2020年2月17日月曜日

称名寺式土器黒変部の観察と考察

縄文土器学習 348

作成した3DモデルからGigaMesh Software Frameworkにより外面・内面の展開写真ができるようになりました。これによりこの記事の黒変部観察考察が可能となりました。観察・分析用の道具(GigaMesh Software Framework)利用は自分にとって極めて大きな学習加速因子です。GigaMesh Software Frameworkの作者及び日本における紹介者に感謝、感謝です。

1 称名寺式土器の展開写真

称名寺式土器の外面
2段の模様付近に特段に黒い部分が存在しています。2段の模様より下の胴下部は比熱により赤化(白化)しています。

称名寺式土器の内面 (左右反転表示)
胴下部の深黒の部分は照明(天井蛍光灯)の影響です。
胴下部の青灰色部分はおこげであると観察しました。そのおこげが胴上部にも舌状に伸びている部分があります。

2 外面黒変部とおこげの対応状況
外面黒変部とおこげの対応状況を観察しました。

外面黒変部とおこげの対応
外面の特段に黒い部分をa、b、cとして抽出しました。aとcは黒光りしていますが、bは鈍い黒であり、aとcは同じ成因、bは別の成因のように感じました。
aは内面性青灰色fとhに対応するようです。
bは内面に対応するモノは無いようです。
cは内面に青灰色の上部出っ張りgに対応するようです。

以上の観察からaとcは内面のおこげに対応していて、土器の利用(被熱)により生じた黒変であると考えました。
なお、aは土器正面でありcはその対向位置にあることは着目すべき事柄です。
bは内面に対応するものがないので土器製作に際してできた黒変のようです。

3 考察
土器外面黒変と土器内面おこげの対応を次のように解釈しました。

土器外面黒変と土器内面おこげの対応考察
ア 土器正立による通常調理
土器を正立させた通常調理により外面胴部下部の赤化(白化)と内面におこげ付着が生まれると考えます。
イ 土器正面を下にした横置によるミニ調理
土器正面を手前(下)にして横置して土器上部を利用した熾火によるミニ調理(白湯、煎じ茶など)が行われたと推測します。
土器自体が熱くなっているとき、横置した土器内面に水を垂らせばお湯になり、煎じ茶をつくることも可能であったと考えます。熾火による食後のティータイムが考えられます。
内面ドーナッツ状黒変部はおこげというしっかりとした物的事象ではなく、茶渋のような事象であると考えます。

参考 土器内面の上部に広がるドーナッツ状黒変部 茶渋か?

ウ 土器正面を上にした横置による空焚き
縄文土器は調理後空焚きして有機物を炭化することによってカビ発生を防止していたと考えられます。その際土器正面を上にしたので、その対向位置付近内面におこげが土器上部まで広がったと考えます。

参考 土器内面上部に広がるおこげのような青灰~黒変部

この記事で特に参考とした図書
小林正史(2017):モノと技術の古代史 陶芸編(吉川弘文館) 

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