2019年3月26日火曜日

器台「大麻炙り台」仮説

縄文土器学習 75 器台の検討 5

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(2018.10.20~2019.03.03)に展示されていた2点の加曽利E式器台を主な対象として、器台にまつわる学習を行っています。
この記事では器台の用途について予備的な考察をします。

1 器台の用途に関する諸説
器台の用途について手持ち資料やWEB検索で調べてみました。器台(台形土器)の写真はちらほら見つかりますが、その用途に関する検討資料は下記小田原市「曽我谷津岩本遺跡第Ⅱ地点」関連資料以外はほとんどみつかりませんでした。

雑駁な情報収集ですが、私が得た器台用途説をまとめると次のようになります。
1 お供え物をした台(専門家から受けた説明)
2 土器の製作台(小田原市「曽我谷津岩本遺跡第Ⅱ地点」関連資料)
3 大麻の炙り台(荒木ブログの仮説)

2 「お供え物をした台」説検討
この説を詳しく検討した資料は見つかりませんでした。この説の説明を専門家から受けましたが、そのような説があるという話であり、自信をもった説明ではありませんでした。
何を乗せて、どのような状況でお供え物をしたのか、器台形状・模様・出土状況等の情報からイメージすることができません。この説の適否を判断できる材料がありません。

3 「土器の製作台」説検討
3-1 曽我谷津岩本遺跡第Ⅱ地点における「土器の製作台」説 
曽我谷津岩本遺跡第Ⅱ地点では台形土器が12点出土していて、同時に焼成粘土塊、ミニチュア土器、文様が雑な土器が出土していることから土器づくりのムラであったことを想定し、台形土器を土器製作台として有力視しています。台形土器の上で土器づくりをするイメージ写真なども作られています。

参考 曽我谷津岩本遺跡第Ⅱ地点出土台形土器
「曽我遺跡群―大磯丘陵に営まれた縄文集落と曽我氏の遺跡―」(小田原市教育委員会)から引用

参考 曽我谷津岩本遺跡第Ⅱ地点出土台形土器
「曽我遺跡群―大磯丘陵に営まれた縄文集落と曽我氏の遺跡―」(小田原市教育委員会)から引用

3-2 曽我谷津岩本遺跡第Ⅱ地点関する検討
・土器づくりのムラという発想がそもそも間違っているような気がします。どこのムラでも土器づくりが行われていて、特定のムラが土器づくりを専門的(専業的)に行っていたことはないと考えます。
・焼成粘土塊と台形土器を結びつけるなら、その場所で台形土器が沢山つくられたと考えることもできます。
・ミニチュア土器と台形土器を結びつけるなら、その場所が祭祀的な空間であったと考えることもできます。
・台形土器の多くは上面が窪んでいます(上記写真8、9など)。この窪みは土器製作に適しません。もしこの窪みのある台形土器の上で土器を製作したら、出来上がった土器底面が湾曲します。そのような底面湾曲土器は使い勝手がとても悪くなるはずです。底面湾曲土器が多数存在し、その湾曲の程度が台形土器の窪みと一致するなら台形土器が土器製作台であることが証明されます。
・器台(台形土器)のほとんどに透かし穴が開いています。台形土器を土器製作台と考えると透かし穴の存在(機能)を直接説明することはできません。

上記の検討、特に上面湾曲が土器製作の邪魔になることから「土器の製作台」説には疑問を持ちます。

3 「大麻の炙り台」説検討

広ヶ作遺跡出土加曽利EⅣ式器台
千葉市立加曽利貝塚博物館の撮影・公開許可による。

中野僧御堂遺跡出土加曽利EⅡ式器台
千葉県立房総の村の撮影・掲載許可及び千葉市立加曽利貝塚博物館の撮影協力による。

・広ヶ作遺跡出土加曽利EⅣ式器台(以下H器台と略称)の上面窪み中央部に蒸発痕を想起させるような喫水線様模様が存在しています。また中野僧御堂遺跡出土加曽利EⅡ式器台(以下N器台と略称)はわざわざ上面を削って窪みを深めています。これらの情報から器台上面窪みは微量の液体を受ける機能を持っていると考えます。
・H器台は全体が被熱しているように観察できます。N器台は内面上部にススと思われる付着があるように見えます。また双方とも壁面に窓があります。これらの情報から器台は熾火のある炉の上に置かれ、上面に置いたモノを熱する装置であったと考えます。
・上面に置いたモノは熱せられることによって少量の液体が出るものであったと考えます。
・上面上に置いたモノが大麻の葉・花穂(生体あるいは乾燥)であったと考えると、器台を祭祀に使う覚醒作用期待香炉として捉えることができます。香炉といっても大麻を燃やすのではなく、大麻成分を蒸発気化させる装置です。
・大麻(縄文の縄に使う麻)は縄文時代に栽培されていたと言われ、たとえ栽培されていなくても極普通に存在した実用植物です。

現代社会にあっては大麻吸引は害毒ですが、縄文時代にあっては大麻蒸気吸引は祭祀執行や痛み・苦痛の緩和に重要な役割を果たしていたと空想します。
空想に空想を重ねれば、大麻蒸気吸引により作用する幻覚症状で死んだ人との会話が可能となったり、出産における苦痛緩和に使われたと考えます。

4 感想
・器台用途の検討は小田原市曽我谷津岩本遺跡第Ⅱ地点におけるもの以外に触れることができませんでした。
・今後さらに情報収集して器台用途について専門家がどのように考えているのか知り、それらを踏まえて思考を深めたたいと考えます。
・「大麻の炙り台」説は素人空想の所産ですが、器台用途検討に意義がある仮説になるものと期待します。
・実用植物としての大麻(縄に使う麻)についても学習を深めることにします。
れきはくデータベース「日本の遺跡出土大型植物遺体データベース」で「アサ、縄文時代」で検索すると25件ヒットします。(記述のあるものは全て種子・果実)

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