2019年3月29日金曜日

隆起線文土器と共伴出土石器の観察

縄文土器学習 78

一鍬田甚兵衛山南遺跡出土隆起線文土器と共伴出土石器を閲覧しました。

1 閲覧した隆起線文土器と石器

閲覧した隆起線文土器と石器
隆起線文土器と石器は千葉県教育委員会所蔵
これらの土器及び石器はD1-26グリッド(5m×5m)付近から集中出土した遺物です。
隆起線文土器と有舌尖頭器が共伴して出土しています。
隆起線文土器と共伴石器の出土状況は2019.01.27記事「一鍬田甚兵衛山南遺跡遺物出土状況」で既に説明しました。

2 隆起線文土器の観察

隆起線文土器 1
隆起線文土器は千葉県教育委員会所蔵

隆起線文土器1挿図
「成田国際空港埋蔵文化財調査報告書21 -多古町一鍬田甚兵衛山南遺跡(空港№12遺跡)-」(平成17年3月、成田国際空港株式会社・財団法人千葉県文化財センター)(以下発掘調査報告書と略称します。)から引用

隆起線文土器 1
隆起線文土器は千葉県教育委員会所蔵

隆起線文土器1は口縁部を有する2つの破片からなり、口縁部に平行に4条の波型隆起線が平行しています。土器の厚さは6~8mmで比較的明るい褐色で、黒あるいは白く光る鉱物多数を含んでいます。土器片の質感は硬く締まった様相を呈していて、ボロボロ崩れるような質感とは正反対の様相です。長年月の風化に耐えてきたという質感とは異なります。

隆起線文土器 2
隆起線文土器は千葉県教育委員会所蔵

隆起線文土器2挿図
発掘調査報告書から引用

隆起線文土器2は波型隆起線の下にハの字状の爪形文を付加するものです。

この遺跡から隆起線文土器は約100点出土し、口縁部の破片から、最低でも11個体以上あったと推定されています。

3 有舌尖頭器の観察

有舌尖頭器 94-1
有舌尖頭器は千葉県教育委員会所蔵

有舌尖頭器94-1挿図
発掘調査報告書から引用

有舌尖頭器 96-2
有舌尖頭器は千葉県教育委員会所蔵

有舌尖頭器96-2挿図
発掘調査報告書から引用
有舌尖頭器はこの遺跡から44点出土していて、その数は全国屈指のものです。

4 感想
・隆起線文土器片を実際にまじかで観察することによって、その質感(材質感)がその後の縄文前期~晩期の土器と全く異なり、固く締まっていて、色も明るいことを知ることができました。また薄手です。さらに微細な鉱物が沢山入っており、所々で光っています。このような印象は書物で何回もみた写真からでは決してわからないことです。
・隆起線文土器が簡単には風化しないようなつくりであることから、それが実用品であるにも関わらず素材入手や焼き方の工夫に惜しみの無い時間をかけたことがしのばれます。隆起線文土器は生活における特別な高級品であり、丁寧に扱われたことが感得できます。粗雑な作り方、粗雑な扱い方とは正反対の作り方、扱われ方がされたモノであると推察します。

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