2020年1月29日水曜日

加曽利EⅡ式土器の観察 その2

縄文土器学習 327

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(平成30年度)と「同(印旛地域編)」(令和元年度 開催中)の展示土器(深鉢等)74点を全部同じ視点で観察しています。
この記事は加曽利EⅡ式土器23点観察の2回目観察です。

14 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.11加曽利EⅡ式渦巻文付区画文土器(芳賀輪遺跡)

No.11加曽利EⅡ式渦巻文付区画文土器(芳賀輪遺跡)

器形観察
・キャリパー形をしています。
・胴部下部が欠落しているため、胴部中央部のふくらみの有無は確認できません。
・三角の突起が4組存在し、その位置に口縁部渦巻文が対応しています。
・三角の突起を取り除くと口唇部は平になります。
段構成観察
・口縁部で隆帯で区画文を形成して口縁部と胴部を2段階に分けています。
文様構成
・口縁部は渦巻文と区画文が隆帯でつくられています。
・口縁部縄文模様と胴部縄文模様は90度の角度をなし、口縁部模様が強調されています。
・胴部には懸垂磨消帯が配置されています。3本沈線が垂下し、両側2本の沈線の間が磨り消され、真ん中の沈線は磨消部に取り残されます。磨消が弱く元の縄文の跡がところどころ残っています。
感想
・キャリパー形であることと口縁部渦巻文および懸垂磨消帯の存在から加曽利EⅡ式土器として判別されているものと考えます。

15 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.13加曽利EⅡ式渦巻文楕円形区画文土器(荒屋敷貝塚)

No.13加曽利EⅡ式渦巻文楕円形区画文土器(荒屋敷貝塚)

器形観察
・口縁部の内湾度合いが弱く、キャリパー形としては少し虚弱です。
・胴部中央部が少し膨らみ、器形全体がくびれています。
・口縁部は平です。
・口縁部と口唇部の間に太い沈線が巡り、口唇部が独立しています。
段構成観察
・口縁部と胴部の2段構成です。
文様観察
・渦巻文と楕円区画文が交互に配置されているようです。
・胴部には2本沈線に囲まれた磨消部が多数垂下します。
・口縁部縄文と胴部縄文の方向が同じで、類例のなかでは少数派です。
感想
・キャリパー形であることと口縁部渦巻文および懸垂磨消帯の存在から加曽利EⅡ式土器として判別されているものと考えます。

16 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.14加曽利EⅡ式渦巻文楕円形区画文土器(有吉北貝塚)

No.14加曽利EⅡ式渦巻文楕円形区画文土器(有吉北貝塚)

実測図
発掘調査報告書から引用

器形観察
・キャリパー形です。
・胴部中央部膨らみが虚弱ですがみられ器形全体がわずかにくびれています。
・口縁部はすこし波打っていますが本来平につくろうとしたものであると推察します。
・口縁部と口唇部の間に太い沈線が巡り、口唇部が独立しています。
段構成観察
・口縁部と胴部の2段構成です。
文様観察
・渦巻文と楕円区画文が交互に配置されているようです。
・胴部には2本沈線に囲まれた磨消部が多数垂下します。
・口縁部縄文の方向が2種ありますから、口縁部模様のつけ方に意識が強かったことがうかがわれます。
感想
・キャリパー形であることと口縁部渦巻文および懸垂磨消帯の存在から加曽利EⅡ式土器として判別されているものと考えます。

17 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.15 2段構成連弧文土器(有吉北貝塚)

No.15 2段構成連弧文土器(有吉北貝塚)

実測図
発掘調査報告書から引用

器形観察
・キャリパー形です。
・胴部中央もわずかにふくらみ、くびれも虚弱ですが観察できます。
・口唇部は平です。
段構成観察
・同下部の2-3本沈線周回によって上下模様構成が区分される2段構成になっています。
文様観察
・口唇部には交互刺突文がめぐります。
・上段中央には沈線波形(連弧文)が描かれます。
・下段には逆U字状の沈線が描かれ、沈線と沈線の狭い部分は磨り消されています。(磨消が弱く元の縄文が少し残ります。)つまりこの土器は懸垂磨消帯を持っています。
感想
・懸垂磨消帯をもつことからこの土器は加曽利EⅡ式土器の影響を強く受けているといえる連弧文土器であると考えます。

18 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.16 2段構成連弧文土器(荒屋敷貝塚)

No.16 2段構成連弧文土器(荒屋敷貝塚)

器形観察
・キャリパー形です。
・胴部中央がふくらみくびれた形状になっています。
・口唇部は平のようです。
段構成観察
・胴部くびれ部に交互刺突文と沈線がめぐり上下を明瞭に区分している2段構成になっています。
文様観察
・口唇部には交互刺突文と沈線がめぐり、口唇部が独立しています。
・上段には連弧と垂下文が沈線と磨消部で描かれます。
・下段には唐草文風の渦巻や棘が沈線と磨消部で描かれています。
感想
・磨消という技法を使っているので、模様は異なりますが、加曽利EⅡ式土器との深い関係が暗示されます。

19 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.17加曽利EⅡ式台付土器(有吉北貝塚)

No.17加曽利EⅡ式台付土器(有吉北貝塚)

実測図
発掘調査報告書から引用

器形観察
・口縁部形状がラッパ形になっていて、キャリパー形ではありません。
・胴部中央がふくらみ器形全体にくびれが生まれています。
・底部に3つの出っ張りがあります。出っ張りはまるみを帯びています。
段構成観察
・胴部をめぐる沈線・隆帯が4筋ありますから、5段構成であると考えます。
文様観察
・口唇部とその下の縄文との間の処理があいまいで、口唇部のつくりが虚弱です。
・胴部をめぐる沈線・隆帯には刺突文が伴います。
・垂下する模様はありません。
・磨消はありません。
・区画文はありません。
・渦巻文はありません。
・土器の割れ目が口縁部ではほとんど鉛直方向で、他の土器とくらべて異様です。
感想
・加曽利EⅡ式土器の特徴を全く保持していない範疇外土器です。
・層位的に加曽利EⅡ式土器と一緒に出土した土器ですが、外部との交流の証拠として興味が深まります。
・昨年の検討ではこの土器は大陸竜山文化の三足土器の影響を受けたものではないかと思考しました。
2019.02.23記事「加曽利EⅡ式台付土器が三足土器であることの感想
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参考 加曽利E式土器観察の視点

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準

加曽利E式土器の移り変わり




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