2020年6月22日月曜日

もっこふんどし着装縄文後・晩期土偶

縄文土器学習 410

加曽利貝塚博物館企画展「特別史跡加曽利貝塚令和元年度発掘調査速報展」で展示されている黒色土から出土した縄文後・晩期土偶を観察記録3Dモデルをつくって子細に観察しました。

1 縄文後・晩期土偶(千葉市加曽利貝塚) 観察記録3Dモデル

縄文後・晩期土偶(千葉市加曽利貝塚) 観察記録3Dモデル
黒色土出土
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「特別史跡加曽利貝塚令和元年度発掘調査速報展」
撮影月日:2020.06.17
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 46 images
足-頂部6.3㎝、両手間4.3㎝(3Dモデルから計測)

展示の様子

説明パネル
企画展「特別史跡加曽利貝塚令和元年度発掘調査速報展」説明パネル引用

動画

2 観察と感想
ア 下半身縦線の既往学習事例
土偶の陰部付近縦線状表現が気になりました。
以前上黒岩岩陰遺跡の学習をしたとき、次の石偶について学習しました。
2020.04.23記事「産小屋としての上黒岩岩陰遺跡

上黒岩岩陰遺跡出土石偶の学習
国立歴史民俗博物館研究報告第154集(2009)から引用・メモ追記

石偶下半身縦線についてそれが腰ミノではなく陰毛であり、女性性(端的に言えば女性器)の象徴であることを旧石器時代最終期ユーラシア大陸全体のビーナス像比較検討で知りました。
縦線が陰毛であるかどうか、この土偶を一瞥して気になったのです。

イ 観察結果
縦線が体部前だけでなく体部後ろにもあることと縦線上部が横線で区切られ、その横線が腰に連続していることが観察できます。この観察から説明パネルにあるように、「パンツや腰ミノのようなものをはいている」と観察できました。
より具体的には1枚のヒモ付布状織物を股間に当てて、ヒモを腰に回して縛っているようです。
「もっこふんどし」あるいは「前垂れのない越中ふんどし」と同じような構造の衣類のようです。
縦線と見た線はよく見ると織物構成ヒモ成分を表現しているのではなく、布状織物がよれてできるシワを表現しているようです。
この土偶はもっこふんどし着装土偶と呼ぶことができます。

ウ もっこふんどし着装の意義
土偶は多用な女性祈願で使われた道具であると考えますが、原義が女性使命(妊娠・出産・育児)全うの祈願具であることは間違いないと考えます。従って妊娠に必要な交合器官であり、出産産道となる女性器表現、妊娠の進行と出産を暗示する膨らんだ腹、乳児が餓死しないで育つことができる母乳の源となる大きな乳房の表現が必須であると考えます。
しかし、縄文文化が発展し、衛生面等からの要請により陰部被覆布状織物の高性能製品が発明され、常時陰部を布状織物で覆う習慣が定着したのだと想像します。
その製品例がもっこふんどしであり、もっこふんどし(のような製品)普及により土偶から女性器表現が消えたのだと思います。

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土偶に対する興味から離れますが、女性がもっこふんどし等で陰部(生殖器)を常時覆う習慣が生まれると、男を含めて性意識が変化したと想像します。女性陰部(生殖器)の意味が変わったと想像します。女性陰部(生殖器)に対する隠し事的興味、タブーを伴う興味が生まれ、強化されたと空想します。

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