2020年5月14日木曜日

縄文早期異形石器に驚く

縄文社会消長分析学習 17

霧島市上野原遺跡の発掘調査報告書をwebサイト「全国遺跡報告総覧」からダウンロードして向学のために寄り道学習しています。

驚きの連続、連続です。

1 異形石器の出土
上野原遺跡から次の異形石器が出土しています。

縄文早期上野原遺跡出土異形石器
上野原遺跡発掘調査報告書から引用

異形石器の材質は出土21点の19点が黒色安山岩で、残りはチャートとタンパク石です。
最大重量の個体(2)は石材:黒色安山岩、長さ:7.6㎝、幅:4.1㎝、厚さ0.9㎝、重量21.33g。

異形石器出土の分布
上野原遺跡発掘調査報告書から引用

発掘調査報告書では次のように説明しています。
「その機能・用途については全く分からないが、いくつかの個体に摩耗痕が残されていることから、装飾晶ではなくて利器であった可能性がある。また、個体変位の大きさは、日常的な利器ではないことを暗示するのではないかと思われる。つまり、祭りの中で用いられる利器であった可能性を提示できるのではないかと考えている。」第三工区 上野原遺跡発掘調査報告書(第10地点)第7分冊から引用

さらに形状を分析して叉状部(さ状部…ふたまた、さすまた)+体部+尾部からなる基本形を設定して、その基本形のバリエーションで全出土異形石器を理解できるとしています。

異形石器の分類
上野原遺跡発掘調査報告書から引用

2 感想
刃部が二股に分かれている後期旧石器時代及び縄文時代石器はこれまで見たことがありませんから驚きです。さらに石器全体にごつごつした突起が作られていることで、驚きが増大します。
武器・捕縛具としての「さすまた」の原型みたいなものでしょうか?
二股に開いた刃先形状は相手の体部に深く刺さるのではなく、浅く刺さってそこに留まる機能を求めて工夫されたようにも感じます。
ごつごつした突起の存在はこの刃器が体部から落ちない工夫であるとともに、刺さる相手に苦しみを与える(相手を挑発する)ことが目的であると理解することができます。効率的に相手を仕留めるための刃器であるとは到底いえません。
アイヌのイオマンテみたいな動物送りで使われた祭具でしょうか?

環状石斧と同じようにこの異形石器も、縄文早期までに大陸から九州に伝来した石器文化で、それが7300年前(暦年補正)の喜界カルデラ爆発で途絶し、列島の東には伝わらなかったと、とりあえず作業仮説しておきます。

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