縄文土器学習 353
加曽利貝塚博物館開催企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」(2019.11.16~2020.03.01)の展示土器について学習を行っています。
これまで加曽利EⅠ式土器とEⅡ式土器の学習が済みましたので、いよいよEⅢ式土器の学習に入ります。
企画展における展示数はEⅢ式土器が最も多く、この企画展の最大の趣旨はEⅢ式土器の多様性を示すものであるといってもよいと思います。E式土器学習の最大の山場に入ってきたといっても過言ではありません。
そこで最初にEⅢ式土器学習のポイントを最初に整理してみました。
1 企画展展示EⅢ式土器
昨年企画展展示EⅢ式土器
今年度企画展前半展示EⅢ式土器
今年度企画展後半新規展示EⅢ式土器
2 学習対象土器
加曽利EⅢ式土器が次の3つの種類に区分されることを前提に学習することにします。
加曽利EⅢ式土器の3つの種類
ア キャリパー形土器
イ 意匠充填系土器
ウ 横位連携弧線文土器
3 キャリパー形土器の例と特徴
加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市内田端山越遺跡)企2 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」
撮影月日:2019.11.19
整理番号:企2
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 59 images
加曽利EⅢ式土器としてのキャリパー形土器の特徴は加曽利EⅡ式土器と対照して、次のように整理されています。
1 口縁部文様帯と胴部文様帯を区別する明瞭なヨコ一次区画効果(稲田1972) の減少
2 口縁部主文様(渦巻文)と副文様(区画文)の一体化
3 胴部懸垂文と口縁部文様の癒着
4 胴部の縣垂文効果を有する無文部が拡大し、本来‘‘地”の部分であった縄文部に懸垂文効
果が移行
5 懸垂文を描出する沈線が縄文部の上端で連結し、懸垂文効果が完全に縄文部によって描出される。
(加納実(1995):下総台地における加曽利EⅢ式期の諸問題-集落の成立に関する予察を中心に-、千葉県文化財センター研究紀要16 から引用)
キャリパー形土器の変化
4 意匠充填系土器の例と特徴
加曽利EⅢ式深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企33 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」
撮影月日:2019.11.19
整理番号:企33
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 54 images
意匠充填系土器の特徴は次のように記述されています。
「意匠充填系土器とは、読んで字の如く、主として隆帯で、器面に個別の意匠(パネル状に縄文部をふちどる意匠・文様)を充填してゆく(はめ込んでゆく)もので、イメージとしては、巷のジグソーパズルの完成へ向けての工程を紡彿させる。」
(加納実(1994):加曽利EⅢ・Ⅳ式土器の系統分析-配列・編年の前提作業として-、貝塚博物館紀要第21号(千葉市立加曽利貝塚博物館) から引用)
意匠充填系土器の変化
5 横位連携弧線文土器の例と特徴
加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」後半展示
撮影月日:2020.01.21
整理番号:後5
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 79 images
横位連携弧線文土器は次のように記述されています。
「読んで字の如く、上半施文域に横位に連携した弧線文を有する土器群であり、下半施文域には縄文部に強い懸垂文効果を有し、沈線による意匠描出を原則とする。」
(加納実(1994):加曽利EⅢ・Ⅳ式土器の系統分析-配列・編年の前提作業として-、貝塚博物館紀要第21号(千葉市立加曽利貝塚博物館) から引用)
横位連携弧線文土器の変化
6 学習の進め方
昨年度及び今年度企画展展示EⅢ式土器を個別に観察し、キャリパー形土器、意匠充填系土器、横位連携弧線文土器に分類して、それぞれの特徴を観察することにします。
意匠充填系土器、横位連携弧線文土器については加納実先生の専門論文記述を参考にしながら観察することにします。
なお、今年度展示土器は全て観察記録3Dモデルを作成しましたので、このモデルからGigaMesh Software Frameworkにより展開写真を作成して文様を観察することにします。
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