下の混貝土層から出土する多様な遺物

2 Ⅱ-42・52 P層


Ⅱ-42・52 P層

3 「Ⅱ-42・52 P層」に写る藤内Ⅱ式土器


「Ⅱ-42・52 P層」に写る藤内Ⅱ式土器

この土器片は発掘調査報告書では、第4群土器に分類されています。阿玉台Ⅲ式期に比定される勝坂様式の資料で藤内Ⅱ式の縦帯区画文土器で、隆線による三角形区画文が縦帯し、内部には彫刻的手法による三叉文が充填されると記述されています。

この古い土器片が11群土器片(加曽利EⅡ式最終段階)と一緒に出土することに興味を持ちます。11群土器片と4群土器片が11群土器の時代に一緒にこの場に持ち込まれたことは確実です。11群土器時代に4群土器片が台地集落内に保存されていたことと、それをわざわざ祭祀的な場所に持ち込むことから、一種の記念品として保存されていた土器片が重要な祭祀に際して持ち込まれたと想像します。

4 感想

11群土器(加曽利EⅡ式最終段階土器)の簡素化省略化した渦巻と特徴的な懸垂文と較べると、藤内Ⅱ式土器の三角形区画文とその中に彫刻的手法で描かれた三叉文は文様デザインの重厚さ、緻密さという点が浮き彫りになります。このデザインの違い(簡素と重厚の違い)は11群土器を使っていた縄文人も同じように感じていたと想定します。

藤内Ⅱ式土器片を加曽利EⅡ式最終段階縄文人が本当に「お宝」「記念品」として所持していたかどうかは証明する手段がありません。単純に竪穴住居周辺に転がっていたものにすぎないかもしれません。しかし祖先がつくったこの土器片をわざわざ北斜面貝層に持ち込んでいるのですから、11群土器とはまた異なる効能(ご利益)を期待したとか、11群土器が発揮する効能(ご利益)を補強したとかがあったに違いないと想像します。

2021年7月8日木曜日

土はどこから 補遺

 縄文社会消長分析学習 111

2021.07.07記事「有吉北貝塚北斜面貝層成立メカニズム 土はどこから」の裏付けとなるような情報を4点について補遺としてメモしておきます。

1 土を採取した場所


土を採取した場所

混土貝及び混貝土作成材料として、及び埋め立て材料として土を採取した場所を想定しました。ガリー主流路右岸側の地山が不自然に凹み、まるでミニ河岸段丘のようになった場所もあります。この場所以外に土を採取した場所は見つかりません。

2 混土貝層から出土する多様な遺物


第2断面 純貝層直下の混貝土層から出土する多様な遺物

第2断面で、純貝層に覆われた混貝土層から多様な遺物が出土しています。多様な土器片とともにほぼ完形で器台が出土しています。器台は祭具です。この混貝土でつくられたテラスが祭場として機能していたのでしょうか。(なお、器台出土の記述は発掘調査報告書では見つかりません。)イノシシ頭骨、イタボガキ貝輪と磨製石斧の共伴出土なども否が応でもこの場所が祭祀的場所である可能性を物語ります。

写真左上の多数土器片写真の右端の土器片は発掘調査報告書では第4群土器に分類されています。阿玉台Ⅲ式期に比定される勝坂様式の資料で藤内Ⅱ式の縦帯区画文土器です。隆線による三角形区画文が縦帯し、内部には彫刻的手法による三叉文が充填されると記述されています。この古い土器片が11群土器片(加曽利EⅡ式最終段階)と一緒に出土することに興味を持ちます。11群土器片と4群土器片が11群土器の時代に一緒にこの場に持ち込まれたことは確実です。11群土器時代に4群土器片が台地集落内に保存されていたことと、それをわざわざ祭祀的な場所に持ち込むことから、一種の記念品として保存されていた土器片が重要な祭祀に際して持ち込まれたと想像します。

3 縦断面との対比

第1断面(縦断面)を色塗りしました。


第1断面(縦断面)


第1断面(縦断面)の位置

この第1断面(縦断面)と第2断面が交差する線分で標高26.9mのポイントに着目してみます。


第1断面(縦断面)と第2断面の対応

第1断面(縦断面)では標高26.9mポイントから左上に地層境界面が直線状につづき、ガリー地形埋め立て概成時の地形面であると想定ができます。一方、同点を第2断面(横断面)でみると混貝土層と純貝層の間の境界線に通じる位置にあります。この位置関係から、第2断面の純貝層形成直前にはガリー地形が混貝土層をメインにしてほぼ埋め立てられていたことがわかります。ガリー地形特有の基底急崖が埋め尽くされ無くなっています。

ガリー地形の埋め立てが盛んに行われたり、概成したりした時期に、工事成就祈願の祭祀がたびたび行われ、その結果が第2断面混貝土層に残ったと考えることができます。またそれらの祭祀跡を工事完成(概成完成)を記念して、純貝層で覆い、後世に向かって保存保全したと考えても矛盾は生まれません。

4 第2断面の砂層・土層混在について


第2断面 検討図

第2断面のオ(砂層・土層混在)について、その混在状況が自然堆積物(崩落物)と考えると不自然であり、人工埋め土であると想定します。次の資料の通り、下流の横断面では左岸に砂層と土層が観察できますが、それらの混在はなく自然崩落物(崖錐など)と観察できます。


横断面における左岸砂層・土層の様子


2021年7月7日水曜日

有吉北貝塚北斜面貝層成立メカニズム 土はどこから

 縄文社会消長分析学習 110

発掘調査報告書掲載第2断面の詳細記述を良く読んで、第2断面から読み取れる貝層成立メカニズムを検討しました。そのなかで、貝層に含まれる土の起源や混貝土層・混土貝層の意義、純貝層の意義について作業仮説の候補となるようなイメージが湧いてきましたのでメモします。

1 第2断面


第2断面


第2断面写真


第2断面写真


第2断面位置

2 第2断面詳細記述に基づく貝層形成メカニズム検討


第2断面詳細記述に基づく貝層形成メカニズム検討

ア 谷底に薄く堆積する土層で、右岸側の地山から掘削して運搬してきて埋め土したものであると考えます。この時期は少し下流で廃用大型土器を破壊して大形土器片を配置した頃であると考えます。

イ 混貝土層が3層にわたって堆積しています。この混貝土層から土器やイノシシ頭骨などが出土しています。遺物が豊富です。土は右岸地山から掘削運搬してきて、この現場で貝(破砕貝など)と混ぜて埋め土したものと考えます。混貝土層により形成する地面は祭祀の場として利用されたものと考えます。

ウ 純貝層から顕著な遺物出土はないようです。純貝層はそれで地面を作るという意義よりも、大切なモノを覆うという機能が大きかったものと考えます。具体的にはイで行われた祭祀活動の場を保存(保全)するためにつくられた聖的な覆いだったと考えます。

エ 混土貝層と混貝土層による継続的反復埋め土が行われ、祭祀活動の場であったと考えます。材料の土は右岸地山から掘削運搬されたと考えます。

オ ア~エの期間に右岸地山から掘削運搬して埋め土された跡であると考えます。ア~エとオの境はガリー主流路の流心であると考えます。

カ、キ、ク ア~オの貝層形成が終わった後(ガリー流路が貝層・土層で充填された後)、新たにガリー侵食された跡であると考えられます。

ケ キの後に形成された後期貝塚です。

3 感想

この記事では煩雑になるので掲載しませんでしたが、右岸地山から土を掘削した跡が地形として確認できます。

有吉北貝塚集落の人々は単純に貝を貝塚に捨てたというのではなく、貝を破砕する作業、土を掘削運搬する作業、貝(破砕貝)と土を混ぜて新たな埋め立て素材(混土貝、混貝土)をつくり埋め立てする作業、土だけの掘削運搬埋め立て作業をしていたことになります。

混貝土層から遺物出土が多いことから、混貝土層埋め立てで作られる地面は特別の意味があり、祭祀の場として利用されたのかもしれません。

純貝層は聖的なモノや活動(祭祀の場)を保全保護して封印する役割があったのかもしれません。

これだけの大土木工事をしていたのですから、土木工事にかかる道具などの推定も根拠を持ってできる可能性があるかもしれません。

また、これだけの大土木工事の意義が果たしてガリー侵食による集落災害危機にだけ対応するものかどうか、検討を要すると思います。ガリー侵食以外に同根のもっと大きな危機(食糧危機)がせまっていたのかもしれません。ガリー浸食地形を充填するという大土木工事が終わるとともに集落が終焉してしまうことがヒントになるかもしれません。

ガリー侵食が発生するということは植物が使い尽くされて、裸地が広がっていたということです。燃料危機とか食糧危機がガリー侵食危機と同時に発生していたのかもしれません。

2021年7月6日火曜日

有吉北貝塚北斜面貝層成立メカニズムに関する作業仮説

 縄文社会消長分析学習 109

有吉北貝塚北斜面貝層に関して発掘調査報告書データの分析が進んでいます。この活動の中で、いろいろな事実が判ってきました。まだ途中ですが現在までの知見に基づいてこれまでイメージしてきた貝層成立メカニズムを作業仮説としてまとめてみました。今後の分析作業を効率化するための仮説であり、不都合な点が判れば、躊躇なく加除修正するレベルの仮説です。

1 発掘調査報告書データ分析で判った事実など

分析作業で判った事実などを断面図・平面図作業画像にメモしました。


断面図・平面図作業画像メモ

1-1 北斜面貝層の位置

北斜面貝層は台地面と谷津谷底の間にある斜面の途中に発達する箱形窪地地形に形成されています。箱形窪地地形のガリー主流路左岸側(西側)だけにすっぽり収まっています。

住居近くの斜面に単純に貝を捨てたのではありません。特異な箱形窪地地形を意識してそこにだけ貝塚を形成しています。


参考 有吉北貝塚における北斜面貝層の位置

1-2 北斜面貝層の分布

箱形窪地地形の中に南北方向にガリー主流路(おそらく普段は空川)があり、その主流路を越えて貝を捨てていません。

なおガリー主流路堆積物は流心付近で明瞭に貝塚堆積物と土層に分かれます。(画像メモC参照)


参考 ガリー主流路流心を境に左右で堆積物が異なる様子

1-3 ガリー侵食地形と崩落物堆積地形

箱形窪地地形の貝塚形成前の地形は上流側はガリー侵食地形、下流側は崩落物堆積地形であると断面図や発掘写真から想定できます。ガリー浸食地形はその谷底に10群・11群土器(加曽利EⅡ式土器)をメインにして、集落最終期土器(12群土器…加曽利EⅢ式土器)を含む大形土器片層が存在します。この事実からガリー侵食地形は12群土器(加曽利EⅢ式土器)頃までアクティブであったと推定できます。つまりガリー浸食地形は加曽利EⅡ式~EⅢ式期頃急発達した可能性があります。一方、崩落物堆積地形は更新世の化石谷津であると想定します。(画像メモのAとB参照)


参考 貝塚形成直前地形の想定

1-4 貝層のほとんどが破砕貝による混土貝層と混貝土層

貝層はほとんどが混土貝層と混貝土層であり純貝層はとても少なくなっています。また純貝層以外の貝は破砕されている率が高くなっています。つまり貝層は、意図的に貝を破砕し、意図的に土と混ぜ、それを意図的に斜面や谷底に隈なく設置して、箱形窪地地形の集落側を充填するような様相を呈しています。

画像メモAではガリー侵食地形谷頭部に混土貝層と混貝土層が充填していますが、土器や獣骨の出土状況写真をみると混土貝層と混貝土層を下から積み上げて充填したもで、上から投げ込んだものではないような印象を受けます。

1-5 大形土器片

箱形窪地地形谷頭の少し下流から中央付近にかけて、基底で流路を覆うように廃用大型土器を破壊して作られる大形土器片が層を成しています。その大形土器片のメインは11群土器(加曽利EⅡ式土器の後半)ですが、12群土器(加曽利EⅢ式土器)も含まれています。12群土器は集落最後の土器群です。


参考 大形土器片の分布

1-6 縄文後期までのガリー侵食痕跡

第2断面には混土貝層・混貝土層が形成された後で後期貝層が形成される前までにガリー侵食を受けた痕跡が残されています。


縄文後期までにガリー侵食を受けた混土貝層・混貝土層の様子

2 北斜面貝層形成のメカニズム(作業仮説)

ア 11群土器頃(加曽利EⅡ式後半頃)箱形窪地地形でガリー侵食が突然発生し、集落中心部台地地形崩壊という災害危険性が顕在化しました。

イ 集落として災害防止のために土木的対処を含む取り組みを意思決定したと考えます。

ウ ガリー主流路の下方侵食防止のために、一部区間に廃用大型を持ち込み破壊して大形土器片をつくり、主流路の上に並べました。現代防災工事における床固工と類似している工事です。廃用大型土器を現場で破壊する活動は祭祀的活動であったと想像します。大形土器片と一緒にイノシシ頭骨、下顎骨が複数出土しています。

エ ついで、破砕貝を土と混ぜた混土貝・混貝土を多量につくり、それをガリー侵食地形に充填する活動を精力的に行いました。

オ さらにガリー侵食地形のみならず隣接する崩落物堆積地形にも混土貝・混貝土及び純貝層を堆積させ、箱形窪地地形全体を埋め立てるような活動を行いました。

カ この結果、ガリー浸食地形の進展は防止されました。

キ 12群土器(加曽利EⅢ式土器)を最後に集落は消滅しました。

ク その後、後期貝塚が形成されるまでの間に充填した混土貝層・混貝土層が一部ガリー侵食で失われ、それが貝層断面に記録されています。

3 メモ

・これまで崩落物堆積地形の貝層は古く、ガリー侵食地形の貝層は新しいと見立てていましたが、土器出土状況をみるとどうも逆のようです。今後詳しくデータ分析します。

・箱形窪地地形の地学的出自は貝層断面図から侵食と堆積という違いによるり、2つに区分される蓋然性が高まりました。

・第2断面図で混土貝層・混貝土層が侵食されている様子が確認できましたが、純貝層を中心にして充填物の基本は残存しています。混土貝層・混貝土層・純貝層が侵食に強い素材であることが証明されたともいえます。

・北斜面貝層形成は一種の土木事業であると見立てて間違いないという感想を持ちました。


2021年7月3日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層基底の大形土器片層

 縄文時代社会消長分析学習 108

2021.07.02記事「有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構」で 有吉北貝塚北斜面貝層の谷頭部付近がガリー浸食地形を埋めて台地浸食破壊を食い止める防災工事跡である、防災工事遺構であるという見立てを述べました。この見立てでは貝層基底部に存在する大形土器片層を現代でいえば床固工であると考えました。この記事ではこの大形土器片層を観察してみます。

1 再掲 有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構(見立て)


有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構(見立て)

2 第3断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真


第3断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真

土器出土状況図と写真を対照することができましたので、写真、平面図、断面図を総合的に観察できます。普段は枯れている流路にそって大形土器片が分布しています。その場で破壊されたと考えられます。流水の影響は特段に感じられません。廃用大型土器をこの谷底まで持ち込みそこで破壊して、ほぼそのまま残存したのだとおもいます。仮に頻度の低い出水で土器片が流されても、再びこの場に廃用土器を持ち込み破壊して、結局流路沿いに大形土器片層を残存させたのだと思います。

3 第4断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真


第4断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真

ここでも土器出土状況図と写真を対照することができました。第3断面と状況はほとんど同じです。しかし、この付近では平面図でインブリケーション(覆瓦状構造)が観察できます。


参考 土器出土状況の様子


参考 覆瓦状構造

土器片が流水の影響を受けたことがあることはこの覆瓦状構造の存在から明らかです。しかし、全体の様子は流水の影響をあまり感じさせない堆積状況を示すといっていいと思います。このような様子は、土器片が流路固定のために設置された床固工類似施設であると考えると、よく理解できます。つまり、土器片層は通常レベルの流水発生では流路を固定していた(下方浸食を防いでいた)ということです。縄文人は通常レベルの流水発生では運搬されることがなく下方浸食されないであろうと考えた土器片をその場に設置したのだと思います。

4 第5断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真


第5断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真

ここでも土器出土状況図と写真を対照することができました。

この付近より下流では土器片の分布が散漫になりかつ拡大します。また土器片が小さくなります。この付近から下流では上流から運搬されてきた土器片が多くなるのかもしれません。

5 メモ

一人では到底運べない廃用大型土器を谷底まで運び込み、その場で破壊するというきわめて特異で意識的な活動が認められます。

この記事では扱いませんが、イノシシ頭骨、下顎骨が土器片とともに出土していて、イノシシ頭骨を使った祭祀が土器片層形成に関連して存在したと推定します。

大型土器破壊による大形土器片層は北斜面貝層でこの場所だけです。短い期間の1回きりの活動です。

出土土器は11群土器がメインですが、12群土器も含まれます。12群土器は集落最後の土器群です。つまり北斜面貝層谷頭部付近の貝層は基底面から最上部まですべて集落最終期に急いで形成された可能性が生まれます。貝層形成のメカニズムを解き明かさなければなりません。


2021年7月2日金曜日

有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構

縄文時代社会消長分析学習 107 

有吉北貝塚北斜面貝層の各種分析と写真カラー化による観察のなかで、思考のための材料が揃い、北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構であるという見立てを裏付け材料を整えて設定することができました。この記事ではその見立てをメモします。詳細解説資料は追って作成することにします。

1 有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構(見立て)


有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構(見立て)


見立ての裏付けとなる主な材料

2 メモ

断面図データから標高を拾い作成した基底地形を発掘状況写真、完掘写真で直接確認することができました。分析的データだけではなく、現場写真という直接データで確認できました。この情報からガリー浸食地形の実態が明白になりました。

また断面図情報からこのガリー浸食地形(遷急点を内蔵するV字谷)を下から順番に大形土器片、混土貝層・混貝土層、純貝層、混土貝層・混貝土層が覆って埋め尽くしている(地形を充填している)ことも明らかとなりました。

谷頭部にこのような人工充填作業を行うことは一般的廃棄作業では不可能です、意識的組織的活動によりつくられたと考えられます。状況からこの充填作業は集落中央部にせまる地形崩壊危機を回避するための土木工事、災害防止工事であると見立てました。

大形土器片層設置は流路の下方浸食防止のために設置されたと考えます。現代工法でいえば床固工です。混土貝層・混貝土層、純貝層の充填は難浸食材を使うことによる浸食防止です。現代工法でいえば土嚢による埋め立て、あるいはセメントを利用した埋め立てです。

なお現代土木工事でも貝殻を砕いて舗装材と混ぜて締め固めたり、コンクリート用骨材として利用しますから、貝殻を砕いて土と混ぜ、一段と締固められた土木空間を創造した縄文人の知恵の深さに感動します。混土貝層・混貝土層とは縄文人が意図して作成した土木空間埋め立て工事用材料です。


2021年7月1日木曜日

「土偶を読む」を読む

 竹倉史人著「土偶を読む」(2021、晶文社)を読みました。とても興味深い図書で考えさせられることがいろいろありましたので、感想をメモします。


竹倉史人著「土偶を読む」(2021、晶文社)

1 人類学者による土偶研究

考古学者による土偶研究ではなく、人類学者による土偶研究という点でこの図書は異色の研究だと思います。人類学者が土偶という考古発掘成果物を研究対象にしたこと自体に興味が湧きます。同じ土偶を扱っても考古学者と人類学者では研究の視点、手法が異なることは当然です。また得られる結果も同じようになるとは限りません。むしろ異なる見解が生まれることの方が健全です。土偶は考古学手法によって発掘整理されますが、それは社会的文化財になりますから、人類学者、神話学者、心理学者等の分野からも研究対象になることが社会全体の知性向上になると思います。

2 土偶は読むことができる

著者は土偶は読むことができる、土偶は一つの「造形言語」であり、文字の無かった縄文時代における神話表現の一様式であると述べています。自分は正にその通りと考えます。(自分は、著者の言葉を借りれば土偶のみならず土器も「造形言語」だと考えます。)なお、土偶は読む対象ではないとか、あるいは土偶を読んでもそれは実証できないのだから意味がないと考えるならば、この図書の記述は荒唐無稽に感じることになります。

3 植物の人体化

著者は植物の人体化(アンソロポモファイゼーション、anthropomorphization)という概念で土偶を観察して、土偶とは植物に手と足がついたものであると論じています。その論は世界で初めてであるとしています。

この図書では「植物の人体化」概念を土偶に当てはめたこの研究が、土偶研究の地平を新たに切り開くものであるのか、それとも単なる思いつきレベルの研究であるのか、その判断を読者に挑発的に委ねています。

4 土偶プロファイリング

9種の土偶について植物の人体化概念を当てはめて検討しています。最初のハート形土偶がオニグルミに酷似するという論は、自分は無意識的に反発するのではないかと意識が予想したのですが、結果は、「それもあるかもしれない」という感想を持ちました。


ハート形土偶とオニグルミ

竹倉史人著「土偶を読む」(2021、晶文社)から引用


驚くほどの形態の近似

竹倉史人著「土偶を読む」(2021、晶文社)から引用


驚くほどの形態の近似

Photoshopニューラルフィルター機能によるカラー化

しかし、読み進めるに従って「それはいくらなんでも違うんじゃない」という感想も幾つか浮かびます。同時になるほどと思うことも多々あります。

5 感想

著者の提示する事例を全部首肯できないですが、事例全部の完全否定もできません。むしろ植物の人体化概念のもっともらしさを感じるようになります。

土偶は女性のつくったものであり、植物採集が女性の仕事であったということを考えると、土偶に植物の人体化概念を当てはめることは魅力的仮説思考です。

この図書内容は、土器や土偶を扱う考古研究者の興味(分類、編年)とは離れています。つまりこの図書は考古学専門図書ではありません。あくまでも人類学図書です。そうした前提を踏まえて、この図書をさらに深く検討することを楽しむことにします。


2021年6月29日火曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の遺物出土状況写真

縄文社会消長分析学習 106

有吉北貝塚北斜面貝層発掘状況写真120点のうち64点が遺物出土状況写真です。これをカラー化して整理しました。整理結果と感想をメモします。

1 遺物出土状況写真64点のカラー化

Photoshopニューラルフィルター機能を利用して、発掘調査報告書掲載白黒写真をカラー化しました。


遺物出土状況写真64点のカラー化

なお、カラー化は観察しやすさの実現を目的としたものであり、当初撮影カラー写真の色味実現を目指したものではありません。恣意性を回避するために、具体的には次の手順により自動的に行いました。

ア 発掘調査報告書白黒写真のスキャン

以下Photoshopによる作業

イ ニューラル機能によるカラーレイヤー作成(色味等未調整)

ウ トーンカーブによる色彩強調

エ カラーレイヤーと元写真レイヤーの乗算ブレンド

オ カラー写真(JPGファイル)書き出し

2 遺物出土状況写真の整理

遺物出土状況写真(No.57~No.120)のうち出土場所が特定されているものについてその位置を地図にプロットしました。


遺物出土状況写真位置プロット図

同時に写真を自分の問題意識に沿って分類しました。

3 感想とメモ

ア 基底部土器出土状況

基底部土器出土状況写真が主なものだけでも6点ありますので、今後詳しく分析することにします。北斜面貝層で行われた特徴的イベント結果がこのような地層として残ったと考えます。


基底部土器出土状況1


基底部土器出土状況2


基底部土器出土状況3

イ 大形土器片

北斜面貝層出土土器片は大形であることが特徴です。これがどのような活動の結果を物語るか、これからじっくり検討します。


大形土器片1


大形土器片2


大形土器片3

ウ 器台

器台出土と考えられる写真が含まれています。


器台

しかし、発掘調査報告書北斜面貝層の記述には器台出土が見つかりません。また発掘調査報告書全体を通しても器台出土の記載を見つけていません。器台には特別の興味があるので、この器台についての情報を何らかのかたちでいつか確かめる(問い合せする)ことにします。

エ イノシシ頭骨

イノシシ頭骨、下顎骨の出土写真が6点掲載されています。


イノシシ頭骨


イノシシ下顎骨1


イノシシ下顎骨2


イノシシ下顎骨3

イノシシ頭骨が立った状態で出土し、下顎骨が土器片と隣接して出土していますが、このような出土状況から何か情報を引き出せるのか、検討することにします。

オ 装飾品


イタボガキ貝輪(と磨製石斧)


イモガイ装飾品

カ 完掘状況写真


完掘状況写真1


完掘状況写真2

完掘状況写真が8点含まれていて、これらから貝層が立地した場所の基底面地形(下総層群上面地形)を読み取ることができます。 

2021年6月28日月曜日

加曽利E式土器等60器3Dモデルの動画

 縄文土器学習 619

2021.06.07記事「中峠式土器及び加曽利EⅠ式・EⅡ式・EⅢ式・EⅣ式土器全60器 観察記録3Dモデル」で作成した加曽利E式土器等60器3Dモデルの動画をBlenderアニメーション機能を利用して試作してみました。

Blenderでオブジェクトではなくカメラを移動させて作成したアニメーションの動画です。

1 加曽利E式土器等60器3Dモデルの動画


加曽利E式土器等60器3Dモデルの動画

1分30秒の動画です。

2 中峠式土器及び加曽利EⅠ式・EⅡ式・EⅢ式・EⅣ式土器全60器 観察記録3Dモデル

中峠式土器及び加曽利EⅠ式・EⅡ式・EⅢ式・EⅣ式土器全60器 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2020.11.27 2021.01.06 2021.02.02 2021.02.09 2021.02.16

ガラス面越し撮影

全土器同一縮尺

個別土器3Dモデルは3DF Zephyr v5.019で生成、Blenderで全体編集、3DF Zephyr v5.019でSketchfabアップロード

Sketchfab画面内の移動方法:Shiftキー+右クリックで移動(Shiftキーを先に押す)

アノテーション1~20は移動高速化の用に設置しました。「k」でアノテーション進む、「J」でアノテーション戻る。

3 感想

・60器の個別3Dモデルは、すべてショーケースに展示されている土器をガラス面越しに撮影して作成したものです。従って正面部分のみ3Dモデルになっていて背面などは欠落しています。

・専門家が整った撮影環境で360度撮影して作成する3Dモデルとくらべれば、この60器のモデルの質は格段に低いものです。「作品」と呼べるようなものではないので、「観察記録3Dモデル」と呼称しています。しかし、それでも土器学習用資料としての意義は大きなものがあると考えます。

・ショーケース展示では土器表面の半分くらいしか観察できませんが、60器の3Dモデルはそれと同程度の範囲が3Dモデルになっているので、観察できる表面積という意味では現物展示と3Dモデルではほぼ同程度の意義を有しています。

・一度3Dモデルにすればいつでもどこでも土器現物観察の疑似体験が可能になります。写真では得られない立体感や質感を体感できますから、観察には有利です。

・一度3Dモデルを作成すれば、そのデータは蓄積しますから、現物展示開催の1回性とは後に残る影響は根本的に異なります。

・ガラス面越しに撮った写真からでもそれなりに3Dモデルが作れるので、そしてそれを並べれば「なんちゃって3D博物館」ができるので楽しくて、趣味としては止められません。

4 技術的感想

3DF Zephyr Liteで作成する動画は背景がきれいで、手軽に作成できます。時間もほとんどかかりません。ところがBlenderアニメーション機能による動画はそのレンダリングに時間がかかります。Blenderの方が画面制御がしやすいのですが、長時間のレンダリングが難点です。しかし、Blenderでないとオブジェクトを動かせないので、結局3Dモデル動画作成ではBlenderの操作特性に自分を合わせるしかないようです。