2020.07.23記事「君津市三直貝塚出土の有孔円板形土製品」で加曽利貝塚博物館展示三直貝塚出土「土版」が漁網等を撚る吊り下げ型回転錘であることがわかりました。
この学習でつかった論文に有孔円板形土製品の出土分布図が掲載されていますので、それに関する感想等をメモします。
1 有孔円板形土製品出土分布図に関する感想
有孔円板形土製品出土遺跡
宮原俊一著「重たい紡錘車-縄文晩期の有孔円板形土製品について-」(「日々の考古学3」(東海大学文学部考古学研究室編)から引用
この地図には有孔円板形土製品出土遺跡と前浦式・安行c式・安行d式遺跡も同時に掲載されていて見づらいので、出土遺跡だけ分離してみました。
有孔円板形土製品出土遺跡だけ赤丸で分離
宮原俊一著「重たい紡錘車-縄文晩期の有孔円板形土製品について-」(「日々の考古学3」(東海大学文学部考古学研究室編)掲載図から作成
大きな赤丸(出土数20以上のようです)の分布は房総に限定されています。また漁業とは縁のない内陸部の遺跡(例 内野遺跡など)も含まれています。
全体の分布は縄文晩期海岸線を意識すると、ひいき目にみても海域漁業活動の活発さとは相関しません。
次に手持ち資料で千葉県域の前浦式土器、安行c式土器、安行d式土器出土遺跡分布図を並べてみました。
千葉県域の前浦式土器、安行c式土器、安行d式土器出土遺跡分布図
自分には十分な知識がありませんが、前浦式土器と安行c式・安行d式土器の出土遺跡は同時に存在し、分布はある程度異にしていたようです。つまり前浦式土器集団と安行式土器集団がすみわけしながら共存していたようです。
そのような視点から土器分布図と有孔円板形土製品出土遺跡を見比べると、有孔円板形土製品出土遺跡分布はどちらかというと前浦式土器出土遺跡分布に近いように観察できます。
宮原俊一論文では有孔円板形土製品分布は安行c式・安行d式土器分布ではなく、前浦式土器分布そのものを表していると強調しています。
【感想】
有孔円板形土製品が漁網や釣り糸専用の撚り装置部品(吊り下げ型回転式錘)であることはよく理解できましたが、そのメインの分布が漁業活動とはおよそ結び付きません。
次のような仮説(想像)をメモします。
・房総前浦式土器集団は麻の栽培が得意であり、広大な畑で麻を栽培していた。
・麻を素材に、作成に高度な技術・装置を要する漁網や釣り糸を交易用に多量生産していた。
・品質の高い漁網や釣り糸を出荷し、それの反対給付として祭祀用石器など地場では得られないものを得ていた。
2 君津市三直貝塚出土の有孔円板形土製品の模様
イメージ
北極星を軸に地平が回る(=北極星を軸に天球が回る)様子をイメージしてしまいます。そのようなイメージがこの有孔円板形土製品をつくった縄文人にあったのではないか?
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