2019年12月23日月曜日

縄文中期後半双口土器(茅野市一ノ瀬遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 295

尖石縄文考古館に展示されている縄文中期後半双口土器(茅野市一ノ瀬遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。

縄文中期後半双口土器(茅野市一ノ瀬遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 78 images

撮影写真の一例

上から見た様子 3Dモデル

感想
双口土器がどのように使われたかという説明・解説を図書やwebで見つけることはできませんでした。用途不明とか祭祀に使われたという程度の情報しかありませんでした。
縄文土器学習を進める上で、「そうですか」と納得して、写真や3Dモデルをwebに掲載しておしまいではつまらない活動になってしまいます。
後で間違っていたという結論になろうとも双口土器の用途や意義についての思考を少しだけでもメモすることにします。
・この双口土器は上から見てわかる通り、内部がつながっていません。二つの土器を1つに合体した形状をしています。
・二つの土器が一緒に出土する例は2019.12.20記事「2点並んで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル」で検討したように茅野市にかぎらず列島に一般的にあるようです。その場合2つの土器は大小が明白で、夫婦を連想させます。
・大小二つの土器が並んで(そして完形で)出土する必然をつくった祭祀が想定され、それは男女が会い子孫を残す活動に関連する祭祀であると想像しました。
・双口土器は一瞥では2つの土器の大小を認識できません。また模様も同じです。結合部ではないところについている把手の形状が一方は「まあるく」、一方は「かくかく」していますが、これは意図したものかどうか微妙です。たとえ意図したものであっても大小とか優劣とかを示すものではないと考えられます。つまり、この双口土器は二つの同じ土器をくっつけたものです。二つの土器はいわば「平等」の精神で結ばれています。
・以上の観察と感想から、この双口土器の用途をいささか強引ですが次のように仮説しました。
・二つの集団が何かの都合で密接に協力する関係を結ぶ必要が生まれた、あるいは統合することになった、その時の団結式祭祀で統合の象徴を演出するためにこの土器がつくられ使われた。契りをむすぶ杯ならぬ、契りを結ぶ土器であったと想像します。

2 件のコメント:

  1. 次回はこの土器を作ってみたいです。
    契りを結ぶ土器に意見を否定出来ません。

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  2. 匿名さん コメントありがとうございます。2集団の契り仮説を面白がっていただき感謝します。本当かどうか結論は出ないと思いますが、仮説を考えて楽しむことが考古趣味と考えています。学問としての「考古学」とは微妙に異なるスタンスになります。

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