2020年7月12日日曜日

三方湖花粉分析による7300年前から5100年前の気温変化

縄文社会消長分析学習 38

1 水月湖年縞による花粉分析について
2020.07.04記事「縄文社会消長と気候変化」で加曽利E式土器の暦年較正データから加曽利EⅠ式→EⅣ式社会消長データとグリーンランド氷床コア気温変化グラフの対応関係を確認しました。
同時に列島オリジナルの気温変化グラフが水月湖年縞等によりオーソライズされたものがあれば、それを使いたい旨次のようにメモしました。
「グリーンランド氷床コアから得られる気温変化データは汎世界的意味を持つと考えられますが、それがそのまま日本列島に正確に当てはまるとは限りません。水月湖年縞データなどから得られる日本列島オリジナルの気温変化データがあれば、それで検討すべきであることは論を待ちません。」

この記事を書いた時点で年縞博物館に水月湖年縞を利用した気温変化グラフがあるかどうか問い合わせしました。そしてその回答をいただくことができました。
福井県年縞博物館からの回答「過去4万年の洪水や地震の研究はある。花粉分析の結果は、現在、論文にまとめているということで発表されるのはまだ先になるようです。」
現状では水月湖年縞を利用した公表気温変化グラフは存在しないことがわかりました。
グリーンランド氷床コアの気温変化グラフ利用価値が現状では大きいということです。

2 三方湖花粉分析による7300年前から5100年前の気温変化
同時に年縞博物館から関連論文4編を提供していただきました。
その中に次の論文が含まれ、とても興味深いものです。

Kitagawa et al. (2018):Adaptations of the Early Jomon people in their settlement relocation to climate change around Lake Mikata, Central Japan、Archaeological Research in Asia16(2018)66-77

三方湖花粉分析による気温変化グラフがつくられ、考古事象の要因分析(5800年前温暖期(多雨期)の鳥浜貝塚埋没と人々の田井野貝塚への移動、その後の寒冷期の南斜面への移動)に利用されています。

この論文の気温変化グラフがどの程度グリーンランド氷床コア気温グラフと同期するのか、素人方法で確かめてみました。

グリーンランド氷床気温変化と三方湖花粉分析気温変化の対応検討
三方湖資料は反転・角度変更

三方湖花粉分析気温変化グラフの本図

論文掲載図面を「目検討」レベルで対応分析したことになりますが、思いのほかピタリと一致するので不思議な感覚に襲われます。「どこかで錯誤があるのではないか?」錯誤は無いようです。特に5800年前高温期ウおよびイ、アの対応は問題なく一致します。
エ、オについても対応するように観察することができます。
花粉分析による気温変化グラフの精度の高さと、グリーンランド氷床気温変化グラフの汎用性意義大なることの2つを確認することができました。

貴重な論文を提供していただいた年縞博物館に感謝申し上げます。

3 感想
水月湖年縞花粉分析による気温変化グラフが論文になり公表されれば、おそらく全体の概形はグリーンランド氷床気温変化グラフと同期すると予想されます。その時には「気温低下で後晩期縄文社会が衰滅した」という安易な思考は餓死すると思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿