2020年6月28日日曜日

国宝土偶「縄文のビーナス」の下腹部陰刻

縄文土器学習 415

国宝土偶「縄文のビーナス」が「子どもへの投資」として理解できるとして、世襲的地位の継承が存在した可能性があり、縄文中期に社会的成層化が存在した可能性を無下には否定できないとする山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)の記述には大いに刺激を受けます。
ブログ「芋づる式読書のメモ」2020.06.27記事「中期の社会構造」参照
この強い知的刺激により「縄文のビーナス」について次のような疑問・興味が生まれましたので、順次検討することにします。
1 下腹部陰刻は何を表象するのか
2 女の一生を表現する意味は何か
3 土偶は副葬品か
4 土偶作成者、土偶所有者はだれか
5 国宝土偶「仮面の女神」との差異性と類似性

この記事では「縄文のビーナス」で今一つそれが表象するものの意味が判らなかった下腹部陰刻の意味について検討します。

1 「縄文のビーナス」下腹部陰刻

「縄文のビーナス」下腹部陰刻
3Dモデルから正面オルソ投影画像に下腹部陰刻を彩色し、3Dモデルで観察できる脚部付け根線を点線で示してあります。
この土偶では下腹部陰刻が脚部に及んでいることが特徴です。

2 下腹部陰刻と妊娠線との対応

下腹部陰刻と妊娠線との対応
下腹部陰刻の範囲と妊娠線の濃い部分が略一致します。妊娠9カ月、10カ月頃顕著になる妊娠線の様子とその中央付近に位置する陰部(陰毛)を合わせた形状が下腹部陰刻の形状であると考えます。この形状が現れると出産間近であるので、出産サインとして土偶に使われたと考えることができます。

3 女の一生

縄文のビーナスにみる女の一生
縄文のビーナスは女の一生を表現しているといわれていますが、下腹部陰刻が出産間近を暗示していることが妊娠線との対応で確かめることができました。
なぜ女の一生が表現されるのかは別に検討します。

4 対称弧刻文
対称弧刻文といわれる陰刻がありますが、これもへそ下付近の妊娠線を表現していると考えることが妥当です。

「子宝の女神ラヴィ」の対称弧刻文と逆三角形
「土偶展」長野県立歴史館から引用加筆
対称弧刻文は妊娠線発達により生まれた下腹の模様を、逆三角形は陰部を表現していると考えます。


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