縄文土器学習 360
現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展の展示土器について学習しています。この記事では紡錘状の円形意匠を有する意匠充填系土器として加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5土器を観察します。(後5はこのブログにおける整理番号です。)
1 加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5 観察記録3Dモデル
加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」後半展示
撮影月日:2020.01.21
整理番号:後5
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 79 images
展示の状況
2 3Dモデル展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから展開写真をつくりました。この土器は文様の分布が観察しにくいので調整の異なる4種の展開写真をつくり、比較しながら隆帯の正確な分布を把握しました。
加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5 展開写真 1
加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5 展開写真 2
加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5 展開写真 3
加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5 展開写真 4
3 文様の分布
文様(隆帯及び縄文)の分布は次の通りです。
加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5の文様(隆帯及び縄文)の分布
4 観察及び感想
・紡錘状の円形意匠を有する意匠充填系土器として加納実先生論文に紹介されている土器と文様構成が瓜二つです。
加納実先生論文掲載図(紡錘状の円形意匠を有する意匠充填系土器)
加納実(1994):加曽利EⅢ・Ⅳ式土器の系統分析-配列・編年の前提作業として-、貝塚博物館紀要第21号(千葉市立加曽利貝塚博物館) から引用
・紡錘状の円形意匠は渦巻文から変化したもので、この土器がEⅢ式新期のものであることを示しています。
・下段の文様からは渦巻の要素は消失して懸垂文だけになっています。
・この土器を真上からみると土器がいびつであることがわかります。展開写真に表現されている口唇部突起3つのうち右側のもの付近が立面で平状になっています。もしかしたら、この部分が土器「正面」かもしれません。
・文様はいびつな土器に合わせて歪んでいます。
加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5の「上から」3Dモデル写真(オルソグラフィック投影)
5 注
この土器(加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5)は加曽利貝塚博物館主催の縄文時代研究講座「県内他地域からみた加曽利貝塚の様相-印旛地域との比較-」(講師 学芸員米倉貴之先生)で横位連携弧線文土器として紹介された土器です。
2019.12.15記事「縄文時代研究講座 米倉貴之先生講演の聴講」
この土器(加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5)が横位連携弧線文土器として紹介されている様子
この情報に基づき、このブログでは次の記事でこの土器(加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5)を横位連携弧線文土器の代表例として紹介しました。
2020.02.23記事「加曽利EⅢ式土器学習のポイント」
しかし、この土器をよく観察すると、上記のように本質は意匠充填系土器であると言わざるを得ません。
縄文時代研究講座資料に土器写真の入れ間違い(錯誤)等があったものであると考えますので、米倉先生に確認をとったうえで2020.02.23記事を訂正する予定です。
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