縄文土器学習 357
加曽利貝塚博物館E式土器企画展の展示土器について学習しています。
この記事では意匠充填系土器として加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企25土器を観察します。(企25はこのブログの整理番号)
1 加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企25 観察記録3Dモデル
加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企25 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」
撮影月日:2019.11.19
整理番号:企25
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 39 images
展示の状況
次の理由からこの土器展示は企画展の中では最も劣悪な観覧環境(撮影環境)に置かれています。
・ショーケースの一番奥の角に置かれ、手前の土器に視線がさえぎられ撮影視野が狭い。つまり死角が多い。
・土器固定用透明アクリル環が照明遮断・反射・影などの効果を生み、土器中段の観察が希薄になる。
・土器固定用底面円形アクリル板が赤色反射光を土器下部に投射し、土器下部の観察が希薄になる。
・土器固定具の透明足が視界を遮る。
・ガラス面越しであり室内反射光の影響がある。
このような劣悪な環境の下でも多数写真を撮影すれば個人学習用とはいえ3Dモデルができることは素晴らしいことです。
2 3Dモデル展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから展開写真を作成しました。
加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企25 展開写真 1
加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企25 展開写真 2
隆帯連続性等をより正確に観察するために色合いは無視して、1と異なる調整により作成したものです。
3 観察と感想
・上段、下段ともに渦巻文が繋がって配置されています。
・渦巻文は1本の隆帯で描かれ、隆帯の両側には幅が狭いナゾリが観察できます。
上段渦巻文が繋がっている様子と、隆帯とその両側のナゾリ
・上段渦巻文は8、下段渦巻文は4配置されている様子です。上段2に対して下段1という渦巻文の位置関係配列がみられます。
・渦巻文とその間を埋める副文様を抽出するために隆帯をトレースしてみました。
隆帯のトレース
・上段は口唇部の隆帯によって渦巻が閉じていて、それによって充填され、副文様はありません。
・上段と下段の間には「地」(無紋)が広がり、隆帯はありません。
・下段は渦巻文と渦巻文の間が副文様(中央部が狭い長楕円文)で充填されています。
・意匠充填系土器という名称とその実態をこの企画展で初めて知りましたが、文様のあり様を観察すると興味が強く湧いてきます。
・展示されている土器は「露天」展示土器1点を除いて全てショーケースに入っていますから、表面積の半分ほどしか観察できません。すべての土器が模様や器形について対向対称とは限りませんから、残念です。ある特定の正面がある土器もあり得ます。
・この企画展はプロ、セミプロ向け企画展であり、スルメのようです。一般素人から見ると難解です。口に入れただけでは固いだけです。噛めば(意匠充填系土器の意味などを学習すれば)味がでます(興味が深まります)。
・この企画展は、一言でいえば意匠充填系土器とか横位連携弧線文土器などの展示会ですから、それらのわかりやすい説明がパネルであればよかったと思います。
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