Comparison of 3D spatial distribution by artifact in test grid
I observed and compared the 3D spatial distribution of 11 types of artifacts excavated from the 331 grid of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. Pottery and shell products were excavated from the middle and lower parts of the shell layer, and bones were excavated from the entire area, and it can be confirmed that the artifact types show different 3D spatial distribution patterns.
有吉北貝塚北斜面貝層の331グリッドから出土した11種類遺物の3D空間分布を観察して比較してみました。土器、貝製品は分層貝層の中下部から、骨は全域から出土し、遺物種で異なる3D空間分布様相を示すことが確認できます。
1 331グリッドにおける11種遺物の11断面オルソ投影
331グリッドにおける11種遺物の11断面オルソ投影
11種遺物の3D空間分布をBlenderで観察しました。3D空間分布の様子を直接画像で表現することは困難であるので、簡易的方法として各遺物を11断面にオルソ投影して、その画像で説明します。
1-1 分層貝層の中下部に主に分布する遺物
土器、土錘は主に分層貝層の中下部の分布します。朱塗土器、貝製品は分層貝層の中下部だけに分布します。これらの遺物の共通する分布がどうして形成されたか、今後の検討課題ですが、次の2つの可能性が考えられます。
1 分層貝層上部に投棄された遺物も多いが、多くの遺物が斜面に働く営力で下方に移動した。
2 分層貝層上部に投棄された遺物は少なく(あるはほとんどなく)、多くの遺物が分層貝層中下部を選択して投棄された。
貝製品(すべて貝刃)の分布は分層貝層上部のものがないので、1説は考えずらく、2説が妥当のように感じます。
今後検討グリッドを増やして行けば、結論がでると期待します。
1-2 分層貝層の上中下部に万遍に分布する遺物
骨は分層貝層の上中下部に万遍に分布する遺物と言えます。正確には上部の方が少しだけ高密になっています。魚骨、散乱人骨、石器は遺物数が少ないので断定できませんが、分層貝層の上下に偏った分布はしていません。
骨は分層貝層の上部にも、中部にも、下部にも投棄された可能性が濃厚であると考えます。主に上部から投棄され、それが下方に移動してほぼ均質な骨分布になったとは考えずらいです。今後情報を増やして検討を深めます。
1-3 石鏃とイノシシ
石鏃2点とイノシシ顎骨1点が分層貝層上部から出土しています。この情報だけから石鏃、イノシシ顎骨の出土位置を一般化することはできません。しかし、石鏃やイノシシ顎骨は狩猟に関係する遺物であり、それが分層貝層上部から出土していることに意味があるかもしれません。土器や貝刃という調理道具が分層貝層下部から出土していることと対比して、分層貝層斜面の使い分けがあったかもしれないという空想が刺激されてしまいます。つまり分層貝層上部は男に紐づく狩猟関係の祭祀や廃棄場所として使い、分層貝層中下部は女に紐づく調理や漁労関係の祭祀や廃棄場所として使ったという斜面使い分け仮説の想像が浮かびあがります。今後情報を増やして、検討します。
1-4 遺物の特別な隣接性の有無
イノシシ顎骨、散乱人骨、骨製品、朱塗土器など祭祀的意義があるかもしれない遺物相互に空間的関係があるかどうか、3D空間で観察しました。結果として特段の情報をみつけることはできませんでした。検討グリッドをふやして行けば、何か特別な関係がみつかるかもしれません。また、効率的な検討ツール開発も急務です。(例 2つの遺物種で近接するものだけを自動抽出プロットするBlenderPythonスクリプト)
2 メモ
・異なる遺物種の3D空間分布が似ている事例を見つけることができました。(土器と貝製品)
・異なる遺物種の3D空間分布が異なる事例を見つけることができました。(土器・貝製品と骨)
・異なる遺物種の3D空間分布が棲み分け的であるかもしれない情報に接しました。(土器・貝製品と石鏃・イノシシ顎骨)
3 事例調査
祭祀的意義があると考えられる遺物が出土しているグリッドを含む調査領域を設定して、引き続き事例調査を行うことにします。