2020年12月21日月曜日

参考 大膳野南貝塚の炉穴と陥穴

 縄文社会消長分析学習 59

2020.12.20記事「有吉北貝塚の早期遺構」で早期の炉穴と陥穴の分布を観察しました。この記事で炉穴の分布要因として飲料水の確保が効いていることを述べました。記事を書いた跡、炉穴の場所と陥穴の場所が大局的に関連していることに気が付きましたので、過去検討を引用しながらメモします。

1 参考 大膳野南貝塚の炉穴と陥穴の分布と考察

以下の地図は2018.07.10記事「狩猟方法イメージ」、2017.02.28記事「大膳野南貝塚 炉穴」から引用。


大膳野南貝塚陥穴分布


大膳野南貝塚早期後半炉穴分布


炉穴と陥穴の地形との対応


炉穴と狩との関係イメージ

2017年、2018年の大膳野南貝塚検討を踏まえると、早期後半の狩猟方法の一つが(おそらくメインの方法が)陥穴方式であると想像します。人々は動物行動の変化(例えば季節ごとの変化)に対応して狩猟場所を変えて広域を移動し、ある季節には大膳野南貝塚の場所にキャンプを置き、そこに炉穴を残したのだとおもいます。大膳野南貝塚に炉穴を作った時に狩猟場所(陥穴を設置した場所)がどこだったのかということが問題になります。ここで重要なことはキャンプを置いた場所は陥穴猟の邪魔にならない場所であることは確実であるということです。人々は必ず動物行動に遠慮して「片隅に」キャンプを置いたということです。

そのような視点から「炉穴と狩との関係イメージ」図を見ると、9号・5号炉穴の位置は尾根状台地の中央部に位置していますから、この尾根状台地部に動物が入ってくることを前提にしていません。つまり9号・5号炉穴にキャンプを置いた人々の狩猟場所は大膳野南貝塚付近ではなく、別の場所であったと癒えます。

一方、1号・4号・8号・6号炉穴は台地縁辺部の地形的に影になった場所であり、ここにキャンプを置いた人々の狩猟場に大膳野南貝塚付近が含まれていた可能性が浮かび上がります。

1号・4号・8号・6号炉穴の人々の狩猟場がどこであったのか、その答えをより蓋然性をもって検討することは将来可能であると考えます。

2 炉穴位置(キャンプ地)選定の絶対条件は自分の狩の邪魔をしないこと

大膳野南貝塚1号・4号・8号・6号炉穴の人々の狩猟場がどこであったのかその答えはさておき、この思考から縄文早期後半の人々が炉穴位置(キャンプ地)選定に際して、絶対的に優先する条件は自分の狩りの邪魔をしない場所を選ぶということです。動物の季節的移動特性の邪魔する場所にキャンプを置かないことは確実です。空間利用という点では人ファーストではなく、動物ファーストです。

狩りの邪魔をしない場所にキャンプを置く、その際飲料水の確保場所を優先するということになります。飲料水が確保できる場所では、動物解体に必要となる水も得られます。

3 有吉北貝塚炉穴を作った人々の狩猟場


有吉北貝塚 早期炉穴と早~前期陥穴状土坑の分布(3D)

有吉北貝塚炉穴を作った人々の狩猟場がどこであったのか、答えを絞るだけの情報はありませんが、少なくても炉穴周辺で見つかる陥穴を使っていなかったことは確実です。おそらく有吉北貝塚が立地する半島状台地だけでなく、かなり広域のエリアに陥穴を多数設置して移動する動物を捕えていたと想像します。


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