2020年5月26日火曜日

神子柴遺跡出土石器から広がる学習興味

縄文石器学習 15

伊那市創造館に展示されている神子柴遺跡出土石器の観察記録3Dモデルを作成するなどして縄文石器学習を楽しんでいます。この記事では神子柴遺跡出土石器から学習興味が広がっている様子をメモします。

1 展示土器の観察記録3Dモデル
1-1 すでに作成した観察記録3Dモデル
伊那市創造館では神子柴遺跡出土石器を4つのショーケースに分けて展示しています。そのうち尖頭器と石斧のショーケースはすでに3Dモデルを作成しています。
2020.05.22記事「神子柴遺跡出土尖頭器の観察記録3Dモデル作成と心理的葛藤
2020.05.23記事「神子柴遺跡出土局部磨製石斧等13点の観察記録3Dモデル作成

1-2 作成できなかった観察記録3Dモデル
つぎの尖頭器展示ショーケースの観察記録3Dモデルは写真を27撮影したにも関わらず、マスカレード機能をつかうなど工夫したにも関わらず作成できませんでした。

観察記録3Dモデルが作成できなかった尖頭器展示ショーケース

1-3 ショーケース一部について作成した観察記録3Dモデル
搔器・削器について展示したショーケースについてその一部の観察記録3Dモデルを作成しました。

後期旧石器最終末~縄文草創期最初頭 掻器・削器13点(南箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル
全点が国重要文化財
上段左から 42 搔器 黒曜石(和田峠産)、43 削器 珪質頁岩、44 削器 珪質頁岩、45 削器 玉髄、46 削器 玉髄、47 削器 珪質頁岩
下段左から 32 搔器 珪質頁岩、33 搔器 珪質頁岩、34 搔器 黒曜石(和田峠産)、35 搔器 珪質頁岩、36 搔器 珪質頁岩、37 掻器 玉髄、38 掻器 碧玉(鉄石英)
撮影場所:伊那市創造館
撮影月日:2019.09.12
ガラスケース越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 24 images

展示の様子

展示の様子
搔器の湾曲した様子を3Dモデルで表現したかったのですが、できませんでした。
そもそも展示石器を一括して3Dモデルにするということ自体がとても筋悪の学習行為です。

2 遺跡における石器の配置
神子柴遺跡出土石器の配置がとても特徴的で、専門家の間で論争が起きたそうです。
伊那市創造館展示では石器配置の様子が実寸1/2の壁いっぱいの大きな画像で示されていて、詳しい説明もあり、とても参考になります。

伊那市創造館石器配置画像

伊那市創造館石器配置説明

堤隆著「狩猟採集民のコスモロジー 神子柴遺跡」(2013、新泉社)では、この遺跡を石器のデポ(収蔵遺跡)と考え、単なる交易関係ではない特別の意義のある遺跡としています。その考えからつぎのような社会関係を想定しています。

神子柴期の集団間の交換システム
堤隆著「狩猟採集民のコスモロジー 神子柴遺跡」(2013、新泉社)から引用

神子柴期には各地に集団の活動範囲が設定されていて、広域を自由に遊動する社会でないことがよく理解できます。石器の素材は別集団から交易で手に入れるネットワークが形成されていたということです。

3 出土石器の作り方、利用のしかた
伊那市創造館では神子柴遺跡出土石器の作り方、利用の仕方がパネルや模型で説明されていてとても参考になります。

石器の作り方や利用のしかたに関する展示

4 神子柴石器群の起源
神子柴石器群の起源について、堤隆著「狩猟採集民のコスモロジー 神子柴遺跡」(2013、新泉社)では詳しく研究者の見解を示していてとても興味が湧きます。最後に、北方系の石器群という枠組みを外して議論する必要があるとしています。大陸からもたらされたものではなく、信州あたりがまさにルーツであるという見解が有力になってきているようです。

神子柴型石斧群の分布
堤隆著「狩猟採集民のコスモロジー 神子柴遺跡」(2013、新泉社)から引用

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