2020年1月28日火曜日

加曽利EⅡ式土器の観察 その1

縄文土器学習 325

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(平成30年度)と「同(印旛地域編)」(令和元年度 開催中)の展示土器(深鉢等)74点を全部同じ視点で観察しています。この記事から加曽利EⅡ式土器23点を5回に分けて観察します。

9 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.6加曽利EⅡ式渦巻文区画文土器(有吉北貝塚)

No.6加曽利EⅡ式渦巻文区画文土器(有吉北貝塚)

参考 渦巻文の3D画像

器形観察
・頸部から口縁部にかけてキャリパー形をしています。
・胴中央部が膨らみ器形全体がくびれた形状をしています。
・口唇部は平ですが3Dモデル作成作業で小把手あるいは小隆起装飾が付いていた跡が観察できました。
段構成観察
・口縁部と胴部が沈線で区画される2段構成です。
文様観察
・口縁部上部に渦巻文につながる太い隆起線が巡り、口唇部に溝が生まれたような形状となり、口唇部を独立させています。
・口縁部は渦巻文と長矩形区画文で構成され区画文内部の縄文方向は胴部縄文方向と逆になっています。
・胴部には2本沈線とその間が磨り消された垂下する磨消文が縄文を区画しています。
・口縁部上部の渦巻文につながる太い隆起線を3Dモデルでよく観察すると、蛇が自分の尾を噛む「ウロボロス」モチーフのように観察でき興味を引きます。
2019.02.16記事「「蛇が尾を噛む」モチーフか? No.6土器渦巻文
感想
・キャリパー形と磨消縄文の存在から加曽利EⅡ式土器として判別されていると考えます。
・口縁部文様パターンが全周するとどのように変化するのか観察していません。

10 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.7加曽利EⅡ式渦巻文4把手土器(有吉北貝塚) 

No.7加曽利EⅡ式渦巻文4把手土器(有吉北貝塚)

実測図
発掘調査報告書から引用

器形観察
・土器上部はキャリパー形をしています。
・大部分欠落していますが、胴部中央は膨らんでいます。
・4つの把手が2つずつ口唇部で連結して対になっています。連結する把手は口唇部を含めて太い沈線でつながっています。
・把手を除くと口唇部は平に仕上げられています。
段構成観察
・文様は口縁部と胴部の2段で構成されています。
文様観察
・把手に沈線で逆S字状渦巻文が施されています。
・口縁部には隆帯と沈線によって渦巻文及び円形区画文が巡ります。
・胴部には磨消懸垂帯を持ちます。
感想
・キャリパー形であることと磨消懸垂帯を持つことから加曽利EⅡ式土器として判別されていると考えます。
・口縁部文様パターンが全周するとどのように変化するのか観察していません。
・連結する把手の間に連続する太い沈線は単なる見かけ上の修飾ではなく、機能を有するものとして直観できます。屈撓性を有する板状のものを差し込んだような印象を受けます。

11 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.8加曽利EⅡ式4小突起波状口縁土器(有吉北貝塚) 

No.8加曽利EⅡ式4小突起波状口縁土器(有吉北貝塚)

実測図
発掘調査報告書から引用

器形観察
・キャリパー形です。
・胴部中央が膨らんでいて、器形全体でくびれています。
・口縁部に小突起が4単位付きます。
・小突起を取り除くと口縁部は平になります。
段構成観察
・口縁部と胴部の2段構成です。
文様観察
・小突起の下口縁部には渦巻文と円形文が対応して配置されています。
・口縁部には水滴~葉っぱ形の区画文が配置されています。
・胴部には懸垂磨消帯が8単位ほぼ均等に配置されています。
感想
・キャリパー形であることと口縁部渦巻文および懸垂磨消帯の存在から加曽利EⅡ式土器として判別されているものと考えます。

12 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.9加曽利EⅡ式連結渦巻文対向土器(有吉北貝塚) 

No.9加曽利EⅡ式連結渦巻文対向土器(有吉北貝塚)

実測図
発掘調査報告書から引用

器形観察
・キャリパー形です。
・胴部中央がふくらんでいて、器形全体がくびれています。
・口縁部は平です。
・口縁部と口唇部の間に深い沈線が巡り、口唇部が独立しています。
段構成観察
・口縁部と胴部の2段構成です。
文様観察
・口縁部は隆帯と沈線による渦巻文を連結する文様を対向する2カ所に配置し、その間は円形区画文とそれを挟む楕円形区画文の部分と長楕円形区画文が対向しています。
・胴部には12単位の懸垂磨消帯がほぼ等間隔に配置されています。

対向する口縁部文様が異なる様子 長楕円形区画文

対向する口縁部文様が異なる様子 円形区画文とそれを挟む楕円形区画文

感想
・キャリパー形であることと口縁部渦巻文および懸垂磨消帯の存在から加曽利EⅡ式土器として判別されているものと考えます。
・底部が遺存しない状況で出土していていることから、この土器の最後の用途が底部を必要としないものであったかもしれないと着目しています。

13 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.10加曽利EⅡ式区画文土器(上谷津第2遺跡) 

No.10加曽利EⅡ式区画文土器(上谷津第2遺跡)

器形観察
・キャリパー形をしています。
・胴部中央がふくらんでいて、器形全体がくびれています。
・口縁部は平です。
・口縁部と口唇部の間に深い沈線が巡り、口唇部が独立しています。
段構成観察
・沈線で口縁部と胴部が区画される2段構成です。
文様
・口縁部に沈線で区画される楕円形区画文が配置されています。
・渦巻文は観察できません。
・胴部に懸垂磨消帯が配置されています。
・口縁部と胴部の縄文の向きが逆になっています。
感想
・キャリパー形であることと懸垂磨消帯の存在などから加曽利EⅡ式土器として判別されているものと考えます。

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参考 加曽利E式土器観察の視点

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準

加曽利E式土器の移り変わり
                                                                                                                                                                                                                                                              


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