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2021年5月13日木曜日

有吉北貝塚の北斜面貝層から出土した加曽利EⅡ式土器(紙上観察) 3

  縄文土器学習 599

この記事では有吉北貝塚北斜面貝層出土加曽利EⅡ式土器のうち第10群に盛行し第11群まで継続した連弧文土器の紙上観察を行います。

1 連弧文土器の例


241


243

この連弧文土器は加曽利貝塚博物館の過去の企画展で展示されたことがあります。


H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編)で展示された243土器


245


251

2 連弧文土器に関する有吉北貝塚発掘調査報告書の記述

連弧文系土器(238~272)

第9群の時期に突如として出現して第10群期に盛行し、第II群段階にいたって漸減して加曽利EⅢ式期には全くみられなくなる、すなわち加曽利EⅡ式とほぼ運命を同じくする類型である。加曽利EⅢ式段階に出現する波状文土器や横位連携弧線文土器と呼ばれる類型に変化するという考えもあるが、確定的ではない。本類型の型式学的な変遷の特徴を概観すると、第9群段階では文様帯区分が明確で比較的整った連弧文が施され、第10群段階では文様構成がバラエティに富むようになるものの、連弧文が崩れる傾向にあり、第11群段階になると連弧文の粗雑化や変形がさらに進み、最終段階の様相を呈するとなる。第9群段階のものは既に示したが、第10群と第11群段階の資料を明確に分別し得なかったためここに1項を設けて提示することとする。基本的には段階を追つて図示するよう心掛けた。

3 実測図

発掘調査報告書実測図を段階を追って並べてみました。


有吉北貝塚 北斜面貝層 連弧文土器変遷

4 感想

次のような興味をおぼえました。今後の学習の中でこれらの興味を深めていくことにします。

ア 連弧文土器の割合把握

遺跡全体、北斜面貝層、竪穴住居、土坑別などで第9群~第11群期に連弧文土器の割合が全体に対して、あるいはキャリパー形土器にたいしてどの程度であったのか把握する。

イ 連弧文土器の利用特性

連弧文土器とキャリパー形土器やその他の土器(曽利式土器、折衷土器等)との間で器形・大きさや出土状況などから、利用仕方の差異が観察されるかどうか。連弧文土器とキャリパー形土器をどのように使い分けていたか?

ウ 連弧文土器文様の起源

連弧文土器文様の起源に関する学術研究論文を入手して学習することにします。

エ 連弧文土器文様に関する感想

連弧文土器文様意味にたいして、最低限の蓋然性を有する感想(想像)を持てるように意識を研ぎすまして、縄文土器学習を継続することにします。

オ 加曽利EⅢ式土器との関連

連弧文土器の意匠が加曽利EⅢ式土器に引き継がれたという説が専門家の間でどのように評価されているのか調べることにします。


2021年4月19日月曜日

加曽利EⅡ式深鉢(No.15)(市川市今島田貝塚) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 583

この記事では加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅡ式土器(No.15)を3Dモデルで観察します。この土器は連弧文土器といわれるものです。

1 加曽利EⅡ式深鉢(No.15)(市川市今島田貝塚) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(No.15)(市川市今島田貝塚) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.09

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 59 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ

・土器は2段に分かれ、上段に3本1組沈線による先の尖った波状連弧文が2つ、下段には上に先の丸い波状連弧文、下に先の尖った波状連弧文が描かれています。最下段の連弧文は土器使用による表面摩滅により消えかかっています。


土器の文様

・連弧文が比較的しっかりと描かれているので、連弧文土器衰退期よりも前の時期につくられたと想像します。

・土器の形状がズングリムックリしていて、加曽利EⅢ式土器意匠充填系土器に見られるものと似ています。

・最上部波状連弧文の波頭部一つ置きに、沈線による渦巻文が描かれています。


2020年3月22日日曜日

加曽利EⅢ式土器観察のふりかえり

縄文土器学習 382

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展(終了)の展示土器について学習しています。この記事では2020.02.03記事「加曽利EⅢ式土器学習のポイント」からはじめた加曽利EⅢ式土器観察学習をふりかえり、とりまとめます。

1 観察土器の種類
加曽利貝塚博物館開催企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」(2019.11.16~2020.03.01)展示土器のうち、すでに観察した注口土器を除くEⅢ式深鉢形土器24点について観察記録3Dモデルを作成し、またGigaMesh Software Frameworkによる文様浮彫展開写真を作成して観察しました。
観察土器の主な種類はキャリパー形土器、意匠充填系土器、横位連携弧線文土器です。

観察した加曽利EⅢ式深鉢の種類
なお、器形や模様という土器型式分類とは別に、同じ「深鉢」と呼ばれる土器でも口唇部が肥大化してラッパ形をしていて、片口が付いている土器もあり、用途に応じた分類考察も重要であることを感じました。

2 意匠充填系土器と横位連携弧線文土器の出自
論文「加納実(1994):加曽利EⅢ・Ⅳ式土器の系統分析-配列・編年の前提作業として-、貝塚博物館紀要第21号(千葉市立加曽利貝塚博物館)」では意匠充填系土器と横位連携弧線文土器のそれぞれの出自について、いずれも連弧文土器とキャリパー形土器との接触により成立したと考察しています。

意匠充填系土器と連弧文土器
加納実(1994):加曽利EⅢ・Ⅳ式土器の系統分析-配列・編年の前提作業として-、貝塚博物館紀要第21号(千葉市立加曽利貝塚博物館)から引用

横位連携弧線文土器と連弧文土器
加納実(1994):加曽利EⅢ・Ⅳ式土器の系統分析-配列・編年の前提作業として-、貝塚博物館紀要第21号(千葉市立加曽利貝塚博物館)から引用

連弧文土器は加曽利EⅡ式期に房総でも盛行した土器です。

参考 中期後葉の土器編年案と連弧文土器の位置づけ
小林達雄編「総覧縄文土器」から引用

また、小林達雄編「総覧縄文土器」では連弧文土器について、「おそらくは曽利式土器が関東地方に波及していく中で、加曽利E式と曽利式に由来する要素が転写、複合されて生成したものと考えられる。」と考察しています。

以上の加納実考察と小林達雄編「総覧縄文土器」考察から、次のような状況を想像します。
1 山梨県付近に中心をもつ曽利式土器が関東地方に影響を及ぼした。
2 そのプロセスの中で多摩地方などを中心に連弧文土器が生まれ、加曽利EⅡ式期に房総にも伝わった。
3 加曽利EⅢ式期にキャリパー形土器が連弧文土器の影響を受けて、意匠充填系土器や横位連携弧線文土器が生まれた。(逆に表現すると、房総に伝わった連弧文土器がキャリパー形土器に吸収され、その過程で意匠充填系土器や横位連携弧線文土器が生まれた。)

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器に関するパンプレットでEⅢ式期だけいわゆるキャリパー形ではない土器(下図で赤点で囲む)ができてきますが、この土器は横位連携弧線文土器ということになると思います。

加曽利E式土器パンフレットに出てくる横位連携弧線文土器(赤点だ囲む)
加曽利貝塚博物館パンフレットから引用加筆

3 感想
曽利式土器そのもの及び連弧文土器が房総の遺跡で満遍なく一定の割合でみられることから、房総の人々は曽利式土器や連弧文土器にも「幸福をあやかった」のだと思います。
「幸福をあやかる」本尊は加曽利E式土器ですが、キリスト教徒でもない現代日本人がクリスマスを愛するように、房総縄文人は曽利式土器や連弧文土器を時々愛用したのだと思います。

2020年2月10日月曜日

加曽利EⅡ式土器観察 企5 波状3段構成土器

縄文土器学習 343

この記事では加曽利博今年度企画展展示土器「加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5」について観察します。(注 「企5」はこのブログにおける整理番号です。)

31 R元年度加曽利E式企画展(印旛地域編) 加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5
31-1 展示状況写真

加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5

31-2 3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5 観察記録3Dモデル 
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」 
撮影月日:2019.11.19 
整理番号:企5 
ガラス面越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 69 images

31-3 展開写真

加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5 展開写真
3DモデルからGigaMesh Software Frameworkで作成

31-4 観察
器形観察
・キャリパー形をしています。
・4単位波状口縁となっています。
・口唇部は口縁部から独立しています。
・胴部ふくらみの存否は下部欠如のため確認できませんが、無いように感じられます。
段構成観察
・口縁部、頸部、胴部の3段構成のように観察できます。
文様観察
・4単位波状口縁の頂部に対応して口縁部に渦巻文が設置されています。
・口縁部は渦巻文、円文、楕円文の組み合わせで構成されています。
・頸部は2本沈線が波状に土器を周回します。
・頸部と胴部の間は3本の周回沈線で境されます。
・胴部は3本直線沈線垂下で(おそらく)4区画に区分され、それぞれに唐草模様風の文様が沈線で描かれています。観察できる3区画のうち2区画は同じ文様で1区画はすこし異なります。
・2本沈線の間に磨消が見られます。磨消が不十分なところも見られます。

文様の様子

31-5 感想
・「No.16 2段構成連弧文土器(荒屋敷貝塚)」(2020.01.29記事「加曽利EⅡ式土器の観察 その2」)の文様と頸部・胴部文様が似ています。この土器は連弧文土器の影響を強く受けているものと感じます。

参考 No.16 2段構成連弧文土器(荒屋敷貝塚)
・キャリパー形、口縁部の渦巻文及び連弧文土器の影響を色濃く受けていることなどから、この土器は加曽利EⅡ式土器に判別されていると考えます。

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参考 加曽利E式土器観察の視点

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準

加曽利E式土器の移り変わり

2020年1月31日金曜日

加曽利EⅡ式土器観察 企22 連弧文土器との折衷? 

縄文土器学習 330

●加曽利E式土器観察学習方法の微調整
記事の最後に書いたとおり、学習方法を微調整します。

この記事では今年度企画展展示土器「加曽利EⅡ式深鉢(四街道市中山遺跡)企22」について観察します。(注 「企22」はこのブログにおける整理番号です。)

23 R元年度加曽利E式企画展(印旛地域編) 加曽利EⅡ式深鉢(四街道市中山遺跡)企22
23-1 展示状況写真

加曽利EⅡ式深鉢(四街道市中山遺跡)企22

23-2 3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(四街道市中山遺跡)企22 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」
撮影月日:2020.01.07
整理番号:企22
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 51 images

23-3 展開写真

加曽利EⅡ式深鉢(四街道市中山遺跡)企22

23-4 観察
器形観察
・キャリパー形です。
・胴部くびれとその下のふくらみがわずかに観察できます。
・口唇部がかすかに波状になっていますが、それが意図したものかどうか判断できません。とりあえず平であると概括的に捉えておきます。
・口唇部と口縁部は連続し、口唇部の独立性はゼロです。
段構成観察
・口縁部、頸部、胴部の3段構成です。
・口縁部と頸部、頸部と胴部の区分はいずれも3本沈線・磨消帯の周回により行われています。
文様観察
・口縁部は上半分が無紋、下半分が2列の円形刺突文です。
・頸部は縄文を切って3本沈線が大きく波状を描いて周回します。確認できませんが波状は4単位のようです。
・胴部は3Dモデルにできた部分で、4本の懸垂磨消帯と1本のカーブして垂下する磨消帯が観察できます。カーブして垂下する磨消帯の意味づけを考え付きません。
感想
・口縁部の刺突文と頸部(胴部)の沈線波状文は連弧文土器の特徴です。一方懸垂磨消帯は加曽利EⅡ式土器の特徴です。したがってこの土器は連弧文土器と加曽利EⅡ式土器の折衷土器、ハーフであると素人考えします。
・この土器と同じ趣旨の文様構成土器を既に「17 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.15 2段構成連弧文土器(有吉北貝塚)」として観察しました。

No.15 2段構成連弧文土器(有吉北貝塚)

実測図
発掘調査報告書から引用
2020.01.29記事「加曽利EⅡ式土器の観察 その2

・連弧文土器と加曽利EⅡ式土器及びその折衷土器が存在することの意味を今後興味を持って学習することにします。
・2つの土器文化の潮流が同一人に影響を与えているということではなく、同一集落に連弧文系の外来系住民と加曽利EⅡ式系在来住民が共存していて、その関係が良好であった証左であると空想します。
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参考 加曽利E式土器観察の視点

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準

加曽利E式土器の移り変わり
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●加曽利E式土器観察学習方法の微調整
加曽利貝塚博物館のE式土器企画展(昨年度及び今年度)展示土器の学習をしています。主にEⅠ~EⅣという専門家が行った細分判定の根拠を自分なりに確認・追体験する作業を行っています。注口土器や器台を除いて全部で74器あり、それを1記事5土器程度のペースで学習してきました。
ところが清瀬市郷土博物館学芸員内田裕治先生から内田裕治式土器展開写真作成法を授かり、さらにGigaMeshによる超時短土器展開写真作成法を知り、状況が急変しました。
今年度企画展展示土器について土器展開写真作成に手間が全くかからなくなりました。
土器模様を3Dモデルで回して見ていただかなくとも、土器模様全部を平面写真で示すことができるようになりました。観察結果を言葉で説明するもどかしさが急減します。同時に土器模様に関する観察を深めることが可能となりました。
このような技術進歩により、土器1点1点の観察をより深めて行うことが可能となりました。
土器の細分判定を追体験するという目的は変わりませんが、学習方法を土器1点1点についてより深く、詳細に検討する方法に変更することにします。
具体的には1記事につき5土器程度を扱うというテンポを1記事につき1~2土器程度を扱うテンポに変更します。