2021年3月5日金曜日

加曽利博企画展展示加曽利EⅠ式土器と埼玉編年資料との対応

 縄文土器学習 556

2021.03.04記事「加曽利EⅠ式深鉢11器 観察記録3Dモデル総集(試作1)」で加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」で展示された加曽利EⅠ式深鉢のうち11器について3Dモデルを全部並べた総集資料をつくりました。この資料を使って、有吉北貝塚土器群分類および埼玉編年資料との対応関係を検討してみました。埼玉編年との対応を考察するのは、有吉北貝塚土器群分類が埼玉編年に基づいているためです。

1 加曽利博R2企画展展示加曽利EⅠ式土器と有吉北貝塚及び埼玉編年土器群分類との対応


加曽利博R2企画展展示加曽利EⅠ式土器と有吉北貝塚及び埼玉編年土器群分類との対応

有吉北貝塚土器群分類との対応でみると10土器が第7群、1土器が第8群という結果になります。

埼玉編年との対応でみると、6土器がⅨa期、4土器がⅨb期、1土器がⅩ期という結果になります。


参考 縄文時代中期土器編年表

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


参考 有吉北貝塚中期土器分類

有吉北貝塚発掘調査報告書から作成

2 感想

埼玉編年の土器群分類は詳細にわたりますが、加曽利博展示土器をその分類にあてはめようとすると、ドンピシャ当てはまる土器が意外と少ないことに気が付きました。分類の典型事例実測図を見ると判りやすいのですが、個々の土器をその分類に照らすと、他の分類にも当てはまるような属性が複数あることが多かったです。埼玉と千葉では母集団が違うから同じ細分類では齟齬が大きくなるということもあるかもしれません。

加曽利EⅠ式土器がEⅡ式土器と比べて文様や器形で多様性があることはよくわかりました。


2021年3月4日木曜日

加曽利EⅠ式深鉢11器 観察記録3Dモデル総集(試作1)

 縄文土器学習 555

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」で展示された加曽利EⅠ式深鉢全14器のうち11器について3Dモデルを作成しましたので、それを全部並べた総集資料をつくり、加曽利EⅠ式土器細分類検討をしやすくしました。

1 加曽利EⅠ式深鉢11器 観察記録3Dモデル総集(試作1)

加曽利EⅠ式深鉢11器 観察記録3Dモデル総集(試作1)

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2020.11.27 2021.01.06 2021.02.02

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 

左から

No.20 加曽利EⅠ式深鉢(市川市向台貝塚)

No.21 加曽利EⅠ式深鉢(市川市向台貝塚)

No.25 加曽利EⅠ式深鉢(船橋市高根木戸遺跡)

No.36 加曽利EⅠ式深鉢(松戸市根木内遺跡第4地点)

No.37 加曽利EⅠ式深鉢(野田市東亀山遺跡)

No.38 勝坂・阿玉台末/加曽利EⅠ初深鉢(柏市小山台遺跡B区)

No.39 加曽利EⅠ式深鉢(柏市小山台遺跡B区)

No.40 加曽利EⅠ式深鉢(柏市小山台遺跡B区)

No.55 加曽利EⅠ式深鉢(流山市中野久木谷頭遺跡C地点)

No.56 加曽利EⅠ式深鉢(流山市中野久木谷頭遺跡C地点)

No.57 加曽利EⅠ式深鉢(流山市中野久木谷頭遺跡C地点)

Sketchfab画面1


Sketchfab画面2


3DF Zephyr Lite画面1


3DF Zephyr Lite画面2


3Dモデルの動画

2 今後の検討

ア 詳細時系列分類の検討

有吉北貝塚発掘調査報告書における加曽利EⅠ式土器分類(時系列分類)をこの11土器に当てはめるとどのようになるか検討し、分類検討結果により土器を並べ替えてみることにします。

イ 大きさ、器形等による分類

11土器を大きさ順に並べた3Dモデル資料、器形類型による分類で並べ替えた3Dモデル資料を作成します。

ウ 観察記録3Dモデル総集資料の整飾

観察記録3Dモデル総集資料に台座・背景、名札、スケール等を配置して観察しやすい整飾環境を造成します。

2021年3月3日水曜日

加曽利EⅠ式深鉢(No.21)(市川市向台貝塚) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 554

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」で展示された加曽利EⅠ式深鉢(No.21)(市川市向台貝塚)を3Dモデルで観察しましたのでメモします。

1 加曽利EⅠ式深鉢(No.21)(市川市向台貝塚) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式深鉢(No.21)(市川市向台貝塚) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.02

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 64 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド


GigaMesh Software Frameworkによる展開 分析用加工

3 観察とメモ

以下の文章は観察記載ですが、【感想・メモ】は妄想・空想を含めた感想や学習上のメモです。

…………………

1 器形

1-1 基本器形

キャリパー形。

【感想・メモ】

同じキャリパー形といってもこの土器は胴の膨らみがあり、隣に展示されているNo.25と較べると器形印象が大きく異なります。「キャリパー形」をさらに分類する定量的指標についていつか考えることにします。

1-2 細部器形

口唇部が平縁になり、口縁部に渦巻の小突起がはりつきます。

【感想・メモ】

把手が退化して平縁になった時間変化を感じることができます。

2 大きさ、容量

2-1 器高

32.1㎝。3Dモデルから計測。

2-2 最大器幅

28.1㎝。3Dモデルから計測

2-3 口唇部器壁厚

計測中。

2-4 容量(推定)

計測中。

3 文様

3-1 文様帯の段区分と主文様帯の位置

文様帯は口縁部、頸部、胴部の3段に区分されます。頸部は無文であり、加曽利EⅠ式土器の後半期に生まれる文様帯です。

3-2 文様帯の特徴

ア 口縁部

隆帯による渦巻文、楕円区画文が配置され、渦巻文の一部は小突起となっています。区画文内部は縄文が施文されます。縄文の見かけの向きは胴部と逆であり、口縁部文様が強調されるようになっています。

イ 頸部

無文。

ウ 胴部

全面縄文が施文され、その上から3条沈線で垂下区画文、棘状文様、渦巻文様が、1条沈線で垂下蛇行文様が描かれています。

【感想・メモ】

渦巻文様と棘状文様は大木式土器によくある唐草文様によく似ています。

4 展示館説明

4-1 型式

加曽利EⅠ式深鉢。

4-2 出土遺跡

文化的3Dモデル無償公開サイトScan The Worldの存在を知る

 文化的3Dモデルを無償で公開共有しているサイトからメールをいただき、その存在を知りましたのでメモします。Scan The Worldは3Dプリント可能な文化的3Dモデルファイルの共有をめざしているサイトです。3Dプリンターにより造形物を3D印刷することに関心のある人々の情報サイトのようです。1855人のアーティストが参加し、16906オブジェクトが無償で利用できます。その中にはミロのビーナス像、ネフェルチチ胸像、ダビデ像など有名な文化財や芸術作品も多数含まれています。著作権など利用に関する制限は事例毎に確認する必要がありますが、趣味や研究などでの利用・改変はほぼ自由にできるようです。


Scan The Worldサイトのトップ画面

このサイトは日本ではほとんど知られていないのではないでしょうか。

3Dモデルをパソコンで操作できる環境を備えている方はぜひ一度訪問してダウンロードを楽しむことをお薦めします。

自分は試しにミロのビーナス像をダウンロードして、最近知ったばかりの色塗りをテストしてみました。


ダウンロードしたミロのビーナス像


色塗りしたミロのビーナス像

Scan The World提供によるミロのビーナス像(色彩貼付テスト)

Scan The World提供によるミロのビーナス像に色彩を貼付したテスト3Dモデルです。

色彩は3DF Zephyr Liteで法線に基づく色変更による。

Based on “Venus de Milo at The Louvre, Paris” by Scan The World, licensed under CC Attribution(BY-NC-SA)”

Scan The Worldによるミロのビーナス3Dモデル無償公開に感謝します。

3Dモデル入手先:https://www.myminifactory.com/scantheworld/


Scan The World提供によるミロのビーナス像の動画


2021年3月2日火曜日

加曽利EⅠ式土器(No.25)(船橋市高根木戸遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 553

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」で展示された加曽利EⅠ式深鉢(No.25)(船橋市高根木戸遺跡)を3Dモデルで観察しましたのでメモします。

1 加曽利EⅠ式土器(No.25)(船橋市高根木戸遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式土器(No.25)(船橋市高根木戸遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.02

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 83 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド

3 観察とメモ

以下の文章は観察記載ですが、【感想・メモ】は妄想・空想を含めた感想や学習上のメモです。

……………………………………………………………………

1 器形

1-1 基本器形

キャリパー形。

1-2 細部器形

4単位の把手。正面把手と対向把手は同じ種類、正面把手の両脇の把手は口縁部区画文の延長のような文様になっているようです。

2 大きさ、容量

2-1 器高

40.4㎝。3Dモデルから計測。

2-2 最大器幅

32.4㎝。3Dモデルから計測。

2-3 口唇部器壁厚

計測中。

2-4 容量(推定)

計測中。

3 文様

3-1 文様帯の段区分と主文様帯の位置

口縁部と胴部の境に2条の隆帯が土器を周回して、2段の文様帯に区分されています。口縁部文様帯が主文様帯です。

3-2 文様帯の特徴

ア 把手

把手と口縁部文様は一体的に構成されています。把手だけをみると外面と内面に3つの孔があるタイプが対向で配置され、それとは90度の角度で対向する把手は外面に1つの孔と2つの疑似孔、内面に1つの孔があります。内外面3つの孔があるタイプの把手は孔の周りに縦位沈線が刻まれていますが、別のタイプは同じ場所に縦位沈線は刻まれていません。

イ 口縁部

2条の隆帯で細長い楕円状区画文がつくられ、区画の中は縦位沈線で埋められています。

ウ 胴部

全面縄文が施文された後、3条垂下沈線、1条蛇行垂下沈線が描かれて、縦方向に胴部が区画されています。胴部区画と口縁部区画の文様上の対応関係はありません。

【感想・メモ】

把手と口縁部の縦位沈線は雨の表現であると以前から空想しています。

4 展示館説明

4-1 型式

加曽利EⅠ式深鉢。

4-2 出土遺跡

船橋市高根木戸遺跡出土。

2021年3月1日月曜日

加曽利EⅠ式深鉢(No.36)(松戸市根木内遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 552

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」で展示された加曽利EⅠ式深鉢(No.36)(松戸市根木内遺跡)を3Dモデルで観察しましたのでメモします。観察は2021.02.26記事「加曽利EⅠ式深鉢(No.20)(市川市向台貝塚) 観察記録3Dモデル (観察項目検討と詳細観察)」で設定した観察項目により行います。

1 加曽利EⅠ式深鉢(No.36)(松戸市根木内遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式深鉢(No.36)(松戸市根木内遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.02

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 91 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド


GigaMesh Software Frameworkによる展開 分析用加工

3 観察とメモ

以下の文章は観察記載ですが、【感想・メモ】は妄想・空想を含めた感想や学習上のメモです。

……………………………………………………………………

1 器形

1-1 基本器形

キャリパー形。

【感想・メモ】同じキャリパー形といっても加曽利EⅠ式深鉢(No.20)(市川市向台貝塚)とは形状の印象がだいぶ異なります。口縁部及び胴部の膨らみ方がNo.20土器とくらべてNo.36土器は少ないです。このような違いがどれほどの意味があるのか、注意しながら多数土器を観察していくことにします。


No.20土器とNo.36土器の器形比較

この二つの土器の器形の違いが時期の違いによるものか、地域の違いによるものか、用途の違いによるものか、その違いに大きな意味がないのか興味が湧きます。

加曽利博企画展展示加曽利EⅠ式土器の器形を並べて比較検討する機会を追ってつくりたいと思います。

1-2 細部器形

3単位の把手が特徴的です。3単位のうち手前の把手が他の2つの把手より幾分大きくなっていて、主把手1、副把手2という構成のように把握します。主把手の部分の器形が幾分広がっていて、口唇部が正円から外れた膨らみを持ちます。


主把手方向に口縁部が膨らんでいる様子

【感想・メモ】把手の数は4単位が多いように感じますが、統計的にどうなのか調べる(調べた情報を探す)ことにします。

把手の数は土器が表現する物語(神話)の内容に大きくかかわっているのではないだろうかと想像します。例えば把手の数や把手の主縦の違いは物語に登場する神様(あるいはそれに類似する概念)の数や軽重に関係するのかもしれません。

2 大きさ、容量

2-1 器高

46.4㎝。3Dモデルから計測。

2-2 最大器幅

33.6㎝。3Dモデルから計測

2-3 口唇部器壁厚

計測中。

2-4 容量(推定)

計測中。

3 文様

3-1 文様帯の段区分と主文様帯の位置

口縁部区画文の2条隆帯の下辺が土器を周回するように配置され、それにより口縁部と胴部の2段に土器が区分されます。主文様帯は口縁部に存します。

3-2 文様帯の特徴

ア把手

口唇部を周回する2条隆帯及び口縁部区画文を成す2条隆帯と連続して把手部に輪と渦が立体的に構成されています。把手に縄文は施文されていません。

渦の一つには重畳する模様が描かれています。この文様は中峠式土器の把手文様にも見られました。


重畳する模様が描かれる把手の渦文様


参考 中峠式土器(中峠0地点型深鉢 松戸市中峠遺跡)の把手に見られる重畳模様

イ 口縁部

2条隆帯によるクランク文で区画されクランク形状や楕円形状の区画が形成されています。区画内は縄文が施文されています。2条隆帯には渦が配置されています。

ウ 胴部

2条沈線と蛇行沈線の垂下で胴部が区画されています。縄文施文の後沈線の施文が行われています。

【感想・メモ】把手文様は口縁部文様から連続していることから、把手は口縁部から生えていると考えることが出来ます。

渦の周りの重畳する模様は渦の波紋あるいは吹き上がる水がばらけて降りそそぐ様子を想起させます。

把手の孔は土器外面側に2つ、内面側に1つ合計3つあります。この表現は湧水水中から泡がボコボコ湧いている様子を立体的に表現しているのだと想像します。

把手→口縁部→胴部の順に文様施文が簡易になります。これはその順番にその部位の物語意義が虚弱になることを意味していると想像します。

把手は天空界と神の領域のインターフェイスを、口縁部は天空界(故人の住む天空にある世界)を胴部は地上界(人が住む現実世界)を表現していると空想します。

口縁部2条隆帯によるクランク文はS字状文の変異型であると想像します。

天空界と地上界の区画はそれぞれの世界での集落生活上の区画(集落が確保している縄張り)を表現していると想像します。

4 展示館説明

4-1 型式

加曽利EⅠ式深鉢。

4-2 出土遺跡

松戸市根木内遺跡出土。

2021年2月26日金曜日

縄文土器の容量計測法

 縄文土器学習 551

縄文土器3Dモデルを作成した際、実寸法を付与できれば、簡易的な方法でその容量を測定出来ますので、その手順をメモします。

1 作成方法の概要

縄文土器を回転体に見立て、容量部分(液体の入る部分)の模擬3Dモデルを作成し、その体積をBlenderで計測します。

2 回転体の素となる断面の作成

土器3Dモデルの正面オルソ投影画面を利用して、土器厚を差し引いた液体が入る部分の断面図を作成します。


オルソ投影画面における断面図の作成


作成した断面図(余白透明なPNGファイル)

3 断面図のWabefront(.obj)ファイル作成

断面図(余白透明なPNGファイル)をPhotoshopに投入し、3D機能で新規3Dオブジェクト作成→深度マップからのメッシュ→平面→作成で3Dモデルを作成します。次に3DモデルをWabefront(.obj)ファイルで書き出します。


PhotoshopでWabefront(.obj)を書き出している様子

4 断面図Wabefront(.obj)ファイルをBlenderに投入

断面図Wabefront(.obj)ファイルをBlenderに投入して、メッシュ数を縮減して扱いやすくします。事例ではメッシュ数を×0.02にしました。また、オブジェクトサイズと単位を確認し、必要に応じてオブジェクトの倍率を調整します。

5 回転体作成と体積計測

断面図オブジェクト(平面メッシュ)を真上からオルソ投影で見下ろす状態で、編集モードでスピン機能で回転体を作り、サイドバーで体積を計測します。


断面から360度回転、72ステップで作成した回転体

体積計測している様子

Nキーでサイドバーを表示し、3Dプリント→体積で体積が表示されます。

6 感想

断面図をBlenderに投入して重心位置を求めてパップス-ギュルダンの定理で体積を計測する方法もあります。2021.02.17記事「パップス-ギュルダンの定理による縄文土器体積の求積

手間数は回転体で体積を計測する方が少なく、また計測誤差が生まれるステップも少ないので、回転体を使う方が効率的でより正確です。また回転体を利用すれば容量模擬3Dモデルという計測証拠を残すことができます。


加曽利EⅠ式深鉢(No.20)(市川市向台貝塚) 観察記録3Dモデル (観察項目検討と詳細観察)

 縄文土器学習 550

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」後半で展示された加曽利EⅠ式深鉢(No.20)(市川市向台貝塚)を3Dモデルで観察しましたのでメモします。この記事では中期縄文土器の自分なりの観察項目をどのように設定すべきかという視点から詳しく観察します。

1 加曽利EⅠ式深鉢(No.20)(市川市向台貝塚) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式深鉢(No.20)(市川市向台貝塚) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.02

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 100 images


展示の様子

展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド

3 観察メモ

3-1 中期縄文土器観察項目

発掘調査報告書や専門論文における中期縄文土器分類に使われている観察項目や指標をとりあえず全て網羅し、同時に自分が興味をもつ項目も加えた土器観察項目を仮に設定して、3Dモデルの観察を順次行い、必要に応じて項目加除等を行います。ある程度観察土器数が蓄積した時に観察項目の意義について検討することにします。この土器について、手始めに次の項目を暫定的に設定して観察することにします。

……………………………………………………………………

1 器形

1-1 基本器形

暫定的にキャリパー形、円筒形、ラッパ形、樽形等分類を使う。

1-2 細部器形

把手の有無やその他の特徴

2 大きさ、容量

2-1 器高

2-2 最大器幅

2-3 口唇部器壁厚

2-4 容量(推定)

3 文様

3-1 文様帯の段区分と主文様帯の位置

3-2 文様帯の特徴

主文様描出の方法(隆帯・沈線など)、地文、施文順序など

4 展示館説明

4-1 型式

4-2 出土遺跡

4-3 その他の説明

5 感想

5-1 型式・分類に関するメモ・感想

5-2 文様意味等に関するメモ・感想

……………………………………………………………………

3-2 観察とメモ

以下の文章は観察記載ですが、●は感想・メモです。

…………………

1 器形

1-1 基本器形

キャリパー形。


オルソ投影画像(正面から)

●キャリパー形の定義があるのかどうか知りませんので、詳しく知りたいと思います。測定器具「キャリパー」の写真を掲載して説明している文章をあちこちで見かけますが、そのイメージだけで流布している用語なのか、もう少し学術的な説明がある用語なのか、自分はまだ判っていません。

加曽利E式土器がキャリパー形になった理由があるはずです。より効率的熱処理ができる炉構造が発明され、それに対応して土器器形が変化したのではないだろかと空想しています。

あるいは煮物で上澄みをすくいとることが必要な食材が新規開発されたり、上澄み除去を必須とする新調理法開発があったのかもしれません。

1-2 細部器形

立体的なS字状文が把手になっています。S字状文は2単位のようです。(背面が同じS字状文であるかは未観察)S字状文の間は平縁のようですが、欠けのため確認できません。

2 大きさ、容量

2-1 器高

40.5㎝。3Dモデルから計測。

2-2 最大器幅

32.0㎝。3Dモデルから計測。

2-3 口唇部器壁厚

約1.5㎝。3Dモデルから計測。


3Dモデルから計測した結果

2-4 容量(推定)

10.9L(土器容量模擬3Dモデルを作成してBlenderで体積計測)


土器容量模擬モデルをBlenderで体積測定している様子

●縄文土器の大きさ、容量データは統計的分析によりその意味を発見することができると考えます。

一般的な見立てとして、中峠式土器→加曽利E式土器で大きさと容量が増大していると想像しています。その理由として海産物などの食材が豊富に入手できるようになったことがあるのではないだろうかと想像しています。

また、加曽利EⅡ式器になると「業務用」と想像されるような巨大な土器が生まれると考えます。家族を越えた集落全体の保存食づくりなどの土器かもしれません。食材を多量に扱えるようになった組織や技術が整備されたからだと空想します。

土器見かけの大きさ(高さとか幅とか)のわずかな差が容量では大きな差になりますので、注意が必要です。。

3 文様

3-1 文様帯の段区分と主文様帯の位置

土器のくびれ部に3本の沈線と2本の隆帯が交互に配置され土器を周回して、土器が口縁部と胴部の2段に区分されます。

●胴部は地上界(自分が住んでいる世界)、口縁部は天上界(天にある地上界と同じような世界で、故人が生活する場所)、口唇部(把手)は天上界のさらに上にあるいわば「神」の領域とのインターフェイス空間と超妄想しています。

3-2 文様帯の特徴

ア 口縁部

土器文様のメインモチーフは口縁部の把手ともいえる立体S字状文とそれに連なるクランク状区画文です。

立体S字状文は2本の隆帯によって構成されるようにイメージしてつくられています。よくみると2本の隆帯は右と左で直接連続していません。また一つの隆帯を沈線で割って2本の隆帯にしています。

立体S字状文の左は土器口縁部に貼り付いていますが、右は円環(孔)となって、内面に渦模様として連続しています。

立体S字状文の間の口唇部は2本隆帯が巡っています。

口縁部クランク文は2本隆帯でつくられ、立体S字状文と連絡するもの、渦巻文に変化するもの、口唇部に連絡するものがあります。

口縁部の地文は縦位沈線です。

●S字状文は河川や湖や吹き出す湧泉をイメージしていると妄想しています。S字状文の起源は勝坂式土器にあると考えますが、今後詳しく辿ってみたいと考えます。

立体S字状文は天空界と「神」の領域のインターフェイスのあり方をイメージしていると妄想しています。

「クランク文」はS字状文の別バージョンで、趣旨は全く同じ(河川や湧泉等のイメージ)であると想像します。「クランク文」は天空界で川が土地を区画している、つまり集落利用空間=縄張りがあって、それにより故人の生活が保障されている様子を描いていると想像します。

口縁部の地文である縦位沈線は雨をイメージしていて、豊かな自然がそこに存在している様子を表現していると妄想します。

イ 胴部

地文としての縦位沈線をそれより太い沈線でえぐって文様を描出しています。

2本沈線が間を置いて2つ垂下し、その間に蛇行沈線が垂下しています。加曽利EⅠ式土器の特徴であると考えます。

2本沈線は区画文として、あるいは渦巻状文として垂下2本沈線から派生しています。2本沈線で区画された場所に蛇行沈線が配置されている場所もあります。

●口縁部では2本隆帯で文様が描出され、胴部では2本沈線で文様が描出されている様子はとても興味深いと考えます。おそらく、立体S字状文(把手)→口縁部文様→胴部文様の順に文様が語るテーマの意義が軽くなると考えます。つまり神→故人→自分達という登場がある物語(神話)がこの土器で語られていて、その意味軽重に応じて、文様づくりの丁寧さが差別化されたと想像します。

2本沈線は元来河川や湧泉等を表現する記号であり、それが土地の区画に役立っている様子を描いていると考えます。蛇行沈線はより具象的に河川を描いています。河川が土地の大きな区間になっています。

地文の縦位沈線は雨のイメージで、豊かな自然を表現していると想像します。

4 展示館説明

4-1 型式

加曽利EⅠ式深鉢。

4-2 出土遺跡

市川市向台貝塚出土。

4-3 その他の説明

なし。

2021年2月23日火曜日

「千葉県内で見つかる縄文遺跡の特徴を時期別にみる パネル3Dモデル」とその原典

 縄文社会消長分析学習 86

現在、有吉北貝塚学習における縄文土器学習の一環で縄文土器3Dモデルの分析的活用を検討し、さらに派生してその学習技術としてのBlender操作習熟に時間を投入するという、いつもの学習カオス状況を楽しんでいます。

有吉北貝塚学習に興味を引き戻す意味も込めて、加曽利貝塚博物館展示パネル「千葉県内で見つかる縄文遺跡の特徴を時期別にみる」の3Dモデルを作成して、中期中葉頃の概念様子をよく見て、感想が頭の中で充満するような時間を作ってみました。

また、このパネルの原典である「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)第2章第2節1(1)貝塚に掲載されている表もパネル3Dモデルにして、こちらもじっくり眺めてみました。

1 千葉県内で見つかる縄文遺跡の特徴を時期別にみる パネル3Dモデル

千葉県内で見つかる縄文遺跡の特徴を時期別にみる パネル3Dモデル

加曽利貝塚博物館展示パネルから引用

撮影月日:2021.02.16

3DF Zephyrv5.019でアップロード


千葉県内で見つかる縄文遺跡の特徴を時期別にみる

加曽利貝塚博物館展示から引用

2 縄文時代の時期区分 パネル3Dモデル

縄文時代の時期区分 パネル3Dモデル

「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)第2章第2節1(1)貝塚から引用

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縄文時代の時期区分

「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)から引用


2つのパネル3Dモデルの動画

3 感想

千葉県縄文時代学習の基本となる年表がこれら2つのパネルです。この2つのパネルから生まれる感想、気づき、疑問などは良質な学習思考であると考えます。

パネル3DモデルとしてSketchfabに格納しておくことによっていつでも即座に参照することができます。また拡大縮小などが自由に出来ますので閲覧に便利です。

2021年2月21日日曜日

加曽利EⅠ式深鉢とその器形模造品 3Dモデル

 縄文土器学習 549

加曽利EⅠ式土器の器形模造品3Dモデルを作って見ました。観察記録3Dモデルの「補修」ツールとして使えるかもしれないなどの期待感に基づいています。

1 加曽利EⅠ式深鉢とその器形模造品 3Dモデル

加曽利EⅠ式深鉢とその器形模造品 3Dモデル

加曽利EⅠ式深鉢:加曽利EⅠ式深鉢(No.37)(野田市東亀山遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」展示

https://skfb.ly/6YZMI

器形模造品:加曽利EⅠ式土器断面の回転体(72ステップ)(Blenderスピン機能で作成)


動画作成用に3DF Zephyr Liteにセットした様子


3Dモデルの動画

2 器形模造品の作り方概要

ア 土器断面図作成

illustratorに加曽利EⅠ式深鉢観察記録3Dモデルのオルソ投影(正面から)図像を取り込み、トレースして土器断面図を作成し透明pngファイルに書き出します。

イ 土器断面図のWabefront(.obj)ファイル作成

Photoshopに透明pngファイルを投入し、3D機能で新規3Dオブジェクト作成→深度マップからのメッシュ→平面→作成で3Dモデルを作成する。次に3DモデルをWabefront(.obj)で書き出します。

ウ 回転体作成

Blenderに土器断面図のWabefront(.obj)ファイルを投入し、スピン機能で回転体を作成します。今回は72ステップで作成しました。(土器断面図の頂点数をデシメートモディファイアーで削減してから回転体を作成すると3Dモデルが軽くなります。)

エ 回転体の色塗り

回転体にテクスチャ(今回は単色)を貼り付けて回転体を完成させます。

3 器形模造品の使い方

ア 観察記録3Dモデルの補修ツール

展示土器観察記録3Dモデルは前面のみの3Dモデルで後面は画像が欠如し、見苦しい状況です。この見苦しい状況を器形模造品でカバーすることが可能であると考えています。


器形模造品を補修ツールとして使った例(イメージ)3Dモデルの動画

この例はやっつけ仕事で作ったもので、時間をかければ効果的な補修が出来る可能性を確認したものです。補修部分を半透明にするなどの工夫もこれから楽しむことにします。

イ 器形の数量的分析材料

実際土器の回転体模造品を作ることにより、テクスチャ(文様)が捨象され、純粋で単純な器形・大きさになるため、器形比較を「キャリパー形」などの感覚的な分類から数量分析する道が開けるかもしれないと夢想します。

また、回転体と実際の土器形状との差異(円に対するゆがみ)を求めれば、一つの指標になり、土器群とか、地域差とかの比較に使えるかもしれません。

ウ 土器断片資料の位置推定・表示ツール

土器断片資料の曲率等から仮想回転体の中に土器断片資料を埋め込む作業を行うことにより、その土器断片の土器における位置を推定する作業が効率化します。また、回転体に埋め込んだ土器断片は展示などの表現技術として使えると考えます。土器断片資料に新しい価値をもたらすかもしれません。

4 感想

今回は実際の土器断面を使った回転体をつくりました。しかし、実際の土器断面は隆帯や沈線での微細な凸凹が生まれます。その凸凹で回転体をつくると違和感のある回転体になってしまいます。隆帯や沈線の凸凹を平均化したような仮想断面(平均断面)を作って、それで回転体をつくる必要があるかもしれません。

回転体を半透明にしたり、質感や色を工夫したいと思います