2019年12月15日日曜日

縄文時代研究講座 米倉貴之先生講演の聴講

縄文土器学習 286
2019.12.15に千葉市生涯学習センターで開催された加曽利貝塚博物館主催の縄文時代研究講座「県内他地域からみた加曽利貝塚の様相-印旛地域との比較-」を聴講しました。講師は加曽利貝塚博物館学芸員米倉貴之先生です。
加曽利貝塚博物館企画展「あれもEこれもE-加曽利E式土器(印旛地域編)-」(2019.11.16~2020.3.1)と連動した講演です。

講演会の様子

●講演内容
・講演では企画展に展示されている土器が発掘された遺跡のいくつかを紹介しながら、その遺跡と加曽利貝塚との比較をするというかたちで話が進みました。
・最終結論として印旛地域遺跡の加曽利E式土器は「意匠充填系」「横位連携弧線系」が多いのに対し、加曽利貝塚ではこれらのE式土器出土は皆無にちかくほとんどが「キャリパー形」であることが指摘されました。
・また、竪穴住居分布からみた遺跡構造(集落分散傾向)は、印旛地域も加曽利貝塚も密集中心部とはなれた少数からなり、同じパターンであることが確認できたと話がありました。
・同時に加曽利貝塚の発掘面積は全体の8%程度であり、今後発掘が進めば新しい情報が加わり、加曽利貝塚の認識が大いに変わる可能性があるとの指摘もありました。

●感想
・印旛地域と加曽利貝塚とでは加曽利E式土器の器形が少し違うという指摘は、これまでの各地博物館観覧での印象と合うような気がします。多数作成した3Dモデルの整理作業のなかで、この指摘がどの程度あらわれるか、楽しみです。
・加曽利貝塚と千葉市域の遺跡では加曽利E式土器の器形が共通していて、それと印旛地域とが違うという文脈で講演を理解しましたが、そのような理解でよいか、自分の観察で確かめてゆくことにします。それでよいのなら、東京湾沿いの貝塚ゾーンではキャリパー形土器であり、印旛沼・鹿島川流域では非キャリパー形という区分になり、生業の在り方と関連するのかもしれません。
・ただし、印旛地域の遺跡は加曽利EⅢ・EⅣが多く、加曽利貝塚では加曽利EⅠ・EⅡが多いという時間の平仄があっていないという問題が残されています。加曽利EⅠ~EⅣの全期を通じて印旛地域と加曽利貝塚(及び近隣千葉市遺跡)とでは器形が異なるといえるかどうか、確認する必要があります。
・学習課題はたくさんうまれましたが、この講演で器形の地域差の指摘があったことは、自分にとって刺激になり、格好の学習促進剤となりました。

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参考 加曽利貝塚博物館企画展「あれもEこれもE-加曽利E式土器(印旛地域編)-」(2019.11.16~2020.3.1)パンフレット


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