2021年2月10日水曜日

加曽利EⅠ式深鉢(No.55)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 541

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」で展示されている加曽利EⅠ式深鉢(No.55)(流山市中野久木谷頭遺跡)を3Dモデルで観察しましたのでメモします。

1 加曽利EⅠ式深鉢(No.55)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式深鉢(No.55)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」 

撮影月日:2021.01.06

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.016 processing 84 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド


GigaMesh Software Frameworkによる展開 分析用加工

3 観察メモ

口縁部の区画文の様子は阿玉台式土器口縁部文様とよく似ています。

胴部に存在する蛇行する2状の垂下沈線から、この土器が加曽利EⅠ式土器に分類される決め手であると考えます。


縄文土器群理解の指標としての大きさ(容量)

 縄文土器学習 540

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」展示を観覧している中で、突然土器の大きさ(容量)の変化に気が付き、土器から社会の様子を推しはかるさいの重要な指標になると感じましたのでメモします。

1 加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」展示の様子


加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」後半展示の様子

3Dモデル作成用撮影の手を休めて展示ショーケース7点を全部眺め直していたら、突然土器の大きさ(容量)に顕著な差があることに気が付きました。加曽利EⅡ式とEⅢ式で巨大土器が多く展示されています。この様子から土器の大きさ(容量)が当時の社会の様子を知るうえで重要な指標になると直観しました。

その直観(空想的仮説)をとりあえず忘れないうちにメモしておきます。

ア 日常土器(日常の食事用調理に使う土器)の大きさ(容量)と非日常土器(年に1度の収穫で得た大量のドングリの保存食品づくりとか集団祭祀用調理に使う土器)の大きさは違うと考える。日常土器はいわば普通の大きさであり、非日常時は特大であると考える。

イ 日常土器と非日常土器の他に小型土器やミニチュア土器があるが、とりあえずそれは今は別に考える。

ウ 社会が豊かになる(食物が多くなる)と日常土器もある程度大きくなるが、大きくなると使い勝手が悪くなるので、限界がある。

エ 社会の組織化が進み、大規模集団がドングリを一時に大規模収穫するならば、それを保存食品にするために巨大土器を必要とする。つまり社会の組織化が進めば非日常土器が巨大化する。(あるいは巨大土器の数量が多くなる。巨大土器が土器全体に占める割合が増大する。)


このような仮説を思考した上で、もう一度企画展展示を眺めまわすと次にような興味が湧きます。

ア 展示されている中峠式土器と加曽利EⅠ式土器の大きさはどうか?

中峠式土器の(平均の)方が加曽利EⅠ式土器(平均)より小さいように感じますが、自信はありません。大きさ(容量)に違いがあるかどうか興味が湧きます。もちろん、展示そのものではなく、母集団が持つ土器大きさ(容量)に本質的興味があるのです。

イ 加曽利EⅠ式土器からEⅡ式土器へ展示土器が大きくなると観察できます。この様子は母集団の特性を表現していると考えます。社会が豊かになった(食べ物が豊富になった)、社会組織が発達したと考えます。

ウ 加曽利EⅡ式土器からEⅢ式土器へ展示ではさらに土器が大きくなったように観察できます。社会ピーク(人口急増)は加曽利EⅡ式期です。EⅢ式期は人口急減します。ですから、展示土器の様子は自分の知識と合いません。何故か? 展示スペースの都合で巨大土器だけに限定したのか? 疑問が深まります。

エ 加曽利EⅣ式になると土器の大きさは、明らかに小さくなります。社会が貧しくなった(食べ物が減った)と考えます。

2 展示土器の大きさ(容量)計測

3Dモデルの中に既知の長さがあれば土器の形状や立体容積を測定できます。

ブログ花見川流域を歩く番外編2020.02.06記事「3Dモデルに実寸法を付与する方法(3DF Zephyr Lite)」参照

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展では説明名札が同じ規格で作られていると考えられるので、「説明名札とスケール」の3Dモデルを1つ作成することで、他の3Dモデルすべてに実寸法を付与できます。つまり展示土器全ての3Dモデルで土器形状の計測が可能で、それにより容量(実際の容量ではなく、器体積も含んだ回転体容量)も計算できます。


全展示土器の大きさ(容量)計測が可能となる

今後作業機会を作って展示土器の大きさや容量の分析を行うことにします。

3 有吉北貝塚中期土器群の大きさと容量

有吉北貝塚中期土器群について、実測図から土器の大きさと容量を推定する資料を作成し、時間の経過とともにその値がどのように変化するのか、検討することにします。


2021年2月9日火曜日

勝坂・阿玉台末/加曽利EⅠ初深鉢(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 539

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」展示「勝坂・阿玉台末/加曽利EⅠ初深鉢(柏市小山台遺跡)」を3Dモデルで観察しましたのでメモします。

1 勝坂・阿玉台末/加曽利EⅠ初深鉢(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

勝坂・阿玉台末/加曽利EⅠ初深鉢(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」 

撮影月日:2021.01.06

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.016 processing 62 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド


GigaMesh Software Frameworkによる展開 分析用加工

3 観察メモ

この土器の名称は勝坂式や阿玉台式の要素が混在する加曽利EⅠ式初頭の土器であるという意味と理解します。中峠式土器の時代とも略一致すると理解します。

勝坂式土器社会、阿玉台土器社会、大木式土器社会が重複する奥東京湾河口部付近で、海況変化(海岸環境変化)に起因する生産力飛躍的向上が生まれ、それにより社会の流動化が生じたと仮説しています。社会流動化は土器型式流動化も伴ったと想像します。この土器はそのような時代背景から生まれたと考えます。

2021.02.08記事「縄文学習促進のための作業仮説

この土器の器形・段構成・文様パーツなどについて、「〇〇は勝坂式土器によく見られる特徴だ」とか「〇〇は大木式土器に多い文様だ」とかを自信を持って説明できるだけの知識を早く身につけたいものです。


2021年2月8日月曜日

縄文学習促進のための作業仮説

縄文社会消長分析学習 85

単調作業をする中で、縄文社会消長仮説を持つことが学習継続のために必須であることに直面し、急遽想像レベルで作業仮説を作ったので、メモします。

1 単調で根気のいる作業を遂行するためには壮大な作業仮説が必要

現在、縄文社会消長分析学習の一環手始めとして有吉北貝塚学習を進めています。その中の最初の取り組みとして出土土器学習に熱中しています。その学習では発掘調査報告書の実測図や写真をカード化したり、あるいは専門図書掲載の専門家による土器分類データをカード化したりなどの単調で時間がかかり、根気のいる作業が多出しています。これらの基礎データづくりは自分の学習で必須と直観できるのですが、この作業を飽きることなく継続するための「やる気」を醸成するのに苦労しています。その苦労のなかで、自分が壮大で魅力的な縄文社会消長作業仮説を持てれば、作業が困難であってもそれを乗り越えられることに気が付きました。

単調で、長時間かかり、根気のいる作業(例 発掘調査報告書スキャン画像の切り抜きとそのカード化)をしながら、その作業結果が「このような思考に役立つ可能性がある」とより具体的にイメージできないときはただつらいだけで、意味のない惰性の作業ですから、なかなか作業が進みません。ところが、「このような思考に役立つ可能性がある」とより具体的にイメージできたときは、時間を忘れて作業をします。膨大な作業もいろいろな工夫が生まれ、いつの間にか作業が終わっています。

2 加曽利E式土器社会成立に至る社会消長仮説(想像レベル)


加曽利E式土器社会成立に至る社会消長仮説(想像)

・社会変動を巻き起こした背景(要因)として海岸環境の変化を想定します。縄文海進が海退に転じてから縄文中期中葉頃に、一時的に海岸に河口部内湾環境が発達しました。現在の松戸や市川付近の東京湾口、村田川湾口などです。この環境は縄文社会技術レベルで利用しやすく多様形態の漁業が可能になったと考えます。経済生産性が飛躍的に向上したと考えます。

・この地形的環境変化が次のような社会変動を引き起こしたと想定します。

阿玉台Ⅲ式期頃から海岸環境変化により漁業収穫が急増した。

関東各地から海岸部に入植が進んだ。(ア)

漁業活性化により広域社会全体が豊かになった。(イ)

社会変動(ア、イ)により既存社会上部構造の物語(神話)が流動化した。(異型式土器間融合など)

東京湾沿岸漁業集落は特に豊かな社会となった。

豊かな社会における新たな物語(神話)に対応して加曽利E式土器が生まれた。

豊な社会では呪術より実務を優先する文化が生まれ、土偶は利用されなかった。

経済的・文化的発信力のある豊かな社会の物語(神話)は加曽利E式土器とともに広域に広まった。


 

2021年2月7日日曜日

加曽利EⅠ式深鉢(No.39)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 538

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」展示加曽利EⅠ式深鉢(No.39)を3Dモデルで観察しましたのでメモします。

1 加曽利EⅠ式深鉢(No.39)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式深鉢(No.39)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」 

撮影月日:2020.11.27

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.016 processing 69 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド

3 観察メモ

口縁部にS字状文の連続、胴部にクランク文が施文されています。双方の文様ともに大木8a式に多く、その影響があるのではないかと想像します。

双方の文様ともにその起源や意味について強い興味を持ちます。S字状文はその曲線から地物・水・生物など自然由来に起源をもとめることができると想像します。クランク文はそのような形状が自然のなかに多くはないので、特段に興味を持ちます。ピラミッドの造形が自然に対抗する人工の美だとする見解があります。そのような観点からクランク文は縄文人の自然から抜け出そうとする意識の産物かもしれないと夢想します。具体的には「人工物」(例 発明されて重宝している「階段」)を表象しているかもしれないと妄想します。今後どのように考えたらよいか、アーダ・コーダと思考を楽しむことにします。

2020.07.26記事「小型深鉢文様の観賞」では加曽利B1式小型深鉢(君津市三直貝塚)に見事なクランク文を観察しました。


参考 加曽利B1式小型深鉢(君津市三直貝塚)GigaMesh Software Framework展開写真


2021年2月5日金曜日

加曽利EⅠ式深鉢(No.40)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 537

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」展示加曽利EⅠ式深鉢(No.40)を3Dモデルで観察しましたのでメモします。

1 加曽利EⅠ式深鉢(No.40)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式深鉢(No.40)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」 

撮影月日:2021.02.05 

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.016 processing 80 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド


GigaMesh Software Frameworkによる展開 分析用加工

3 メモ

加曽利EⅠ式土器の器形や文様の変異の幅が大きく感じていて、自分なりの加曽利EⅠ式観が出来ていません。とりあえず加曽利貝塚博物館企画展展示の多数加曽利EⅠ式土器の観察を積み重ねることにします。

この土器には加曽利EⅠ式土器の重要な特徴である胴部垂下文様がありません。

区画文の中の横走する蛇行隆線が阿玉台土器の区画文内蛇行沈線に似ているように感じます。また波状小把手に対応する口縁部区画文境付近の文様イメージが阿玉台式土器の把手部分に似ているような気がします。



縄文土器「教師付き学習」方法の具体化

 縄文土器学習536

2021.02.04記事「観察学習用縄文土器カード作成」で縄文土器実測図・写真をカード型データベースとしてパソコン画面に大写しして観察・考察できることに気が付きました。縄文土器学習にとって有力な方法の自分レベルでの発見です。この発見に伴い、縄文土器の「教師付き学習」方法を具体化できましたのでメモします。

1 縄文土器の「教師付き学習」方法

ア 「教師」に該当する情報源例

●次の論文内容(勝坂式終末期から加曽利E式初頭期の土器分類と説明

徳留彰紀(2019)「武蔵野台地北東部および大宮台地における勝坂式終末期から加曽利E式初頭期の土器様相」(山本典幸・考古学の地平グループ編「考古学の地平Ⅱ-縄文中期の土器論と生業研究の新視点-」六一書房)


土器分類一覧表


土器分類画像

イ 教師付き学習方法

土器分類毎に分類諸元・説明と土器画像をカード型データベース(FileMaker)に収納し、効率的検索等により土器分類情報・画像を即座に表示できるようにします。このシステムをパソコン画面一隅に置いて使えるようにしておくことにより、分類情報のない土器画像の分類や考察を効率的に行います。


「教師」に該当する情報システム画面例

論文掲載一覧表に従い次の項目をデータベースフィールドとして設定しました。

分類

類型

時期

基本器形

細部器形

文様帯・区画文の位置

文様帯・区画文等の特徴

関連する土器群(中山2004)

関連する土器群(下総1998ほか)

メモ

画像

2 感想

ア 多数教師の招請

「山本典幸・考古学の地平グループ編「考古学の地平Ⅱ-縄文中期の土器論と生業研究の新視点-」六一書房」には徳留彰紀さん以外に塚本師也さんの北関東における同時期土器分類事例など幾つかの土器分類論文があります。加曽利E式土器成立までの経緯を知るうえで大いに参考になりそうです。これらの論文を高度専門教師として、申し訳ないことですが無料で招請して、教えを乞いたいと思います。

イ 小林達雄編「総覧縄文土器」の教師招請

小林達雄編「総覧縄文土器」には土器型式毎に土器分類表が掲載され説明されています。この情報も基本的土器分類情報源として教師招請することにします。

ウ スキャン技術

細かい話になりますが、上記徳留さん事例の土器分類画像は紙図書で縮小網掛印刷されています。通常のスキャン解像度では拡大に耐える画像を取得できません。スキャナーの解像度を800dpiにまでアップして使える画像を取得できました。

エ 予感

展示縄文土器3Dモデル作成という活動が自分の縄文土器学習楽しみを大いに深めています。同じように縄文土器画像・情報のカード型データベース収納という活動が、観察や教師役割として学習楽しみを大いに深めるような予感がします。


2021年2月4日木曜日

観察学習用縄文土器カード作成

 縄文土器学習 535

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器の学習を始めました。土器学習の効率化を図るため観察学習用縄文土器カードを作成しましたのでメモします。

1 観察学習用縄文土器カードの作成

発掘調査報告書掲載土器実測図及び写真を詳しく観察するために、実測図及び写真をパソコン画面に大写しにすることにしました。またその特徴や考察事項、疑問等をその場でメモできるようにする必要があります。そのような学習ニーズを満たすためにFileMakerをつかって次のような縄文土器カードを作成しました。


土器カード画面 例1 (FileMaker画面)

中峠式と加曽利EⅠ式の間?


土器カード画面 例2 (FileMaker画面)

加曽利EⅠ式土器


土器カード画面 例3 (FileMaker画面)

加曽利EⅠ式土器

カード項目は現在は番号(竪穴住居番号-土器番号)、分類(土器群分類)、メモ、実測図、写真です。今後必要に応じて項目を追加することにします。

現在は竪穴住居から出土した第6群~第8群の土器のうち、器形や文様がよくわかるものだけを抽出して50例ほどをカード化しました。今後土坑や斜面貝層出土土器及び第9群~第12群のデータを追加することにします。


土器カード一覧表 (FileMaker画面)

2 縄文土器カードを使った感想

発掘調査報告書(紙版)を見ている時とパソコン画面に拡大した実測図・写真を見る時では、土器観察の詳しさが全く違うことを実感しました。図と写真は全く同じですが、小さいものとして見るのと、拡大してみるのでは、脳内に発生する気づき・感想・疑問の量と質が全く違います。拡大図・写真をみると、そもそも、より詳しく観察したくなる欲望が発生します。「(情報を)見つけてやろう」という能動性が生まれます。

発掘調査報告書をスキャンして画像を切り出す手間はかかりますが、その手間以上に発生する知的効果が、今の自分には、大きいことが判りました。

3 予察的感想

50事例のカードを何回も見て次のような予察的感想が生まれましたのでメモします。

・加曽利EⅠ式土器特徴が意外と捉え難い

これまで阿玉台式土器、中峠式土器の学習を進めてきていて、その標準的器形や文様等と出土土器片の対応がなんとなく判っていたように感じていました。その続きで加曽利EⅠ式土器の特徴を把握しようとするのですが、胴部沈線垂下のない土器があり、自分の予想以上にEⅠ式特徴が捉え難く感じます。文様等が多様で変異の幅が広いような印象を受けます。

より多数の第6群(中峠式)~第7群・8群(加曽利EⅠ式)データを観察して、自分なりの加曽利EⅠ式イメージを獲得できるようにしたいと思います。

・大木8式の影響がかなりみられる

大木8a式の優品搬入品があったり、文様で影響を受けたものがあり社会が北方から濃厚な影響を受けている印象を受けます。西方からの影響(中峠式)の後、北方からの影響(大木8a式)が加曽利EⅠ式期に重なったのかもしれません。


2021年2月2日火曜日

有吉北貝塚 加曽利EⅠ式土器学習について

 縄文社会消長分析学習 84

1 有吉北貝塚の中期遺構学習進捗状況

有吉北貝塚の中期遺構学習を次のような項目建てで進めています。〇はこれまでに学習・作業が進んでいるものです。2021.01.06記事「有吉北貝塚 中期遺構学習計画

1 縄文中期土器学習

ア 阿玉台式 〇

イ 中峠式 〇

ウ 加曽利EⅠ式

エ 加曽利EⅡ式

オ 加曽利EⅢ式、Ⅳ式

2 遺跡地形3Dモデルの構築 〇

3 竪穴住居分布図構築及び一覧表データベースとのリンク 〇

4 土坑分布図構築及び一覧表データベースとのリンク

5 埋設土器、ピット群

6 斜面貝層

7 埋葬

8 遺物

9 総合検討

2 有吉北貝塚 加曽利EⅠ式土器学習について

概ね次のようなステップで学習を進めることにします。

ア 有吉北貝塚発掘調査報告書の土器分類における加曽利EⅠ式土器特徴の理解と代表的出土物実測図・写真との対応理解

イ 加曽利貝塚博物館令和2年度企画展展示加曽利EⅠ式土器3Dモデルの作成と観察


加曽利貝塚博物館令和2年度企画展展示加曽利EⅠ式土器 前半展示写真

3 有吉北貝塚における土器分類


有吉北貝塚における土器分類 赤枠は加曽利EⅠ式土器(第7群・第8群)

4 過去に観察した有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器

2019.02.11記事「加曽利EⅠ式併行期土器の観察と感想

2019.02.13記事「加曽利EⅠ式口縁部矩形区画文土器

2019.02.13記事「加曽利EⅠ式大把手小突起対向土器の観察と感想

2020.01.25記事「加曽利EⅠ式土器観察その1


No.1加曽利EⅠ式併行期土器(有吉北貝塚)展示写真


No.1加曽利EⅠ式併行期土器(有吉北貝塚)実測図
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


No.3加曽利EⅠ式大把手小突起対向土器(有吉北貝塚)展示写真


No.3加曽利EⅠ式大把手小突起対向土器(有吉北貝塚)実測図
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


No.4加曽利EⅠ式口縁部矩形区画文土器(有吉北貝塚)展示写真


No.4加曽利EⅠ式口縁部矩形区画文土器(有吉北貝塚)実測図
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

5 加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準


加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準


加曽利E式土器の移り変わり

6 感想

有吉北貝塚土器学習の本丸が加曽利EⅡ式土器とすれば、いよいよその本丸に近づくことになります。中峠式土器から加曽利EⅠ式土器への移行のイメージを詳しく理解し、自分の知的財産として「蓄財」したいと希望します。知的資産家への第1歩を踏み出したいと思います。阿玉台式土器や中峠式土器の学習も復習的に繰り返したいと思います。

2021年2月1日月曜日

阿玉台Ⅳ式深鉢形土器(鎌ヶ谷市根郷貝塚J5号住居跡) 観察記録3Dモデル 5

 縄文土器学習 534

2019年8月に鎌ヶ谷市郷土資料館で観覧した阿玉台Ⅳ式深鉢形土器(鎌ヶ谷市根郷貝塚J5号住居跡)の観察記録3Dモデルを作成し直し、GigaMesh Software Frameworkによる展開も行いましたので記録します。

1 阿玉台Ⅳ式深鉢形土器(鎌ヶ谷市根郷貝塚J5号住居跡) 観察記録3Dモデル 5

阿玉台Ⅳ式深鉢形土器(鎌ヶ谷市根郷貝塚J5号住居跡) 観察記録3Dモデル 5

撮影場所:鎌ヶ谷市郷土資料館 

撮影月日:2019.08.23 

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成  v5.016 processing 63 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド


GigaMesh Software Frameworkによる展開 分析用加工

3 メモ

・この土器について過去に「中峠式土器」という間違った名称で3Dモデルを作成したり、ブログ記事を書いたりしてきています。最近中峠式土器の過去記事を整理していてその間違いに気が付きましたので改めて阿玉台Ⅳ式土器として3Dモデル、動画、GigaMesh Software Framework展開図を作成しました。

・ブログ記事、3Dモデル(Sketchfab)の名称は今後全て訂正します。

・有吉北貝塚関連で阿玉台式土器、中峠式土器学習を進めてきて、この土器が阿玉台式土器であること、あるいは中峠式土器ではないことは間違いなく直観できる程度の感覚が生まれていることは、この1ヵ月間の学習成果であり、自分事ながら喜ばしいことです。


参考 小林達雄編「総覧縄文土器」掲載阿玉台式土器細別編年模式図