2019年3月24日日曜日

顔面付釣手形土器と吉田敦彦「縄文の神話」

縄文土器学習 74 顔面付釣手形土器 5

1 吉田敦彦著「縄文の神話」と顔面付釣手形土器
なかば朦朧としながらWEB世界をさまよっていると、顔面付釣手形土器の記述に突き当たりました。それを手繰っていくと、吉田敦彦著「縄文の神話」にたどりつきました。
早速古書店から吉田敦彦著「縄文の神話」を取り寄せました。

吉田敦彦著「縄文の神話」
青土社 1987

長野県伊那市御殿場遺跡出土の顔面付釣手形土器に投影して著者の「縄文の神話」論主要部分が開陳されています。

顔面付釣手形土器に投影して著者「縄文の神話」論主部が記述されているページ

著者の論を超要約すると次のようになります。
・この土器は腹が大きく膨れた女体であり、女神像であるように見える。
・胎内に子の燃える火神を宿し、その火に身体を焼かれる母神と想像する。
・日本の神話イザナミは火の神カグツチを生み出し、その火によって陰部を焼かれ致命傷を負った。イザナミはその前後に国土の島と金属・粘土・水・穀物などの神を生んだ。
・イザナミと似た女神神話はメラネシアやポリネシアから南アメリカにかけて分布している。
・日本の神話はアメリカ大陸原住民の神話と著しい類似が見られ、このタイプの神話が日本に流入した時期がきわめて古いことを示唆する。
・身体から火や食物を出すために犠牲となる女神信仰が、わが国では5500年くらい前に始まる縄文中期まで遡ると想定できる。
・当時の人々は土偶・顔面把手付土器・釣手土器によってこの母神を表し、それを使った儀礼により女神の恩恵と犠牲をさまざまな形で表現していたと想像できる。

顔面付釣手形土器の存在を主要な根拠の一つとして、かつグローバルな神話分布にもとづき、イザナミ神話が縄文中期にさかのぼることを述べています。
まことに雄大で魅力的な大仮説です。

2 感想
・「縄文の神話」著者は考古学者ではなく神話学者ですが、顔面付釣手形土器を出産や女陰と関連付けてみていることは自分の観察と通じますので、自分にとっては心強く感じます。
・自分の観察では顔面付釣手形土器には妊婦の具体的出産ノウハウ(紐にぶら下がって出産する方法や介助の様子など)が描かれていると考えられ、妻の安産祈願が主目的の造形物であると考えました。
・顔面付釣手形土器による安産祈願とイザナミ神話(の祖形)が通底していて、出産(安産)祈願と母神信仰が一体であったと考えることも可能であると考えます。そのように考えるとこの土器の意義は誠に大きなものになります。
・吉田敦彦著「縄文の神話」を知ったことにより自分の考古歴史趣味活動の視野奥行が深くなるに違いないと感じます。

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