2020年7月9日木曜日

子抱き土偶

縄文土器学習 421

図書館から借り出した28年前の図書「国立歴史民俗博物館研究報告第37集」(1992年)に掲載されている土偶図版を全部見ました。1点だけ特別な印象を受けたものがありますので、メモします。

1 子抱き土偶

子抱き土偶
「国立歴史民俗博物館研究報告第37集」(1992年)から引用
「国立歴史民俗博物館研究報告第37集」(1992年)の「東京都の土偶」の中期前半土偶に掲載されている土偶です。
八王子市宮田遺跡出土土偶で、横座りして乳飲み子に乳をふくませている情感あふれるポーズで、底面の中央が中空のつくりになっていると説明されています。

子抱き土偶写真
三上徹也著「縄文土偶ガイドブック」から引用

2 感想
「国立歴史民俗博物館研究報告第37集」(1992年)に掲載されている全国土偶多数の実測図はすべて「魔法の女神」「異界女性」「魔術師」というような現実と異なる様相をしています。
現実世界とは異なる異様な雰囲気がなければ、土偶にマジカルな効果は生まれないのだと思います。
ところがこの「子抱き土偶」1点だけ現実のリアルな風景になっています。この土偶をつくった女性は祈願具としての土偶作成約束事はほどほどにして、自分の偽らざる気持ちをそのまま土偶に表現したのだと思います。
また子どもを抱いている体部の破壊は忍びなく、それをしないで、頭と体部の2つに土偶を分断して、それぞれ別の場所に投げたのだと思います。

国立歴史民俗博物館webサイトにこの土偶の詳しい説明があります。歴史系総合誌「歴博」第179号

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