2020年12月25日金曜日

有吉北貝塚 前期の遺構

縄文社会消長分析学習 63

1 有吉北貝塚の前期遺構

前期遺構として土坑1基、土器埋設遺構1基が出土しています。


有吉北貝塚 前期 土器埋設遺構 土坑 土器分布(2D QGIS画面)


有吉北貝塚 前期 土器埋設遺構 土坑 土器分布(3D Qgis2threejs画面)

2 土器埋設遺構の様子


土器埋設遺構実測図

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


土器埋設遺構写真画像

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

土器は長軸90㎝、短軸48㎝の楕円形の堀込みの中に横にした状態で埋設されていました。土器の器高44.0㎝、口径27.5㎝で前期後半に属します。別に波状貝殻文を施文する前期後半浮島式土器片が出土しています。(発掘調査報告書による)

3 土坑の様子


土坑実測図

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


土坑画像

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

平面形はゆがんだ楕円形を呈し、長軸約1.6m、短軸約1.2mを測る。南側に火床部があり前期後半に属する土器1個体分検出、外面下半部が赤化し、内面表面の荒れが激しく、煤の付着も見られます。(発掘調査報告書による)

4 土器片出土の様子

早期土器片出土総数は543点であったのに対し、前期土器片出土総数は7601点で14倍に増加しています。その分布は早期と同様に調査区域北半に集中しています。

5 メモ

・土器の出土量に比して遺構出土状況が貧弱であり、発掘調査報告書では「中期以後の遺跡形成で消滅した遺構が多数あったと考えられる。」と記述しています。住居を含むであろう前期遺構のほとんどが中期遺構によって上書きされ、消滅したと理解します。

・前期土器を残した人々が調査区域北半で生活することを好んだ理由を想像してみました。

ア 谷津に降りてそのまま海に出られる。(有吉北貝塚前期に貝層が形成されたかどうか発掘調査報告書には明確な記述はないようです。近隣遺跡(例 大膳野南貝塚)の例から、前期には漁労が行われ、貝層が形成されていたと想像します。そのほとんどが中期遺跡で上書きされ消滅したと想像します。)

イ 台地面を伝わって近隣集落や狩猟場に直行できる地の利。(前期の狩猟場は人の定住地増大に従って早期の狩猟場より縮小し、特定域に絞られたにちがいないと空想します。)

ウ 遺跡立地台地周辺の台地と谷津斜面に分布する豊富な植物資源を利用できる。

エ 飲料水を台地斜面下部の湧水で得られる。

オ 南向き斜面を利用できる快適環境。(日照良好、眺望良好) 

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