2020年7月8日水曜日

1992年全国土偶集成情報の分析

縄文土器学習 418

土偶、装身具、葬祭用土器・石器、特殊建物、抜歯、製塩などの文化的遺物・事象の「分量」が縄文社会消長(=人口増減)と深くかかわる要因であるという直観(仮説)が生まれました。
2020.07.07記事「縄文社会の選択
2020.07.06記事「縄文社会消長分析学習の視点

そこでこれらの遺物・事象についても縄文社会消長分析学習という視点からも興味対象に昇格させ、自分の学習対象に含めることにします。
この記事では土偶の全国集成統計情報を早速いじってみて考察しました。

1 1992年全国土偶集成情報
土偶の全国レベル統計情報が1992年に作られていることを知り、その資料を図書館から借り出しました。

土偶特集号である「国立歴史民俗博物館研究報告第37集」
1992年当時の県別時期別土偶数統計情報(悉皆情報)が掲載されています。
この情報は28年前の情報で、その後発掘された土偶は膨大なものになると考えられます。しかし最新情報の存在を知らないので、28年前情報の大局的傾向は現時点でも首肯できる情報であると想定して学習対象にします。

2 時期別土偶数

時期別土偶数
早期、前期の出土は大変まれな出来事であり、ほとんどの土偶は中期、後期、晩期に出土します。
土偶文化が大衆化したのは中期からであると考えます。

3 土偶の時期分布

土偶の分布(全時期県別分布)
[この記事における土偶分布図作成はMANDARA10を利用しました。]
土偶数の分布は中部から東に偏った地域に分布していて、土偶文化が中部から東側の日本で盛んであったことを示しています。

中期土偶分布

後期土偶分布

晩期土偶分布
土偶分布の時期別分布をみると興味深い特徴が浮かびあがります。
中期に土偶出土数が多いのが山梨県・長野県、後期多いのは岩手県・茨城県・千葉県・長野県、晩期に多いのは岩手県・青森県・千葉県などとなります。山梨・長野→茨城・千葉→岩手・青森というように土偶出土中心域が移動しているように観察できます。

4 土偶文化の伝播
土偶文化(土偶を生活のなかで重用する文化)が空間的に伝播していると仮定できます。
土偶形状系譜がこのように伝播しているのかどうかは別として、土偶を作る手間や土偶祭祀にかける時間・エネルギーの増大が空間を移動しています。これは土偶を媒介にした満足感増大が空間を移動していると捉えることができます。

土偶文化伝播イメージ
私の学習仮説を投影すれば、「食糧獲得を置き去りにしてでも土偶で豊かな社会を作りたい」という社会的雰囲気が最初に山梨・長野でうまれ、その雰囲気が茨城・千葉に伝播し、さらに岩手・青森に伝播したということになります。

土偶文化に染まった順番、つまり山梨・長野→茨城・千葉→岩手・青森の順に社会虚弱化が進み、実際の遺跡数減少(=人口減少)もこの順番で生起しているようです。そのデータ分析は今後行うことにします。(県別時期別遺跡数未入手のため。)

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