2020年8月30日日曜日

ミミズク土偶の異様性

 縄文土器学習 460

千葉市埋蔵文化財調査センターに展示されているミミズク土偶(発掘調査報告書番号288)を3Dモデルで観察しました。

1 安行式ミミズク土偶(千葉市内野第1遺跡)288 観察記録3Dモデル

安行式ミミズク土偶(千葉市内野第1遺跡)288 観察記録3Dモデル

最大高9.3㎝、最大幅5.8㎝、最大厚3.8㎝、刻目列、割れた後二次焼成

観察場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

観察日時:2020.08.20

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.006 processing 49 images


展示の様子


展示の様子 特殊モード写真


実測図

千葉市内野第1遺跡発掘調査報告書から引用


3Dモデルの動画

2 観察と考察

ア 顔と乳房と全身の皮剥ぎ

20200829記事「本当に怖いミミズク土偶」で観察した発掘調査報告書番号289ミミズク土偶と同じように顔の皮剥ぎ、乳房の皮剥ぎが認められます。さらに多数の全身に及ぶ皮剥ぎ線が分布します。全身の皮を剥いで苦しみを与えて時間をかけて殺すという大陸で見られる拷問的殺害方法がこの土偶で観察できます。


顔と乳房と全身の皮剥ぎ

地母神殺害神話に基づく土偶祭祀は、地母神(土偶)を殺害して体をバラバラにして、各所にばら撒くと各所で幸が生まれるという神話に基づく活動ですが、地母神に与える苦痛が異様な状況になっています。全身の皮を剥いで激しい苦しみを与え、そのまま死ぬまで待つという拷問的殺害が行われています。特に女性にとって大事な顔と乳房の皮剥ぎが特段に強調されています。

この異様な殺害方法をとるミミズク土偶が女性によってつくられ、それが「幸福を呼ぶための祈願」で使われることに問題意識を持たざるを得ません。

ミミズク土偶が盛んだった縄文後晩期は社会そのものが精神的に病んでいたと仮説します。社会的な精神健康が失われていたと仮説します。

イ 縄文中期土偶の例(東京都)


縄文中期土偶の例(東京都)

縄文中期の土偶の例(東京都)では下腹部陰刻が強調された土偶(妊娠・出産に対する願望)とか、音のなる土偶(子どもをあやす喜びの願望)とか、子どもに授乳する土偶(子育てに対する願望)などが見られます。同じ地母神殺害神話に基づく土偶祭祀でも社会の健全性が感じられます。

ウ 土偶から浮かび上がる後晩期の幸福否定現象

土偶の変遷を子細に検討すれば、中期から後晩期に向かって社会における幸福否定現象が発展した様子がわかると考えます。縄文社会が内部から自壊していくような印象を受けます。


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