伊那市創造館展示の神子柴遺跡出土尖頭器の観察記録3Dモデルを作成しました。
1 後期旧石器最終末~縄文草創期最初頭尖頭器9点(南箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル
後期旧石器最終末~縄文草創期最初頭尖頭器9点(南箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル
9点全て尖頭器、国重要文化財
左から14番玉髄製、15番玉髄製、16番玉髄製、17番凝灰質頁岩製、18番下呂石製、19番黒曜石製(和田峠産)、20番黒曜石製(和田峠産)、21番下呂石製、22番黒曜石製(和田峠産)
撮影場所:伊那市創造館
撮影月日:2019.09.12
ガラスケース越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 13 images
撮影の様子
撮影の様子
2 感想
伊那市縄文館で顔面付釣手土器や藤内式深鉢形土器の撮影を行い観察記録3Dモデルを作成して、土器学習を大いに進めることができました。
2019.12.08記事「顔面付釣手形土器(伊那市富県御殿場遺跡) 観察記録3Dモデル」
2020.02.02記事「藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)の展開写真」
この撮影の時に興味ある神子柴遺跡出土尖頭器や石斧の3Dモデル作成用写真をいわばオマケで撮りました。その写真から3Dモデルを作成しました。
マイナス感想
3Dモデルを作成しての第一印象は石器に対する強い興味に対して3Dモデルの出来が良くない、全く良くないということです。
石器を見る目は土器を見る目と比べてはるかに精確・精密なのだと思います。
石器は土器と比べて、小さい、立ち上がっていない(立体性が少ない)のでより繊細な撮影が求められます。
しかし、今回撮影は9点の石器を一括して撮影していてあまりにも雑な撮影です。
ガラスケースに入っているとは言え、石器1点ごとに3Dモデル作成用の撮影を行えば、よりましなものができたと思います。
技術的には撮影写真25枚のうち13枚しか3Dモデル作成に活用できませんでした。きわめて低レベルの分析です。
よく見ると長さ最大の18番下呂石製尖頭器の先端の造形が間違っています。
…(3Dモデルに対するマイナス感想は無限に続きそうです。)
プラス感想
・しかし、このような自分のマイナス感情を客観視すると、その裏返しとして次のようなプラス感想も沸き上がります。
・神子柴遺跡出土石器の撮影は、そもそも自分にとって巨大な学習価値があると認めたからこそ、まだ土器学習に熱中しているにも関わらず、時間を工夫して撮影したものです。
・この石器は自分の考古学習にとってきわめて大切な学習対象です。その学習を進めるために3Dモデルを作ったのです。美しい3Dモデル作品をつくろうとしているのではありません。3Dモデル作成という活動を通じて学習をしようとしているのです。
・3Dモデルの出来が悪いということは、あくまでもその遺物の学習価値の巨大さに対して出来が悪いということです。
葛藤と結論
マイナス感想とプラス感想が葛藤を繰り広げ、3DモデルをSketchfabにアップすべきか否か、ブログ記事にすべきか否か数か月が経ちました。
そして、これまでは居心地が悪いと感じていた領域に足を踏み出す「大英断」(?)を下しました。
要するに、「3Dモデルの出来は大変よろしくないが、私がその石器や遺跡に深い興味を抱いたという事柄を情報発信することが、自分の学習を促進し、また世の中で何かの参考になるかもしれない。」ということです。
このように割り切ると、手持ちの撮影ファイルからもっと情報を引き出す事ができるのではないだろうか、とか、あらためて展示館を再訪する機会をもうけて精細な写真を撮影しようとか、前向きな意欲が湧いてきます。
次の記事からしばらくの間、伊那市創造館展示神子柴遺跡出土石器について眺め、画像処理を遊び、石器学習を楽しむことにします。
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