2020年3月1日日曜日

土器正面と器形に関する仮説

縄文土器学習 362

2020.02.29記事「把手のある意匠充填系土器」で加曽利EⅢ式深鉢(印西市馬込遺跡)企15土器は把手のある部分には他の突起部と異なり渦巻文が2つあり、これによりこの部分が土器正面であることを確認しました。
その土器正面と器形との関係記述は粗雑なところがあり、その記事にその旨追記しておきました。
改めて、土器正面と器形について観察します。

1 土器上部が把手と対向突起を長円軸とした楕円形である事実
オルソ投影「上から」と「底から」について把手(正面)と対向する突起に内接する円を描きました。

オルソ投影「上から」「底から」と把手とそれに対向する突起に内接する円
この図から、この土器の上部は把手(正面)と対向突起を結ぶ線分を長円軸にした楕円形であることがわかります。
これはオルソ投影「正面から」と「右から」の図形を比べると「正面から」の方が横幅が小さいことからも確認できます。

オルソ投影「正面から」と「右から」の図形の横幅比較

2 土器復元最下部の形状
土器復元最下部はこの土器のくびれ部付近です。つまり本来の土器の上部と下部の境付近です。この復元最下部の「上から」「底から」投影をみると真円に近い形状になっています。(ただし、撮影が全周していないので確実なデータとして示すことは困難です。)

3 感想
土器正面の位置に関連して土器上部形状が楕円形になっていることが確認できました。また、土器下部は真円に近い形状のようです。
この記事では説明しませんが、他の土器正面が確定的に認識できる土器は土器上部の形がいずれも真円ではなく、楕円や卵形などのように変形しているようです。
こうした情報から、次の学習仮説が芽生えています。
・土器下部を作るときは横断面が真円になるように作っている。
・土器上部を作り出すと、正面の位置を決めて、それに対応させた歪んだ(楕円とか卵形とか)器形をつくりだし、最後に決めていた位置に正面を示す模様や把手などをつける。

つまり、縄文土器を一目みると円に近いけれども、子細に観察すると真円をめざしたものだけでなく、計画的に真円以外の造形をおこなったものもかなりあると考えます。
一目みると円に近いので、展示土器をガラス面の外から観覧しているだけではわかりませんが、3Dモデルを分析的にいじりだすと、このような学習仮説が生まれました。
この学習仮説の検証を含めて、さらにE式土器企画展展示土器の観察を進めたいと思います。

4 参考
オルソ投影画像はGigaMesh Software Frameworkの6側面図書き出し機能を利用して書き出しました。

GigaMesh Software Frameworkに土器3Dモデルを読み込んだ様子



0 件のコメント:

コメントを投稿