2021年5月20日木曜日

加曽利EⅢ式深鉢(No.49)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 607

この記事では今年2月まで開催された加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅢ式土器(No.49)を3Dモデルで観察します。

1 加曽利EⅢ式深鉢(No.49)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(No.49)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.09

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 51 images

展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 観察メモ

沈線をなぞってみると文様が良くわかるようになります。


沈線をなぞる

胴部の括れている部分で文様が二分されます。上部には2つの渦巻文がつながった大きな文様が2つ見え、おそらく波状頂部の間に対応して別に2つ存在していると推測します。二つの大きな渦巻文の意味はS字状文一般と同じ意味であると考えます。


杖状文と渦巻文(垂下文付)

 縄文土器学習 606

1 杖状文と渦巻文(垂下文付)

2021.05.20記事「加曽利EⅢ式深鉢(No.61)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル」で沈線による垂下文の付いた渦巻文に興味を持ちました。


渦巻文(垂下文付)

そして、次のような想像的感想を持ちました。

「地中から吹き上がった湧泉が弧を描いて流れ落ちる様子という空間立体的な様子が土器表面に渦として表現されている。同時にその吹き上がった水が土器の内部に吸い込まれていくという空想的渦の様子が表現されている。」

この想像的感想は以前感じた杖状文(C字型ステッキ状文)に関する感想と同じです。

2021.05.19記事「加曽利EⅢ式深鉢(No.46)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル」


杖状文(C字型ステッキ状文)の様子

これら二つの文様に関する感想が結合して、それらが同等の文様であるという仮説が浮かび上がりましたので図解メモします。


杖状文と渦巻文(垂下文付)が同等の文様であると考える仮説

杖状文が水噴出表現記号であるという考えは2019.08.18記事「加曽利EⅡ式把手付鉢の杖のような模様」ですでにメモしています。


加曽利EⅡ式把手付鉢で観察できる杖のような模様


水噴出を表現する沈線記号か?

2 感想

ア 清潔で豊富な水が得られる世界が理想世界・神話世界であった

●中峠式土器における噴水を描写したと考えられる把手、加曽利EⅠ式土器・EⅡ式土器における湧水を描写したと考えられる渦巻文、そして加曽利EⅢ式土器で現れる湧泉表現と考えられる渦巻文(垂下文付)の全てがもし首肯できる思考、もっともらしさの高い思考であるならば、そこから次の思考を導き出すことができます。

・縄文中期にあっては清潔で豊富な飲料水・生活用水の確保がきわめて重要であった。単なる重要性ではなく、最も重要な生活環境であった。従って、清潔で豊富な飲料水・生活用水確保を祈念して土器文様が描かれた。理想的水環境は理想世界の姿であった。理想的水環境は神話の重要なモチーフであり、土器に文様として表現された。

●逆に発想すると、清潔で豊富な飲料水・生活用水の継続的確保が困難であった事情が背景にあると考えます。

・定住したため、集落の縄張り範囲でのみでしか飲料水・生活用水の確保ができないため、干天による湧水枯渇は集落の死活問題だったに違いありません。

・人口が少ないとはいえ廃棄物やし尿が循環する水環境のなかで、衛生的水を得ることは課題だったに違いありません。

・現代人が考える以上に縄文人は清潔好きであり、その清潔観念から病気から逃れ、健康を維持していたと考えます。清潔な水さえあれば、狩猟採集活動のアレコレを乗り越えて、人々は健康でイキイキした生活を送れたと想像します。

イ 狩猟や採集と水

加曽利E式土器では水が最大テーマであり、社会の関心事がそこにあったと考えます。一方、前期土器には把手に猪を造形するものがあり、この土器を作った人々の最大関心事は狩猟にあったと考えます。おそらく加曽利E式土器の時代は漁業が加わって食べ物が豊富に手に入るようになり、食うことより、清潔で豊かな水環境の方が価値として重視されたのだと想像します。生活環境の質が求められた時代だったと想像します。


加曽利EⅢ式深鉢(No.61)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 605 

この記事では今年2月まで開催された加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅢ式土器(No.61)を3Dモデルで観察します。

1 加曽利EⅢ式深鉢(No.61)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(No.61)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.16

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 49 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 観察メモ

沈線による垂下文の付いた渦巻文に興味を持ちます。次のような想像的感想が生まれました。

地中から吹き上がった湧泉が弧を描いて流れ落ちる様子という空間立体的な様子が土器表面に渦として表現されている。同時にその吹き上がった水が土器の内部に吸い込まれていくという空想的渦の様子が表現されている。

縄文人は渦を多義的な観点を込めて造形したと想像しました。


渦巻文(垂下文付)の塗色(沈線部分を塗色)

2021年5月19日水曜日

加曽利EⅢ式深鉢(No.64)(我孫子市鹿島前遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 604

この記事では今年2月まで開催された加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅢ式土器(No.64)を3Dモデルで観察します。

1 加曽利EⅢ式深鉢(No.64)(我孫子市鹿島前遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(No.64)(我孫子市鹿島前遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.09

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 68 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 観察メモ

ア 文様の様子


文様の様子

隆帯を抜き書きしたものです。

隆帯2本で大きな渦巻を上段と下段に描出しています。観察できる範囲内では精緻なデザインプランに基づいて描いたというより、その場の勢いでどんどん描いた(隆帯を貼り付けた)という感じがします。隆帯が合流する部分などでは必ずしも合理的に処理されていません。

イ 土器分類

加曽利貝塚博物館で使う土器分類でいえば、意匠充填系土器に該当します。


意匠充填系土器

ウ 我孫子市湖北郷土資料室展示土器

この土器は2年前に我孫子市湖北郷土資料室で観覧した土器です。当時は土器分類知識ほとんどゼロであり、人にいわれるまま加曽利EⅠ式頃の土器と考えていました。2019.08.18記事「我孫子市湖北郷土資料室 縄文土器展示風景3Dモデル」


2年前の我孫子市湖北郷土資料室におけるの加曽利EⅢ式深鉢(No.64)(我孫子市鹿島前遺跡)展示風景

加曽利EⅢ式深鉢(No.46)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 603

有吉北貝塚の加曽利EⅢ式土器学習の前段参考とするために加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」(~2021.02)で展示された加曽利EⅢ式土器を3Dモデルで幾つか観察します。この記事はその最初です。

1 加曽利EⅢ式深鉢(No.46)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(No.46)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2020.11.27

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 47 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 観察メモ

ア 文様の様子


文様の様子

埼玉編年(1982)のⅩⅢ期A類(7)に似ています。


埼玉編年(1982)ⅩⅢ期A類(7)

加曽利貝塚博物館で使う用語でいえば、その本質は入組系横位連携弧線文土器であるといえます。


横位連携弧線文土器

イ 杖状(C字型ステッキ状)文

胴下半部の楕円区画文の間に杖状(C字型ステッキ状)文が沈線で施文されています。

この文様は噴水(勢いよく吹き上がる湧水)を表現している文様であると、これまで考えて(想像して)きています。2019.08.18記事「加曽利EⅡ式把手付鉢の杖のような模様」等

ウ 杖状文(C字型ステッキ状文)の向き

この土器の杖状(C字型ステッキ状)文の上部の向きが右側3つ、左側1つとなっています。他の展示土器でも右側が多く、左側が2つ以上観察したものは、自分はありません。

土器全周の観察機会がないので不確かさの大きな推察ですが、杖状(C字型ステッキ状)文の上部の向きは1つが左側を、他の全部は右側を向いているという規則性がある可能性があります。左側を向いている杖状文の位置が当該土器の正面を表現しているのかもしれません。

2021年5月17日月曜日

埼玉編年の加曽利EⅢ式土器詳細分類

 縄文土器学習 602

有吉北貝塚土器分類のベースとなっている埼玉編年(1982)の加曽利EⅢ式土器詳細分類をカード化データベース化して、自分なりに理解してみました。

1 埼玉編年加曽利EⅢ式分の概要


埼玉編年 加曽利EⅢ式 土器分類と有吉北貝塚土器群分類の対応

埼玉編年では土器群を次の9群+その他に大別し、さらに詳細に区分しています。

1群 口縁部文様帯と胴部文様帯が分離した加曽利E式系統。キャリパー形。

2群 波状沈線区画文を基本とするもの。加曽利EⅢ式を特徴づける。

3群 文様モチーフが上下2段構成になるもの。

4群 隆起帯で文様が描かれ、区画内に縄文充填。

5群 縦位に区画された懸垂文。

6群 逆「U」字状懸垂文。

7群 条線のみ施文。

8群 縄文のみ施文。

9群 全面無文。

2 加曽利EⅢ式土器3種区分との対応

加曽利貝塚博物館における加曽利E式土器展示説明で使われる3種区分との対応をみてみました。

加曽利EⅢ式土器の3つの種類

ア キャリパー形土器

イ 意匠充填系土器

ウ 横位連携弧線文土器

2020.02.23記事「加曽利EⅢ式土器学習のポイント」参照


加曽利EⅢ式土器 埼玉編年(1982)土器群分類と3種区分


参考 横位連携弧線文土器


参考 意匠充填系土器

埼玉編年の1群はキャリパー形土器に、2群と3群は横位連携弧線文土器に4群は意匠充填系土器に対応することがわかります。

3 感想

・加曽利EⅡ式土器で主役であったキャリパー形土器(口縁部に主文様帯がある土器)にかわって横位連携弧線文土器と意匠充填系土器が主役の座に登場します。横位連携弧線文土器は連弧文土器と入れ替わるように登場するので、連弧文土器が横位連携弧線文土器に遷移したという見方が埼玉編年に記述してあります。今後その評価が現在どのようになっているのか学習を深めることにします。

・キャリパー形土器(口縁部に主文様帯がある土器)が衰退し、横位連携弧線文土器や意匠充填系土器が盛行するということは口縁部に主文様帯を置き、そこに渦巻文を配置した土器文化が衰退したことを示します。これは単なる土器デザイン流行現象ではなく、生活文化の大きな変化・画期と関連していると考えます。


2021年5月16日日曜日

有吉北貝塚の北斜面貝層から出土した加曽利EⅡ式土器(紙上観察) 4

 縄文土器学習 601

この記事では有吉北貝塚北斜面貝層出土加曽利EⅡ式土器のうち第11群土器の紙上観察を行います。

1 第11土器の例

1-1 第11群土器の特徴

11群土器は加曽利EⅡ式土器の最終段階にあたる土器で連弧文系土器が減少してキャリパー形土器が主体となります。第10群段階に見られた整った渦巻文が崩れだし、円文化の傾向が現れます。文様の施文方法も粗雑化し、器形的にもキャリパー形から直線的なものが多くなります。加曽利EⅢ式土器の特徴である磨消懸垂文の幅広化や口縁部文様帯との癒着傾向も現出しだします。また第10群段階では皆無に等しかった、波状口縁呈するものや突起、把手が付された例も存在します。(有吉北貝塚発掘調査報告書から要旨抜粋)

1-2 第11群土器の例


283

渦巻が沈線で描出され隆帯の貼付が無い例


288

沈線による渦巻形の文様は遺存するもののその巻き方緩大で、内部に縄文が施されてかなり円文に近い形態を呈してる例


294

口縁部の渦巻文が完全に円文に置換された資料

この土器は加曽利博の過去の企画展で展示されました。


加曽利貝塚博物館で展示された294土器

(参考 294番土器が展示土器であることは土器割れ目や模様などから確実です。しかしその全体形状が発掘調査報告書では細長くなっています。おそらく発掘調査報告書作成作業における写真操作で手違いがあり、縦横比が狂い、それに従って挿図も描かれたと想像します。)


319

キャリパー形土器の口縁部文様帯が省略された例

2 感想

・渦巻文に注目すると、第6群(中峠式)でもみられ、第7群(加曽利EⅠ式)、第8群(加曽利EⅠ式)で存在感のある文様に変貌し、第9群(加曽利EⅡ式)、第10群(加曽利EⅡ式)でトレードマークのように発達します。その渦巻文が第11群(加曽利EⅡ式)になると明白に退化します。

・この渦巻文消長は渦巻文にかかわる神話の消長と軌を一にしていると想像(空想)します。つまり渦巻文にかかわる神話の影響力が第11群時期に著しく衰えたことを意味すると想像します。渦巻文にかかわる神話の霊力が徐々に失われていったということです。

・その背景に今までと同じような生活をしていると、つまり今までのように渦巻文神話の霊力を信じて生活していると、じり貧になるという危機感が生まれていたのではないかと想像します。一言でいえば関東縄文社会が広義環境変化(人口急増などの内部要因変化も含む環境変化)に遭遇したことと渦巻文退化が対応しているのではないかと考えます。

・有吉北貝塚でいえば、第11群時期に集落台地を切り裂くようなガリー浸食に対して、それを意識的に埋める活動(第11群土器の北斜面貝層基底面に対する一括廃棄)が特筆すべき活動であると考えます。未曾有の大雨土砂災害危機とそれに対する集落をあげての対応があり、その対応をもって有吉北貝塚集落が事実上終焉したことの意味解明が重要な学習課題です。


2021年5月14日金曜日

人面刻書土器(八千代市上谷遺跡) 観察記録3Dモデル

 八千代市立郷土博物館常設展に展示されている人面刻書土器(八千代市上谷遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。

1 人面刻書土器(八千代市上谷遺跡) 観察記録3Dモデル

人面刻書土器(八千代市上谷遺跡) 観察記録3Dモデル

土師器坏体部外面に人面のヘラ書き

上谷遺跡A204竪穴住居出土

撮影場所:八千代市立郷土博物館

撮影月日:2021.05.13

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 62 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 人面刻書土器の時期

上谷遺跡人面刻書土器出土遺構(A204竪穴住居)近隣の竪穴住居から出土した墨書土器に年号記銘土器(承和二年=835年)があることから、人面刻書土器も9世紀(平安時代初頭)頃の遺物と考えられます。


参考 千葉県出土墨書・刻書土器データベース(明治大学日本古代学研究所)画面

3 人面刻書のトレース

人面刻書が正面になるように調整した画面を3Dモデルで作成し、人面刻書をトレースしました。


人面刻書土器(八千代市上谷遺跡)の人面トレース

4 人面刻書に関するメモ

・刻書(ヘラ書き)された人面には顔輪郭、眉毛、目、鼻、口が描かれています。

・大きくカーブする眉毛、細くなった目、鼻と口が近づいている様子、口から歯が斜めに見えている様子から、この人面は明らかに笑っています。

・刻書(ヘラ書き)ですから土器焼成前に土器製作工房の工房技能者がこの人面を描いたものです。

・平安時代の房総では集落毎に土器製作を広域に散在する工房に発注して入手していたと考えられています。人面刻書土器は発注者(集落の土器利用者…権力のある集落指導層)が人面刻書を工房に特注したものであると考えることが一つの合理的解釈としてあり得ます。

・「笑う人面」刻書土器を発注しているのですから「笑う人面」は単なる酔狂ではなく、しっかりした意義があると考えることができます。

・「笑う人面」刻書の意義可能性として「笑う盾持人埴輪」と同じ意義を考えることができます。


笑う盾持人埴輪

設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用

笑う盾持人埴輪に関して次の考察をしたことがあります。

「図書(設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」)では、盾をかざした威嚇表現なのに笑っている理由を、天鈿女(あまのうずめ)が笑いで猿田彦の眼力に立ち向かった神話を引き合いに出す、辟邪説で説明しています。

笑いに辟邪の意味があるとすれば、その笑いは攻撃的、破壊的であり、相手に恐怖心を与え、相手の闘争心を萎えさせるものです。

盾持人埴輪は、相手(邪悪で強力な侵入者)よりも、それに立ち向かう自らの方がはるかに武力、知力、気力が優っていて、その自らの圧倒的優越性を相手心理に直接知らせるための手段として笑いを使っているのだと思います。

実際に戦えば相手を確実に圧倒殲滅できることを確信しているので、その確信に一点のくもりもないので、その自らの意識を笑いという手段で相手に直接提示したのだと思います。笑いの本質の一つに相手に対する優位性表現があることは万人が理解しています。

盾持人埴輪は実闘争の前に心理戦、情報戦で勝利している様子を表現していると考えます。

古墳社会における闘争において心理戦、情報戦が行われていた様子をこの盾持人埴輪は伝えていると考えます。」(ブログ「芋づる式読書のメモ」2021.03.10記事「笑う盾持人埴輪」)

・「笑う人面」刻書の意義は辟邪であり、この土器を使うことにより利用者が怨霊・病・死・災害などからわが身を守っていたのだと思います。

5 3Dモデル作成に関するメモ

人面刻書土器展示空間の光線環境が著しく劣悪であり、以前3Dモデル作成にチャレンジしたことがあるのですが、その時は敗退しています。今回土器全体の3Dモデル化ではなく人面部分だけの3Dモデル化を目指してなんとかそれが実現できました。

6 土器底面の刻書

この土器底面にも、3Dモデルで見て判るように、モノが擦れた跡のような刻書が複数ありますが、その意味は判りません。

2021年5月13日木曜日

八千代市立郷土博物館縄文企画展の観覧

 縄文土器学習 600

八千代市立郷土博物館で現在開催中の企画展「印旛沼南西岸の縄文文化~やちよの縄文~」を観覧してきました。開催期間(2021.04.24~06.13)。


企画展会場入り口

八千代市の縄文遺跡から出土した遺物が八千代市所蔵分の外、船橋市所蔵分及び千葉県所蔵分を含めて展示されています。特に千葉県森宮分室から運ばれてきたものに興味を引くものが多く、普段の常設展とは異なる企画展ならではの充実さが感じられます。


展示の様子


配布資料

展示は早期から晩期・弥生までの時代の流れに沿って並んでいます。その中で八千代市域における縄文社会の盛衰について説明しています。

撮影できる資料(八千代市所蔵分)で興味深いものについて3Dモデル作成用の撮影を行いました。


縄文時代早期前葉深鉢(八千代市権現後遺跡)


縄文時代早期前葉土偶(八千代市上谷遺跡)

以前ぜひとも見たいと渇望したことのあるイノシシ形土製品も展示されていて、ラッキーでした。小さいものですから望遠で拡大して3Dモデル用撮影をしましたが、手振れの影響がどれだけあるのか気になります。これから作成する3Dモデルの出来が気になります。


縄文時代中期初頭イノシシ形土製品(八千代市上谷遺跡)

参考 ブログ「芋づる式読書のメモ」2018.04.02記事「上谷遺跡動物形土製品」

配布されている展示物リストをみると109点の遺物と植物標本8点が展示されています。今回は企画展展示の全貌をみて幾つかの3Dモデル作成用撮影を行いましたが、十分に観察しきれないのでまた改めて訪問することにします。なお、八千代市立郷土博物館は自宅から最も近い距離にある縄文遺物展示施設ですから気軽に訪問することができます。

観覧の最後に常設展で展示されている平安時代人面刻書土器の3Dモデル用撮影を行いました。この人面刻書土器は以前から強く興味を持っているものです。3Dモデル用撮影という視点から言えば、この土器の光線環境は劣悪ですから最低限の3Dモデルが出来るかどうか、不安と楽しみが混ざります。


人面刻書土器(八千代市上谷遺跡)

参考 2015.09.20記事「ヘラ書き土器の意味」


有吉北貝塚の北斜面貝層から出土した加曽利EⅡ式土器(紙上観察) 3

  縄文土器学習 599

この記事では有吉北貝塚北斜面貝層出土加曽利EⅡ式土器のうち第10群に盛行し第11群まで継続した連弧文土器の紙上観察を行います。

1 連弧文土器の例


241


243

この連弧文土器は加曽利貝塚博物館の過去の企画展で展示されたことがあります。


H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編)で展示された243土器


245


251

2 連弧文土器に関する有吉北貝塚発掘調査報告書の記述

連弧文系土器(238~272)

第9群の時期に突如として出現して第10群期に盛行し、第II群段階にいたって漸減して加曽利EⅢ式期には全くみられなくなる、すなわち加曽利EⅡ式とほぼ運命を同じくする類型である。加曽利EⅢ式段階に出現する波状文土器や横位連携弧線文土器と呼ばれる類型に変化するという考えもあるが、確定的ではない。本類型の型式学的な変遷の特徴を概観すると、第9群段階では文様帯区分が明確で比較的整った連弧文が施され、第10群段階では文様構成がバラエティに富むようになるものの、連弧文が崩れる傾向にあり、第11群段階になると連弧文の粗雑化や変形がさらに進み、最終段階の様相を呈するとなる。第9群段階のものは既に示したが、第10群と第11群段階の資料を明確に分別し得なかったためここに1項を設けて提示することとする。基本的には段階を追つて図示するよう心掛けた。

3 実測図

発掘調査報告書実測図を段階を追って並べてみました。


有吉北貝塚 北斜面貝層 連弧文土器変遷

4 感想

次のような興味をおぼえました。今後の学習の中でこれらの興味を深めていくことにします。

ア 連弧文土器の割合把握

遺跡全体、北斜面貝層、竪穴住居、土坑別などで第9群~第11群期に連弧文土器の割合が全体に対して、あるいはキャリパー形土器にたいしてどの程度であったのか把握する。

イ 連弧文土器の利用特性

連弧文土器とキャリパー形土器やその他の土器(曽利式土器、折衷土器等)との間で器形・大きさや出土状況などから、利用仕方の差異が観察されるかどうか。連弧文土器とキャリパー形土器をどのように使い分けていたか?

ウ 連弧文土器文様の起源

連弧文土器文様の起源に関する学術研究論文を入手して学習することにします。

エ 連弧文土器文様に関する感想

連弧文土器文様意味にたいして、最低限の蓋然性を有する感想(想像)を持てるように意識を研ぎすまして、縄文土器学習を継続することにします。

オ 加曽利EⅢ式土器との関連

連弧文土器の意匠が加曽利EⅢ式土器に引き継がれたという説が専門家の間でどのように評価されているのか調べることにします。