第2部 花見川河川争奪に遡る その14
花見川河川争奪地形面モデルVer.2と今ある現実地形との対応を説明します。
1 ゾーン区分と断面線の設定
説明をしやすくするために地形面モデルを次の3つのゾーンに分けました。
花見川河川争奪に関するゾーン区分
ゾーン1は争奪河川(東京湾水系)が到達していない場所で、被奪河川(印旛沼水系)が空川となっている区域です。
ゾーン2は河道逆行争奪の最前線といえるところで、争奪河川(東京湾水系)と被奪河川(印旛沼水系)の地形面が混在している区域です。
ゾーン3は被奪河川の千葉第1段丘、千葉第2段丘がもともと発達していなかったところで、下総上位面を除くと、争奪河川(東京湾水系)の千葉第2段丘と沖積面がみられる区域です。
このゾーン区分毎に次のように断面図位置を設定しました。
ゾーン区分と断面図位置
2 ゾーン1の地形断面
ゾーン1は台地面が下総下位面の領域にほぼ対応しています。
(注 河道逆行争奪の最前線…風隙…の位置が、台地面の下総上位面と下位面の境付近にあります。この位置の一致に意味があるのか、偶然なのか判らないので、今後検討する予定です。)
断面図1、断面図2ともに千葉第1段丘を確認できます。ただし、段丘面の上に印旛沼堀割普請捨土土手を乗せています。露頭観察できる場所があり、東京軽石層の観察ができます。
印旛沼堀割普請のために消失していますが、千葉第2段丘が存在していたと考えます。印旛沼堀割普請では千葉第2段丘(存在していた時の形状の基本は段丘面ではなく谷底面)を掘り下げて工事をすすめたために、この付近では完全に消失したものと考えます。
断面図は地図との対比が直感的にできるようにするために、左が西、右が東としました。
3 ゾーン2の地形断面
ゾーン2は台地面が下総上位面の領域に対応します。
印旛沼水系成分は次のものがあります。
下総下位面(下総上位面を刻む浅い谷形状の段丘):断面4
千葉第1段丘:断面図3、5、6、8で確認できます。断面1、2の上流部にあたるものです。
千葉第2段丘:断面5、6、7で確認できます。
一方東京湾水系成分は次のものがあります。
千葉第2段丘:断面6、7で確認できます。これらの断面では印旛沼水系成分の千葉第2段丘も同時に観察できます。
沖積面:図に記述することは省略しました。(印旛沼堀割普請、戦後印旛沼開発でゾーン2、3では、沖積面が大きく改変されています。)
千葉第2段丘についてみると、東京湾水系成分は貧弱な分布であり、印旛沼水系成分のほうが広く分布しています。
しかし、水系としては確かに東京湾水系が争奪しています。
このことから、柏井付近における河川争奪の完全なる決着は千葉第2段丘の時代の後の最終氷期侵蝕面の時代に行われたのかもしれません。
断面図5の広い千葉第2段丘(柏井の集落の乗る段丘)が印旛沼水系成分であることは高度だけでなく、その特異な平面分布形状からも証拠だてることができます。
詳しい検討説明は別途行いたいと思いますが、この段丘面の形状はレーキ地形(平行水系に直行するたてずれ断層で幾つかの谷津が集まり、1箇所で断層を乗越える水系パターン)特有の狭窄部手前のロート状形状で、近隣では四街道市の和良比レーキでも観察できます。
4 ゾーン3の地形断面
ゾーン3も台地面は下総上位面の領域に対応します。
印旛沼水系成分として千葉第2段丘を断面図9、10、11で確認できます。
東京湾水系成分としての千葉第1段丘、千葉第2段丘はもともとこの付近には存在していなかったと考えます。従って観察できません。
下総上位面には印旛沼水系としての原始谷津が存在します。(ここで示す断面図では表現できませんので、別途検討したいと思います。)
河道逆行争奪という世にも稀な地学事象の絡まった糸玉を、かなりほぐすことが出来てきたと思います。
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