2020年3月10日火曜日

逆S字状渦巻沈線文様を持つ加曽利EⅢ式キャリパー形土器

縄文土器学習 371

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展(終了)の展示土器について学習しています。この記事では加曽利EⅢ式キャリパー形土器として、加曽利EⅢ式深鉢(四街道市中山遺跡)企23土器を観察します。(企23はこのブログにおける整理番号です。)

1 加曽利EⅢ式深鉢(四街道市中山遺跡)企23 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(四街道市中山遺跡)企23 観察記録3Dモデル 
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」 
撮影月日:2020.01.07 
整理番号:企23 
ガラス面越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 39 images

展示の状況

2 3Dモデルから作成した文様浮彫展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから文様浮彫展開写真を作成しました。

加曽利EⅢ式深鉢(四街道市中山遺跡)企23 文様浮彫展開写真 1

加曽利EⅢ式深鉢(四街道市中山遺跡)企23 文様浮彫展開写真 2(参考)

3 観察と感想
・把手1と小突起3を持ちます。
・把手には二つの渦巻が縦方向につながる逆S字状の沈線文様が刻まれています。
・逆S字状渦巻沈線文様の両脇に刺突文が右3、左2あり、両側の区画文との間を隔てています。
・逆S字状渦巻沈線文様の下の胴部に円文が描かれています。把手文様が胴部にまで食い込んでいる様子として観察できます。口縁部と胴部の間のヨコ一線区画効果が著しく損なわれています。
・縦方向の逆S字状渦巻沈線文様は関東西部からの影響でしょうか?



 



4単位把手のある加曽利EⅢ式キャリパー形土器の観察 その2

縄文土器学習 370

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展(終了)の展示土器について学習しています。この記事では加曽利EⅢ式キャリパー形土器として、加曽利EⅢ式小型深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企32土器を観察します。(企32はこのブログにおける整理番号です。)

1 加曽利EⅢ式小型深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企32 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式小型深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企32 観察記録3Dモデル 
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」 
撮影月日:2020.01.07 
整理番号:企32 
ガラス面越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 54 images

展示の状況

2 3Dモデルから作成した文様浮彫展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから文様浮彫展開写真を作成しました。

加曽利EⅢ式小型深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企32 文様浮彫展開写真 1

加曽利EⅢ式小型深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企32 文様浮彫展開写真 2(参考)

加曽利EⅢ式小型深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企32 文様浮彫展開写真 3(参考)

3 観察と感想
・4単位把手のある加曽利EⅢ式キャリパー形土器です。
・口縁部と胴部の境が波打ち、ヨコ一線区画効果が希薄となっています。
・把手部とその中間部に退化した渦巻文が配置されています。
・口縁部と胴部の縄文の方向が異なっています。

2020年3月7日土曜日

文様浮彫展開写真を楽しむ

縄文土器学習 369

縄文土器の3Dモデルからその展開写真をGigaMesh Software Frameworkにより即座に作成できるようになり、縄文土器学習が加速しています。
この活動の中で、単純な展開写真だけを利用するのではなく、展開写真をより見やすいものにする工夫をしています。その一つが展開写真(2次元)に改めて立体性を付与して文様を浮き彫りにする工夫です。それをこのブログでは文様浮彫展開写真と名付けています。
文様浮彫展開写真は文様をより理解しやすいように写真を調整しているのですが、その調整の過程で様々な色調のものができます。それらの多種色調写真をみていると、学習上の興味とは離れて、観賞対象としての価値もあるような気もしてきましたので密かに楽しんでいます。
この記事では加曽利貝塚博物館常設展に展示されている称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)の文様浮彫展開写真を紹介します。

1 称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡) 観察記録3Dモデル

称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2019.12.27
許可:加曽利貝塚博物館の許可により全周多視点撮影及び3Dモデル公表
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 93 images
2 GigaMesh Software Frameworkによる展開写真作成

GigaMesh Software Frameworkによる展開写真作成の様子

GigaMesh Software Frameworkで作成した展開写真 テクスチャモデル

GigaMesh Software Frameworkで作成した展開写真 ソリッドモデル

3 文様浮彫展開写真の作成

文様浮彫展開写真の作成プロセス
ブログ「花見川流域を歩く番外編」2020.02.24記事「GigaMesh Software Frameworkで作成した縄文土器展開写真に立体性を与える方法

テクスチャモデルのハイパス処理画像

ソリッドモデルのハイパス処理画像

文様浮彫展開写真 その1

文様浮彫展開写真 その2

文様浮彫展開写真 その3

4 感想
文様浮彫展開写真その1が学習上の必要性により開発した最終画像です。
文様浮彫展開写真その2とその3は別の調整(テクスチャモデルとソリッドモデルのオーバーレイ方法調整)により作成したものです。
その2やその3はその1の補助画像として作成したものです。土器の色合いや撮影環境によってはその1ではなくその2やその3などの補助画像によって細部がよりわかりやすくなることがままあります。
縄文土器の画像を見る際に、「天然色」(現在存在するモノの色)に近い画像(その1)は大事ですが、画像解析処理感が激しい画像(その2やその3)は学習から離れて親しみや興味をもつことがあります。
いつの間にか創作物のような対象物として眺めていて、その美しさに見とれて楽しんでいるのだと思います。


2020年3月3日火曜日

4単位把手のある加曽利EⅢ式キャリパー形土器の観察

縄文土器学習 368

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展(終了)の展示土器について学習しています。この記事では加曽利EⅢ式キャリパー形土器として、加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後2土器を観察します。(後2はこのブログにおける整理番号です。)

1 加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後2 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後2 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」後半展示
撮影月日:2020.01.21
整理番号:後2
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 73 images

展示の状況

2 3Dモデルから作成した文様浮彫展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから文様浮彫展開写真を作成しました。

加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後2 文様浮彫展開写真 1

加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後2 文様浮彫展開写真 2(参考)

3 観察と感想
・4単位把手のある加曽利EⅢ式キャリパー形土器です。
・加曽利EⅢ式の特徴である口縁部と胴部の境が波打ち、ヨコ一線区画効果が希薄となっています。

ヨコ一線区画効果が希薄な様子

・特に黒くなっている把手の対向部内側が同じく黒くなっています。

表面の黒い把手の対向把手内面が黒い様子
・この様子からこの土器は、次のような仮説を確かめるための材料になるかもしれないと興味を持ちます。

土器外面黒変と土器内面おこげの対応考察(2020.02.17記事「称名寺式土器黒変部の観察と考察」)

文様を解読できない横位連携弧線文土器

縄文土器学習 367

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展(終了)の展示土器について学習しています。この記事では横位連携弧線文土器として、加曽利EⅢ式浅鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企34土器を観察します。
残念ですが文様を解読できませんでした。
(企34はこのブログにおける整理番号です。)

1 加曽利EⅢ式浅鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企34 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式浅鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企34 観察記録3Dモデル 
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」 
撮影月日:2019.11.19 
整理番号:企34 
ガラス面越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 45 images

展示の状況
ガラス面反射が激しく、観覧環境が劣悪な土器です。

2 3Dモデルから作成した文様浮彫展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから文様浮彫展開写真を作成しました。

加曽利EⅢ式浅鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企34 文様浮彫展開写真 1
ガラス面に反射した説明パネルの図柄が転写されています。

加曽利EⅢ式浅鉢(酒々井町墨木戸遺跡)企34 文様浮彫展開写真 2(参考)

3 観察と感想
・4単位波状口縁の土器です。
・観覧環境が劣悪なこともさることながら、それ以上に土器胴部上部を除く全表面から沈線が消えていることから、文様解読が不可能です。
・土器表面が火熱や摩擦によりすり減っている(摩耗している)とともに風化により表面がボロボロになり剥落しているように感じます。

観察できた沈線の様子 点線は推測
・横位連携弧線文土器であると考えられます。対向系横位連携弧線文土器であるように推測します。
・復元部に対向系横位連携弧線文土器のような模様が書き込まれていますから、現物を手にすれば、沈線がさらに観察できるのかもしれません。

・この土器観察により展示土器学習の技術的限界にまでとうとう到達することができたという感想が生まれます。

対向系横位連携弧線文土器の観察

縄文土器学習 366

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展(終了)の展示土器について学習しています。この記事では対向系横位連携弧線文土器として、加曽利EⅢ式小型深鉢(佐倉市池向遺跡)企11土器を観察します。(企11はこのブログにおける整理番号です。)

1 加曽利EⅢ式小型深鉢(佐倉市池向遺跡)企11 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式小型深鉢(佐倉市池向遺跡)企11 観察記録3Dモデル 
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」 
撮影月日:2019.11.19 
整理番号:企11 
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 69 images

展示の状況

2 3Dモデルから作成した文様浮彫展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから文様浮彫展開写真をつくりました。

加曽利EⅢ式小型深鉢(佐倉市池向遺跡)企11 文様浮彫展開写真 1

加曽利EⅢ式小型深鉢(佐倉市池向遺跡)企11 文様浮彫展開写真 2(参考)

3 観察と感想
・口唇部に3単位の小波状(突起)をもちます。
・上段の弧線文と下段の弧線文が対向する対向系横位連携弧線文土器です。

沈線と縄文の分布

参考

・画面中央部の上段と下段の「弧線文」が異様に膨らんでいます。特に上段は弧線文というよりも円形文に近い形状です。
・その左の「弧線文」には棘がある模様に見えます。
・円文=渦巻文と棘のイメージから唐草文の影響があると想像しました。

・照明が強すぎるためかえって土器表面の凹凸が写真に表現できませんでした。3Dモデルにすると写真よりもわかりやすくなりますが、沈線を全部追うことはできません。しかし、3DモデルからGigaMesh Software FrameworkとPhotoshopを使って文様浮彫展開写真をつくることによって沈線を追い、その分布を明らかにすることができました。いつの間にか、私にとってGigaMesh Software FrameworkとPhotoshopは展示土器学習のための必須ツールとなりました。







2020年3月2日月曜日

入組系横位連携弧線文土器の観察 その2

縄文土器学習 365

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展(終了)の展示土器について学習しています。この記事では入組系横位連携弧線文土器として、加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後4土器を観察します。(後4はこのブログにおける整理番号です。)

1 加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後4 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後4 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」後半展示
撮影月日:2020.01.21
整理番号:後4
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 84 images

展示の状況

2 3Dモデルから作成した文様浮彫展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから文様浮彫展開写真をつくりました。

加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後4 文様浮彫展開写真 1

加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後4 文様浮彫展開写真 2(参考)

3 観察と感想
・上段弧線文の間に下段弧線文が入り込み入組になっています。

沈線と縄文の分布
・画面左端はそれ以外の弧線文入組の様子と異なります。縄文施文されている弧線文が対向している場面もあります。この文様パターンが異なる部分がこの土器の「正面」である可能性があります。
・3Dモデルをいじっていただけるとわかりますが、この「正面」らしい器面の口縁部部分の内側に黒い模様が観察できます。この黒い模様はおこげである可能性があります。
土器正面を下にして土器を倒し、熾火でミニ調理をした後の可能性があります。

土器外面黒変と土器内面おこげの対応考察(2020.02.17記事「称名寺式土器黒変部の観察と考察」)
・この図の真ん中のイラストのように、土器正面を下にして土器を倒し、熾火でミニ調理をすれば、内面におこげができます。
・弧線文入組パターンの特別性とその内面のおこげと思われる黒変の存在から、この部分が土器正面である可能性が濃厚です。

入組系横位連携弧線文土器の観察

縄文土器学習 364

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展(終了)の展示土器について学習しています。この記事では入組系横位連携弧線文土器として、加曽利EⅢ式深鉢(成田市新山台遺跡)企28土器を観察します。(企28はこのブログにおける整理番号です。)

1 加曽利EⅢ式深鉢(成田市新山台遺跡)企28 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(成田市新山台遺跡)企28 観察記録3Dモデル 
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」 
撮影月日:2020.01.07 
整理番号:企28 
ガラス面越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 68 images

展示の状況

2 3Dモデルから作成した文様浮彫展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから文様浮彫展開写真をつくりました。

加曽利EⅢ式深鉢(成田市新山台遺跡)企28 文様浮彫展開写真 1

加曽利EⅢ式深鉢(成田市新山台遺跡)企28 文様浮彫展開写真 2(参考)

3 観察及び感想
・沈線によって弧線文が上段と下段及び上下を貫いて分布しています。

沈線の分布 (復元部分を除く)
・次の資料にある通り、この土器は入組系横位連携弧線文土器と呼ばれる土器です。

横位連携弧線文土器
・口唇部付近とそれ以外の胴部では縄文施文の向きが異なります。

2020年3月1日日曜日

紡錘状の円形意匠を有する意匠充填系土器 その2

縄文土器学習 363

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展の展示土器について学習しています。この記事では紡錘状の円形意匠を有する意匠充填系土器その2として加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企24土器を観察します。(企24はこのブログにおける整理番号です。)

1 加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企24 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企24 観察記録3Dモデル 
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」 
撮影月日:2020.01.07 
整理番号:企24 
ガラス面越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 46 images

展示の状況
ショーケースの端に位置していて死角が多く、またガラス面の反射が著しく観覧環境(撮影環境)は劣悪な土器でした。

2 3Dモデルから作成した文様浮彫展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから文様浮彫展開写真をつくりました。
文様浮彫展開写真とは単なる土器展開写真ではなく、文様を意図して浮き彫りにした展開写真です。具体的作成方法はテクスチャモデル(画像を貼り付けたモデル)展開写真とソリッドモデル(凹凸だけのモデル)展開写真をPhotoshopでオーバーレイして作成します。オーバーレイの仕方(レイヤーの描画モードの設定の仕方)によって異なる文様浮彫を生成させることができます。

加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企24 文様浮彫展開写真 1
ガラス面反射が著しいにもかかわらず、文様浮彫度合いがとても分かりやすい画像となりました。あらためてトレースする必要はありません。

加曽利EⅢ式深鉢(成田市長田雉子ヶ原遺跡)企24 文様浮彫展開写真 2(参考)

3 観察及び感想
・上段に円形文と逆台形状の区画文が配置されています。下段には懸垂区画文が配置されているようです。
・死角になっている部分の文様配置が気になるところです。円形文3つ、区画文3なのでしょうか? 死角になっている部分の文様がわかればこの土器の正面を示す文様を特定できるかもしれません。
・加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市吉見台遺跡)後5土器(2020.02.28記事「紡錘状の円形意匠を有する意匠充填系土器」)と同じく紡錘状の円形意匠を有する意匠充填系土器であると考えます。
・3Dモデルをオルソグラフィック投影して「上から」見ると土器が最も膨らんだ部分はほぼ円形ですが、口唇部はわずかですが、楕円形になっているようです。

オルソグラフィック投影「上から」画像と円補助線

土器正面と器形に関する仮説

縄文土器学習 362

2020.02.29記事「把手のある意匠充填系土器」で加曽利EⅢ式深鉢(印西市馬込遺跡)企15土器は把手のある部分には他の突起部と異なり渦巻文が2つあり、これによりこの部分が土器正面であることを確認しました。
その土器正面と器形との関係記述は粗雑なところがあり、その記事にその旨追記しておきました。
改めて、土器正面と器形について観察します。

1 土器上部が把手と対向突起を長円軸とした楕円形である事実
オルソ投影「上から」と「底から」について把手(正面)と対向する突起に内接する円を描きました。

オルソ投影「上から」「底から」と把手とそれに対向する突起に内接する円
この図から、この土器の上部は把手(正面)と対向突起を結ぶ線分を長円軸にした楕円形であることがわかります。
これはオルソ投影「正面から」と「右から」の図形を比べると「正面から」の方が横幅が小さいことからも確認できます。

オルソ投影「正面から」と「右から」の図形の横幅比較

2 土器復元最下部の形状
土器復元最下部はこの土器のくびれ部付近です。つまり本来の土器の上部と下部の境付近です。この復元最下部の「上から」「底から」投影をみると真円に近い形状になっています。(ただし、撮影が全周していないので確実なデータとして示すことは困難です。)

3 感想
土器正面の位置に関連して土器上部形状が楕円形になっていることが確認できました。また、土器下部は真円に近い形状のようです。
この記事では説明しませんが、他の土器正面が確定的に認識できる土器は土器上部の形がいずれも真円ではなく、楕円や卵形などのように変形しているようです。
こうした情報から、次の学習仮説が芽生えています。
・土器下部を作るときは横断面が真円になるように作っている。
・土器上部を作り出すと、正面の位置を決めて、それに対応させた歪んだ(楕円とか卵形とか)器形をつくりだし、最後に決めていた位置に正面を示す模様や把手などをつける。

つまり、縄文土器を一目みると円に近いけれども、子細に観察すると真円をめざしたものだけでなく、計画的に真円以外の造形をおこなったものもかなりあると考えます。
一目みると円に近いので、展示土器をガラス面の外から観覧しているだけではわかりませんが、3Dモデルを分析的にいじりだすと、このような学習仮説が生まれました。
この学習仮説の検証を含めて、さらにE式土器企画展展示土器の観察を進めたいと思います。

4 参考
オルソ投影画像はGigaMesh Software Frameworkの6側面図書き出し機能を利用して書き出しました。

GigaMesh Software Frameworkに土器3Dモデルを読み込んだ様子