2020年12月24日木曜日

有吉北貝塚 早期の土器

 縄文社会消長分析学習 62

1 有吉北貝塚の早期土器


有吉北貝塚 早期 炉穴 陥穴 土器分布(3D Qgis2threejs画面)

有吉北貝塚の早期土器は総破片数543点出土し、いずれも胎土に繊維を含み、器面調整に条痕を多用するなど早期後半期に属する特徴をゆうしています。分布は調査区北半に集中し、斜面部の出土が多く、特に南斜面貝層部上半に最も集中し、その出土状況は表土・撹乱層からの出土が多く、台地上からの流れ込みを示すと考えられます。(発掘調査報告書による)


有吉北貝塚出土早期土器の例 1
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


有吉北貝塚出土早期土器の例 2
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

土器形式からみると茅山下層式期に遺跡が形成され始め、炉穴の形成が確認され、茅山下層式に続き、茅山上層式以後早期末葉期初頭まで遺跡として利用されたようです。(発掘調査報告書による)

2 参考 茅山上層式土器の観察記録3Dモデル例

早期土器は破片だけで土器の形状をイメージできる資料がないので、以前市立市川考古博物館に展示された雷下遺跡出土茅山上層式土器の観察記録3Dモデルを観察しなおしました。

茅山上層式土器 市川市雷下遺跡(5)地点 観察記録3Dモデル

撮影場所:市立市川考古博物館

撮影月日:2019.05.24

強反射ガラス面越し撮影

参考 左側土器は形式不明条痕文土器、右側土器は上ノ山式併行の土器


展示の様子

胎土に繊維が入っているため焼成すると黒ずみ、表面付近繊維が燃えて出来た空洞のためガサガサした感じになります。

3 参考 茅山下層式土器と茅山上層式土器の出土遺跡分布(千葉県)


茅山下層式土器出土遺跡分布


茅山下層式土器出土遺跡分布 ヒートマップ


茅山上層式土器出土遺跡分布


茅山上層式土器出土遺跡分布 ヒートマップ

茅山下層式土器も茅山上層式土器もその分布重心が有吉北貝塚が存在する千葉市東部域にあるように観察できます。有吉北貝塚に茅山式期頃の土器が出土する空間的必然性がもともとあるように感じられます。


千葉県縄文土器形式等別出土遺跡数(仮集計)

時間軸でみると、千葉県における早期の遺跡数ピークは茅山式期です。

4 感想

有吉北貝塚の早期遺構・遺物は中期のそれと較べて圧倒的に少ないです。しかし、早期遺構・遺物は縄文時代早期のピーク(人口急増期)を指標していて、その意義は大きなものがあります。たまたま早期後半の遺構・遺物も出土したという程度の話で、学習上、お茶を濁すことはできないと考えました。


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