2021年1月17日日曜日

加曽利博研究講座「下総考古研究会と中峠式土器」を受講する

 縄文土器学習 523

2021年1月16日に加曽利貝塚博物館縄文時代研究講座「下総考古研究会と中峠式土器」(於:千葉市生涯学習センター)を受講することができました。コロナ禍にもかかわらず万全の予防措置の下に開催されたことにまずは感謝です。事前申し込み抽選により参加できました。

下総考古学研究会代表大村裕先生と下総考古学研究会副代表大内千年先生のお二人から興味深いお話がありました。

1 下総考古学研究会代表大村裕先生の講演

下総考古学研究会の創設から現在までの詳しい説明及び中峠式設定とその後の顛末について詳しい解説がありました。

自分は文字通りですが、下総考古学研究会というものの組織と活動について知識皆無でしたので、興味が深まるお話ばかりでした。


大村裕先生の講演

戦後、高橋良治さん、塚田光さん、湯浅喜代治さんらによってはじまった考古研究大衆運動がその発端であり、諏訪在住考古学者宮坂英弌先生や考古学者和島誠一先生などの指導や影響を受けて活動が発展したようです。


下総考古学研究会の創始者たち

講演会スライドから引用


和島誠一先生

講演会スライドから引用

余談ですが、自分は大学時代和島誠一先生の専門講座「考古学」を受講したことがあります。55年くらい前の話です。スライド写真よりももっと好々爺でした。話はダントツにおもしろかったことを憶えています。ただ学部が全く違う講義であり、いただいた単位の使い道はありませんでした。

中峠式という土器型式の設定とその後の顛末は考古学者山内清男先生との確執も一つの軸に展開したドラマとして、一種の感動を呼ぶものです。現在では一度設定した土器型式を下総考古研究会自身が見直し、再検討しています。

2 下総考古学研究会副代表大内千年先生の講演

大内千年先生から次の2点について詳しい土器型式説明がありました。

ア 勝坂式・阿玉台式・加曽利E式における各型式の違い

イ 中峠式における類型・細分とその違い、分布


大内千年先生の講演

最初に勝坂式・阿玉台式と加曽利E式の型式の違いについて詳しい説明がありました。中峠式は勝坂式・阿玉台式と加曽利E式の間に生まれて短期間継続した型式であるため、この説明が必須であるとのことでした。自分が現在興味を持って学習している有吉北貝塚ではまさに阿玉台式→中峠式→加曽利E式の変遷であり、とても参考になりました。


勝坂式・阿玉台式と加曽利E式の型式の違い

講演スライドから引用

本題である中峠式土器の細分類ごとの説明もとても有益でした。加曽利貝塚博物館企画展で現在展示中の土器が典型例であり、自分はそれらについて既に3Dモデルを作成して詳しく観察したものも多くありましたので、詳細にわたる文様説明もいつもよりは理解が進みました。


中峠式土器

講演スライドから引用

また中峠式土器の分布図も提示され、これも大変興味深いものでした。かなり遠方まで分布します。


中峠式の分布

講演スライドから引用

講演最後に質問時間があり、当方から中峠式分布が少なく、飛び地的に分布している理由についておうかがいしたところ、大村先生から中峠式は存在期間が阿玉台式などと比べると圧倒的に短く、その時間に比例して分布密度も低くなる旨教えていただきました。

大変有意義な、かつ出席者が限定されて超贅沢な学習機会を持つことができ、講師の大村先生、大内先生と主催の加曽利貝塚博物館に感謝します。


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