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2020年4月20日月曜日

長野県立歴史館メインショーケース展示の縄文土器

縄文土器学習 401

長野県立歴史館メインショーケース展示の縄文土器14器について、SfM-MVS手法により7シーンに分けて観察記録3Dモデルを作成しましたので紹介します。

1 メインショーケース展示の様子

長野県立歴史館メインショーケース展示の縄文土器

2 観察記録3Dモデルの例

縄文中期中葉顔面把手付深鉢形土器(複製)(伊那市月見松遺跡)外3点S4 観察記録3Dモデル
左から縄文中期後葉初台付鉢形土器(塩尻市上木戸遺跡)[中空の円文とコイル状の飾りが極度に発達し、台をつけて目立つようにしている。このような土器は、県中部・北部の大規模なムラから、ごく少数だけ見つかる。]、縄文中期中葉顔面把手付深鉢形土器(複製)(伊那市月見松遺跡)[長野県宝]、縄文中期中葉「土偶装飾の付く有孔鍔付土器」(複製)(南箕輪村久保上ノ平遺跡)、縄文中期前葉「雲母片を混ぜ、キラキラしている土器」(千曲市屋代遺跡群)
撮影場所:長野県立歴史館
撮影月日:2020.02.14
整理番号:S4
実寸法付与
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 164 images

展示の様子

縄文中期中葉顔面把手付深鉢形土器(複製)(伊那市月見松遺跡)外3点S4 の動画

3 2以外の観察記録3Dモデル







4 感想
加曽利E式土器などと比べると派手な縄文土器がずらりと並べてあり、珍味を堪能しているような感情が沸き上がりました。東京湾岸貝塚の生活と長野の山中生活ではその生業や苦労の在り方が全く異なり、その異なる生活感情が土器デザインに反映されていることは確実です。
縄文中期中葉顔面把手付深鉢形土器(複製)(伊那市月見松遺跡)[長野県宝]は、以前伊那市創造館に出かけた時貸し出し中で見損なったものです。レプリカとはいえ造形物を見れたことを喜びました。

2020年4月15日水曜日

縄文草創期隆起線文土器の出土遺物と復元模造土器

縄文土器学習 400

縄文草創期隆起線文土器は土器出現最初期頃の土器ですから特別の興味がありますが、これまで出土遺物(土器片)だけの閲覧観察にとどまっていて、復元模造土器には巡り会ってきませんでした。
2019.06.16記事「隆起線文土器片 一鍬田甚兵衛山南遺跡出土 観察記録3Dモデル」など多数

ところが長野県立歴史館の縄文土器展示で出土隆起線文土器片の現物とそれから復元模造した土器に巡り会うことができました。大変参考になります。

1 縄文草創期隆起線文土器(岡谷市中島B遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文草創期隆起線文土器(岡谷市中島B遺跡) 観察記録3Dモデル 
約13000年前
出土土器片および復元模造土器 
撮影場所:長野県立歴史館 撮影月日:2020年2月14日 ガラス面越し撮影 実寸法付与 3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 26 images

展示の様子
左端の土器が縄文草創期隆起線文土器(岡谷市中島B遺跡)

縄文草創期隆起線文土器(岡谷市中島B遺跡) 3Dモデルから作成したアニメ

2 感想
出土土器片から草創期特有の硬質な感じが伝わってきます。
長年の風雪に耐えてボロボロになったという印象とは正反対で、固く締まり、色が明るく薄手の印象を受ける質感です。土器というものがハイテク製品で超高級製品であった時代の産物です。草創期土器は人々の生活に革命を起こし、人々はその生活革命を実感しながら丁寧に土器を作り扱っていたと想像します。

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3 長野県立歴史館縄文コーナー入り口の他の3土器

縄文草創期~早期表裏縄文土器(信濃町日向林A遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:長野県立歴史館
撮影月日:2020年2月14日
ガラス面越し撮影
実寸法付与
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 42 images

縄文早期貝殻条痕文土器(長野市村東山手遺跡) 観察記録3Dモデル
約7500年前
二枚貝などで土器の内外面を整えた土器。貝をひきずった時の条痕(筋目)が残っている。
撮影場所:長野県立歴史館
撮影月日:2020年2月14日
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 31 images

縄文前期羽状縄文土器(佐久市栗毛坂遺跡) 観察記録3Dモデル
約6000年前
右撚りと左撚りの縄を交互に転がす事で、羽のような縄模様が表現されている。
撮影場所:長野県立歴史館
撮影月日:2020年2月14日
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 28 images

2020年4月14日火曜日

長野県立歴史館展示土偶の観察

縄文土器学習 399

2020年2月14日に長野県立歴史館の縄文土器展示を観覧しました。
その時撮影した写真から3Dモデルを作成していますが、土偶について感想が生まれましたのでメモしておきます。

1 縄文晩期顔面付き注口土器(小諸市石神遺跡)外土偶多数 観察記録3Dモデル

縄文晩期顔面付き注口土器(小諸市石神遺跡)外土偶多数 観察記録3Dモデル
左上 縄文晩期顔面付き注口土器(小諸市石神遺跡) 注ぎ口は欠けているが、今の土瓶である。酒などを注ぐのに使われた。顔が描かれているのは珍しい。
右上 縄文後期後葉板状土偶(松本市女鳥羽川遺跡) 松本市立考古博物館蔵(複製)
左中 縄文晩期「顔のついた土版」(松本市エリ穴遺跡) 松本市立考古博物館蔵(複製)
左下 縄文晩期末葉土偶(岡谷市中島A遺跡) 中下 縄文後期土偶(長野市村東山手遺跡)
右下 縄文後期土偶(中野市栗林遺跡)
撮影場所:長野県立歴史館
撮影月日:2020年2月14日
ガラス面越し撮影
実寸法付与
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 64 images

展示の様子

縄文晩期顔面付き注口土器(小諸市石神遺跡)外土偶多数展示コーナーのアニメ

2 感想
2月14日の観覧で予期しない遺物(「顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡9」)を見つけ、大いに思考を深めることができました。
2020.02.20記事「顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡)の観察
さらに今回3Dモデルを作成して詳しく観察すると、隣の板状土偶も同じ構図であることがわかりました。すなわち、「顔の付いた土版」は上半身は衣服を着ていて、かつ下半身の女性器は露出していますが、隣に展示されている「板状土偶(松本市女鳥羽川遺跡)」も同じ構図で上半身衣服を着ていますが下半身女性器露出しています。この構図は国宝土偶「仮面の女神(茅野市中ッ原遺跡)」と同じです。2020.03.20記事「国宝土偶「仮面の女神」注記付き3Dモデルと想像的解釈
これらの土偶や土版が女性の生殖関連儀礼に関係していることはほぼ確実であると想像します。

また、ここに展示されている他の土偶を含めて顔表現を見ると、それが実際の女性の顔を意識して(模範として)作ったとは到底思えないという印象を持ちました。ある特定のモデルを表現しているように感じてしまいます。そのモデルとは「仮面(お面)」のようなものであると思えてなりません。今後詳しく検討していくことにします。

顔面付き注口土器(小諸市石神遺跡)の顔面は男であるのか女であるのか、土器は女性が作ったという想定から出発して、興味が湧きます。祭器である酒器を持って酒を注いだのは女性であるとイメージすると自分の心理抵抗は少ないです。その酒器に描いた顔は自分(巫女?)達女性であるのか、酒を受けた男性(集落リーダー)であるのか?
目鼻立ちがしっかりしていることから、実際の男性の顔面を意識して造形したものかもしれません。

2020年2月20日木曜日

顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡)の観察

縄文土器学習 352

長野県立歴史館で予期しない展示物として顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡)レプリカを観察しました。最近千葉市埋蔵文化財調査センターで人面付土版を見たばかりであり、その比較に興味が湧きましたので土器からずれた土版の寄り道学習を楽しんでみます。
2020.02.05記事「人面付土版 観察記録3Dモデル

1 顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡)レプリカ 観察記録3Dモデル

顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡)レプリカ 観察記録3Dモデル
縄文時代晩期、松本市立考古博物館蔵(複製)
撮影場所:長野県立歴史館
撮影月日:2020.02.14
ガラス面越し撮影
寸法:約14.9㎝×約7.8㎝×約1.2㎝(3Dモデルから簡易計測)
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 64 images

展示の様子 素3Dモデル画面

参考 顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡)レプリカ 観察記録3Dモデルの動画

2 観察と考察
眉、目、耳、口が付いています。鼻もあるように見えます。乳房と女性器、足が表現されています。腰にフリルのついた下着様の着衣があり、その間から性器を露出させるというパターンになっています。このパターンは尖石縄文考古博物館で観察した仮面の女神と同じです。胴部脇の縄文は着衣を、頭の縄文は頭髪(結髪)を表現しているのかもしれません。
このように観察するとこの土版の表現要素は土偶とほとんど同じであると感じました。
千葉市埋蔵文化財調査センターで観察した人面付土版は男であり、土偶は女であるから土版と土偶は根本的に異なると考えた思考が浅はかであったことが浮かび上がりました。
図書「特別企画土偶展」(長野県立歴史館)ではこの顔のついた土版について次の実測図付きで「なんと松本市エリ穴遺跡例には、方形の土版そのものに、顔そして乳房や性器などの表現もあり、もはや土偶と土版の同化とさえ取れる。」と記述して、縄文土偶のおわりについて詳しい説明をしています。

エリ穴遺跡出土土版
図書「特別企画土偶展」(長野県立歴史館)から引用
性器を強調する土偶やこの土版は生殖にかかわる祭祀ツールであったと想像します。そして、そもそもそれを作ったのは女か男か、祭祀を主導したのは女か男か、自分にはまだ確信をもったイメージができていません。
土偶は女の道具で、石棒は男の道具であるという説も一度疑ってみることも学習思考を熟成させるためには必要のようです。
もっと言えば、清瀬市郷土資料館の内田裕治先生がおっしゃっていたように女と男という単純区分ではすまない全体を包み込む太母、両性具有、ウロボロスのような概念がないと理解できないのかもしれません。
土偶のイメージが明瞭になれば土偶と土版の違いもおのずと理解できるに違いありません。

2020年2月15日土曜日

長野県立歴史館縄文土器コーナーの観覧

縄文土器学習 345

長野県立歴史館の縄文土器コーナーを観覧しました。
入り口に草創期土器等4点、メインショーケースには中期のものを主として10数点が展示されています。同時に土偶、土製品が多数展示されています。

縄文土器展示

縄文土器展示

土偶展示

縄文土器は千葉県ではあまり見かけない派手な模様・器形のものもあります。
向学のため全土器について3Dモデル用撮影を行いました。ショーケースのガラスが一部だけであり、上方空間が開放されているためガラス面反射が少なく良好な写真が撮れました。3Dモデルに実寸法を付加するためにスケールをショーケース手前に置いて撮影しました。2時間ほどの観覧・撮影で、気が付いてみると1100シャッター(ブラケット撮影によりJPEGファイル数6600)撮影していました。

なお売店で先日まで開催されていた特別企画土偶展の解説図書(223ページカラー)を入手しました。

特別企画土偶展解説図書
帰りがけ車中でこの解説図書を読んでいると、先ほど観覧した土偶コーナーの中の人面土版に女性器が表現されていることを知りました。
この人面土版はそれだけを対象にして3Dモデル用撮影をしましたので、追って詳しく検討することにします。千葉市埋蔵文化財調査センターで観覧した人面付土版は髭があるので男だと説明されていました。
2020.02.05記事「人面付土版 観察記録3Dモデル
人面土版に男女それぞれがあるとすれば、どのように土版を考えていくことになるのか、興味がドンドン深まります。

この解説図書はこれまでに尖石縄文考古館等で観覧した土偶についても新たな詳しい解説があり、とても参考になります。さらに縄文土偶から弥生時代のヒトガタ、奈良時代の木製ヒトガタに至る系譜までも解説しています。狭い視野の専門説明ではなく、遠大な文化的視野から縄文土偶が語られています。とても素晴らしい図書です。

おかげで過去に学習した印西市西根遺跡奈良平安時代ヒトガタがはるか遠い縄文時代土偶から延々と受け継がれてきた文化であるという認識を持つことができました。
2016.03.06記事「西根遺跡出土馬形・人形の意義

長野県立歴史館縄文土器コーナー観覧はまことに意義深いものとなりました。