2019年3月24日日曜日

器台内側に残る櫛歯状工具の跡

縄文土器学習 73 器台の検討 4

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(2018.10.20~2019.03.03)に展示されていた2点の加曽利E式器台を主な対象として、器台にまつわる学習を行っています。
この記事では千葉市広ヶ作遺跡出土加曽利EⅣ式器台の倒立3Dモデルを作成し、器台を観察しました。

千葉市広ヶ作遺跡出土加曽利EⅣ式器台 倒立3Dモデル
千葉市立加曽利貝塚博物館の撮影・公開許可による。
 3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.351 processing 37 images

この器台内側に櫛歯状工具の顕著な跡が残されていて着目します。

櫛歯状工具の跡
この櫛歯状工具の跡は発掘調査報告書にも記載されています。

発掘調査報告書の挿図
「広ヶ作遺跡調査報告」(1984、千葉市遺跡調査会)から引用

この櫛歯状工具の跡の周辺及び内面全体を3Dモデルを使ってよく観察すると、各所に櫛歯状工具跡の直線状微細溝が残っていて、櫛歯状工具で整形してから指でなぞって平滑にした様子がうかがえます。つまり櫛歯状工具の跡はその部分を指でなぞって平滑にする作業を省略した場所であることがうかがえます。
次の発掘調査報告書記述は、このような作業省略を念頭にしていることが理解できました。
「土器の内面の調整は粗雑で、この土器は内面を問題にしていなかったことがわかる。」

更に観察を外面(器台表面)に移すと、そこにも各所に櫛歯状工具の跡とみられる直線状微細溝が多数存在していることが判ります。つまりこの器台をつくるにあたって全体の整形を櫛歯状工具でおこない、その跡を指で平滑にした作業があったことがわかりました。
この観察から、自分があるかもしれないと着目した(期待した?)器台内部文様は2点ともにないことが判明しました。

縄文土器作成にあたって、櫛歯状工具をこのように土器内外両面整形に使い、かつ両面ともにそれを指で消すという作業が加曽利EⅣ式期の千葉地域で一般的であったかどうかの知識はありませんから、今後専門家の方にその状況をたずねたいと思います。
また残された櫛歯状工具の跡が「雑な作業の結果」であるのではなく、「意図的に残された模様」である可能性が万一あるのかどうか、残る疑問を頭の片隅に置いておきます。

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